第二十五話 海へ
お待たせしました。
四日振りの更新です。
歌多の後顧の憂いもなくなりましたので、五日目は夏を満喫していこうと思います。
お楽しみいただければ幸いです。
『陽善さん、起きてー』
「……ん、む……?」
蓮梨の声……。
もう朝か……。
そうか、昨日歌多さんが以前働いていた夜の店と縁を蓮梨が切ってくれたから、祝杯として酒を飲んだんだった。
歌多さんと二人で結構飲んだと思ったが、気持ちのいい酒だったからか、全く残ってない。
清々しい目覚めだ。
『ほらほら早く支度して。今日は絶好の海日和だよ!』
「海、日和……?」
『あ、忘れてるー? 昨日飲みながら歌多さんに、海に行こうって話してたじゃない』
「えっ?」
『ほらほらー私が、夏と言えば海だよねーって話したら歌多さんが、私海って行った事ないですって言うから陽善さんが、なら明日海に行こうって』
「……言ったなぁ」
……あぁ、思い出してきた。
『歌多さん、朝ご飯とお弁当の準備しながら、着替えとか水着とか準備してたよー。陽善さんも早く支度しないと』
そんなに楽しみにしてくれているのか。
酔った勢いとはいえ、提案して良かった。
『水着だよー! 悩殺だよー! 期待が高まるでしょ! うりうり!』
「……中学生や高校生じゃあるまいし、別に水着なんてそんなに騒ぐほどの事じゃないだろ」
『そう言うと思って! 歌多さんには秘策を授けています! 乞うご期待!』
「……嫌な予感しかしない」
とにかく支度をしよう。
と言っても水着と着替え、あとタオルをバッグに詰め込むだけだが。
足りないものがあったら現地で買えばいい。
「おはよう、歌多さん」
「あ! おはようございます陽善さん!」
私の挨拶に、朝食をテーブルに並べながら答える歌多さん。
すごいウキウキした顔してる。
よっぽど海が楽しみなんだな。
「今朝も早くから支度してくれてありがとう」
「いえそんな! 私が楽しみで早起きしちゃっただけで……」
恥ずかしそうに微笑む歌多さん。
何ともいじましい。
……しかし昨夜も私に付き合って遅くまで飲んでいたような……。
ダブルワークの影響で、ショートスリーパーになっているのだろうか。
一度飽きるまで寝かせてあげたい。
目を離すと家事を始めてしまうだろうから、何か工夫が必要だけど。
「食べたら片付けは私がやるから、歌多さんは支度を進めてね」
「あ、でも、そんな……」
「私も久々の海が楽しみで、早く行きたいんだ」
「わ、わかりました! ……じゃあ、お言葉に甘えて、お願い、します……」
今までの歌多さんなら、きっと何が何でも自分でやっていただろう。
それが今は任せてくれている。
距離が縮まったようで、何だかとても嬉しく感じる。
「じゃあいただきます」
「いただきます」
『海ー! 海ー! 楽しみだなー!』
はしゃぐ蓮梨を横目で眺めながら、私と歌多さんは箸を取った。
読了ありがとうございます。
あぁ、海、行きたいなぁ……。
波打ち際の追いかけっこ……。
笑いながら水の掛け合い……。
砂に書いたラブレターが波にさらわれて……。
いけませんね、歳がバレる(公開済み)。
次話はほぼ書き上がっていますので、今日よりは早く投稿できると思います。
よろしくお願いいたします。




