金の斧
私はリスが落ちてくる夢で飛び起きた。
部屋で髪をくくり、セオニタ村に戻る準備を整える。
部屋を出て階段を降りる。ダイニングへ向かうとゴードンとワイガが朝食を取っていた。
「ローズちゃん、おはよう」
「おはようございます」
私は笑顔で答えた。
テーブルには私の分のコップとパンと目玉焼きが置かれていた。ピッチャーの水をコップに注ぐ。
「頂きます」
胸の前で手を合わせる。フォークで目玉焼きを小さく切って口に運ぶ。
「ごちそうさまでした」
「もう少ししたら出発するぞ」
「わかった」
「ゼットさんは?まだ寝てるんですか?」
ワイガさんがあきれて答える。
「そうなんだよ。昨日の夜に、今日出発することは伝えたんだが。まぁ遅れて来るだろう」
私もゼットにあきれた。なんてだらしない人なんだろう。
なので三人だけでセオニタ村へ出発した。ワイガの家に向かったときと同じで昼前に森の中でラグを敷き昼食をとった。再び歩き始めて村の近くについた頃、少し後ろからこちらに走ってくる足音が聞こえた。
「おーい」
ゼットが疲れた様子でこっちに走ってきた。
「置いていくなんてひでぇな」
「あなたが寝てたのが悪いんでしょう」
「お前が寝てたのが悪いんだろう」
道理の合わないゼットの言い分に私とワイガが同時に事実を漏らした。
「悪かったよ」
ゼットは私たちに軽く謝った。
この人からは今のところあきれるところしか見当たらない。別に自分が完璧だとも思っていないし、良いところを見せなさいと上から見ているわけではないけれど。
しかし、どうやってゼットは私たちに追いついたんだろう。3時間ほど歩いていた道を、家でぐっすり寝ていた彼が私たちに追いついてきた。
村の入り口が見えてきた。しかし、私の視線を村から30度上げると、空から銀色の流星が4つ村に近づいているのが見えた。
「父さん、あれ。昨日のやつだわ」
私達は急いで村へと向かった。
ヒューーー・・・ドンッ!!
私たちが村の入り口の手前についた瞬間、目の前に4つが降ってきた。
私たちは肘で顔を覆い砂埃から鼻を守る。
シューーウィーーン・・・
4つの銀色の球体がナイフを持った人型へと変形していく。
ワイガがゴードンをかばって木の陰へ隠れるように動き出す。
「父さん達は隠れて!」
「お前はどうするんだ!?」
「私は昨日やったみたいにこいつらをやっつける!」
絶対に出来る。不安を見ないふりして両手を私の視界の左に見えた木へと向ける。
・・・
何も起こらない!?どうして!
先頭の人型はこちらへと歩いてきている。
必死に出ろ。出ろ。とつぶやく
人型の肩のモーターが鳴り腕を頭の上へ上げてローズへあと一歩のところまで近づいた。
刺される。私の体が危険信号を多量に出した直後。
カッ!
ギュウウウゥゥンッ・・・
ドンッッ!!
私の両手から光線が一直線に目標の木へと到達し、その木は大きな枝を人型へと伸ばし突き飛ばし延長線上の木へと人型ごとぶつかった。
「やった・・・」
安堵もつかの間、もう一体がゼットへと走って接近していた。
「あんた何やってんのよ!早く隠れて!!」
ゼットは仁王立ちのまま動かない。
私は素早く他の木へと両手を向けて光が出るようにもう一度強く念じた。すると光はまた一直線に目標の木へと到達した。今度は細い何本もの枝が伸び、人型の四肢に絡みつきナイフがゼットへと届く前にそれを拘束した。
「ローズちゃんならやってくれると思ってたよ」
ゼットが余裕のある顔で私に言った。
彼は肘を耳の横まで上げ、拳を人型の頭に向けて強く握りしめ、
ガグォン!!
カラン・・・
その頭を殴り抜いた。殴られた人型の頭は首を軸に一回転し壊れた顔面から金属パーツがポロポロとこぼれ落ちた。
ゼットの思わぬパワーに驚いて口の開いたまま眺める私を横に、彼は足のスタンスを広げて重心を下げた。次に地面が軽くえぐれるほど地面を蹴り、少し離れたところにいた人型2体の元へと飛び出した。
空中で背中側の腰の鞘に納められた手斧を取り出した。斧刃は金色に輝いていて、軽くカーブを描いたダークブラウンの木製の柄と柄の端にはしっかりと鞣した革製のストラップがつけられていた。
ゼットが人型の頭(目のあたり)めがけて斧を水平に振る。斧はバイオリンの高音のような甲高い音を立てて、一切の抵抗なく滑るように空中、人型の頭、空中を切った。
頭の上半分を切られ、それが落下すると人型も同時に力なく倒れた。
ゼットは間髪いれずに、斧を体の外側に向けて振り抜いた。そしてもう一体の人型の頭も切断され力なく倒れた。
斧を鞘にしまって、軽く息を吐く。
「はぁ~、終わったー。親父、ゴードンさんもう大丈夫ですよ!」
木の陰から二人が出てくる。
「いつまでそんな格好してんだ?怪我はないか?」
ゼットが人型を殴ってから腕を突き出したままのポーズで固まっていた私はゼットの呼びかけでハッとする。
「あんた、あんな事が出来るの?」
「まぁ、生まれつきかな。ローズちゃんこそすごいな!木を操ってた」
「あれは昨日たまたまさっきと同じ銀色のやつが空から降ってきて、村のみんなを守るためにやったらできたの」
私はゼットが遊び慣れていて、だらしない生活をしてる誠実とは遠い人だと思っていたけど、それは、不思議な強力な身体能力を持った勇敢な男というイメージに上書きされた。
私たちは銀色の人型の残骸を道の端に固めて村へと再出発した。
歩いている時に、ゼットは私たちに彼の能力について話してくれた。小さい頃から普通の人間よりも遙かに高く飛んだり、速く走ったり出来たそうだ。ワイガもそのことは知っていて、隠さなくても良いが乱用してはいけないと教えられていたそうだ。不思議な力を持っている点で私も共通点があったので、身の危険を感じたときに私は両手の手のひらから光を出し、その光は木を操ることが出来るのだろうということを話した。ワイガは役に立つ使い方は無いのかとしきりに考えていたが、私はまだ思った通りに光を出す力を操れるとは思えないし、そんな事が出来る、普通ではない自分が怖かった。
村についた。弟たちがワイガとゼットを珍しがって近づいてきた。弟たちに囲まれて二人は歩きずらそうにしている。
「この人達は大工さん。ドガさんの家とカーマルさんの家を直しに来てくれたのよ」
ゼットとワイガは作業は明日からすると言っていた。二人は今夜テントを張って寝るらしい。
私は家に帰って自分の部屋のベッドに寝転んだ。すごく疲れた。二日も危機に直面して、秒刻みの思考と行動を繰り返して戦ったからだ。
コンコン
ドアをノックする音が聞こえた。
「ローズ。怪我はないか?」
「うん」
ドア越しに父が声をかけてきた。
「昨日も今日もお前に守られた。本当にありがとう。次銀色のやつが現れたら父さんも戦うからな。」
「危ないからやらなくていいよ。」
次。次があるかもしれない。その時はまた戦わなくてはならない。村の人たちを守らなくてはならない。正義感が私の中に生まれた。
気づかないうちに疲れから私は眠りに落ちた。
小説難しいですね。何を書いて良いのか全く分からなくなってしまいます。。。