3150②
彼女。ではなく元カノが絶対売れると言っていた惚気話は出入口に並ぶようになった。『最高の惚気カップル!常識を覆すアイの形』と、宣伝されていた。悔しいが惚気話を絶妙に工夫されていてとても面白い。馬鹿らしいが書き出された展開が俺の神経を吸い取り、話さないで見入ってしまう不思議な本だった。そんな本もあと数十ページだった。
次の日、まだ現実を受け入れられていない俺は学校を仮病で休み、家まで寝ていた。気付いていたら寝ていて、気付いていたら検索履歴に『彼女 復縁』だとか『いい男に勝つ方法』ばかりだった。結局俺の元へ戻ってくるだろう。そう軽く受け止めていた。そして、たまらずLINEをした。
「僕の彼女はどうしようもない奴だ読み終わったよ!面白かった!」
時刻は13時14分、学校では5限が始まっているであろう時間帯だ。すぐには返信が来ないであろうから寝て待つことにした。
俺はいつの間にか夢を見ていた。場所はフードコート。丸いテーブルが何個も置いていてその周りにイスが4つ並べてあった。夢の設定では日曜日なのか、フードコートに丸いテーブルとイスは1組しか空いていなかった。そこで隣にいる人と時計でいう、12時と3時の場所に座った。隣の人はとても小さかった。170cm身長がある俺の20cm小さかった気がした。隣の人の顔が見たいが何故か見れない。夢特有の変な現象が俺を襲っていた。俺の隣の人は突然立ち上がり、歩き出した。
「待って」
と、呼び止めたが待たなかった。直ぐにその後を追った。建物の地下にあったフードコートから地上界へ上がり、隣の人は外へ出た。雪や氷で足元が悪くて寒い中隣の人はどこかへ歩いて行った。しばらく歩いていると、音楽が流れ始めた。どこかで聞いたことのある曲だ。どうしてか、その曲の名前が思い出せなかった。また歩いていると、音楽が流れ始めた。どこかで聴いたことのある曲だ。どうしてか、その曲の名前が思い出せなかった。また歩いていると、ずっと歩いてきた街の風景にどうも合わない、この街に浮いた花屋を見つけた。
「花を買って欲しかった」
隣の人が一言、初めて口にした言葉がそうだった。俺は戸惑った。
「いきなりどうしたの?」
そういった時には隣の人は消えていた。どこにも姿が見えなかった。
その瞬間、俺は目覚めた。
目が覚めてなにか思い出しそうだ。しかし、隣の人だけは思い出せなかった。もやもやした気持ちを持ってスマホを開くと18時5分、日が暮れるのが早いからでん気を付けていなかった部屋はスマホの光1つだけだった。LINEの通知には数件学校の友だちからであった。本当にないのかと元カノの個人チャットを開き確認したが、結果は変わらなかった。既読すらついていなかった。振られたのにまた追い打ちをかけるように気が落ちそうだった。
そして、夢で流れていた曲がまた頭の中で流れてきた。それは俺たち2人の歌だった。この曲は最初はとても幸せそうな歌詞だが、最後の方で別れてしまってこうなる運命ということで終わっている曲だ。俺はこの曲をあまり聴きたくなかったがスマホから流してしまった。とてもポップな曲調で聴くだけで楽しくなるような曲だったが、それはもう過去の話。同じ曲なのに全く違うような曲に聴こえてしまう。その曲の中に「残酷すぎる幸せは残酷に終わるようになってる」という歌詞がある。まさに今みたいな状況だ。
元カノは他校のバドミントンの選手だった。その学校と練習試合をした時に元カノを見つけた。