フォンタジーな世界をさまよう女性
まぁわしは好きな研究があるから気も紛れるが」 「研究って何を研究なさっているんですか」何げなくチサが
そう聞いた時、老人の眼が鋭く光った。だが顔を伏せ気味にしていたチサはその事に気付かなかった。もし
チサが老人の眼の異様な光を見ていたら不安を感じて用心していたかも知れない、、、 「興味がお有りかな」
前と同じく柔和な顔に戻った山中老人は尋ねた。「ええ 少し」 「あらゆる物質の構造に関する事なんですよ
それを電子の粒と言うかもっと小さな物にして」そこまで言った時、ドアがノックされて婆やさんが振り袖を
かかげて入って来た。「さぁ 乾きました。アイロンをかけておきましたのでお家までは持つでしょう
お帰りになったらすぐにクリーニングにお出し下さいね」 「分かりました」濡れた所を広げてみると薄く染み
は付いているもののほとんど分からなかった。「足袋はちよっと汚れがひどくて でも家の奥様の足袋と
サイズがいっしょでしたのでそれをお持ちしました」 「ありがとう」山中老人は部屋を出てゆきチサはきよに
手伝って貰って着物を着なおした。「さぁこれでいいでしょう。お嬢さんは着物が良くお似合いですね」
「ありがとう 去年母に無理を言って作って貰ったんですよ」そう言っている内に山中老人が手に何がしかの
金を包んだ封筒を持って入って来た。「おお~綺麗にできましたな きよさんの腕もみ下げたものでは無いな」 「まぁ旦那様ったら冗談をおっしゃってるんですか」 「いやあ そんなつもりは無いよ。あのーチサさんと申されましたな、これは少ないけれどクリーニング代に取っておいて下され」
明日へ続く