始まりの朝
投稿遅くて申し訳ございません_(._.)_
4章は作者が一番書きたいと思っている話です。
敵の設定に、全マッツィーニを費やしました。
文章力がないので、うまく話を伝えれるかどうか不安ですが……頑張ります!
※改稿しやした。
改稿前の拷問大好きサディスティックキチガイは、いい雰囲気をぶち壊して主人公に頭を吹っ飛ばされる予定だった雑魚敵です。
いい雰囲気を壊したくなかったので、彼には善人になってもらうことにしました。
とある迷宮の最奥の部屋……数多の死霊や骸骨が彷徨い歩く、複雑に入り組んだ冷たい灰色のレンガの道を進むと、かろうじて原形を留めている木の扉が。
その扉の向こうでは、禍々しいほどに朽ち果てたローブを身に纏う1人の男が、錆びれた短剣を使って腐りかけた死体に何やら文字を刻み込んでいた。
文字を刻み終えると男はそっと短剣を置き、死体に手をかざして呪文を唱えた。
腐臭の漂う薄暗い部屋に、妖しい紫色の光が充満する。
その光源は、死体に刻み込まれた魔法の術式。
「ァガ……ガ」
静かに消え入る光。
輝きを失った死体はゆっくりと起き上がり、理性なく徘徊を始めた。
「また……失敗か」
男は嘆息に近い独り言を呟いた。
彼が欲しているのは魔法の極致、すなわち死者蘇生の魔法。
それも、生前の記憶を宿したまま生き返らせる、本当の意味での復活。
しかし、彼もまた、彷徨える死者たちと同じ死霊であった。
眼球はとうの昔に腐り落ちて、今は空虚な窪みが2つ覗いているだけ。
干からびて黒ずんだ容貌に、一切の生気はない。
男は魔法使いなのだろうか?
いや、およそ魔法使いとは思えないほど鍛え抜かれ、発達した剛健な肉体。
長い年月が少しずつ、しかし確実に男の体を蝕んでいったが、彼の生前の風格は未だ衰えることを知らない。
朽ちたローブに空いた穴、そこに見え隠れするのは、相対した者を思わず後ずさりさせるほど重厚で迫力のある鎧と、邪悪な光を放つ一振りの黒大剣。
……彼は魔法使いではない、まごうことなき戦士であった。
なぜ、男は魔術の深淵に足を踏み入れたのか?
それを知るのは、今も昔も彼ただ1人。
自分が何者であったのか。
どんな人生を送ってきたのか。
死霊となった男はそのすべてを忘却してしまったが、ただ1つ、決して忘れることの出来ない記憶、願い、使命があった。
私は……………まだ、君に伝えていない。
君の笑顔に………………私がどれほど救われたのか。
君を救うことの出来なかった己の弱さを……どれだけ憎み、悲しんだことか。
君が最後に残した気持ちを知って………私がどれほど後悔したのか。
だから私は……俺は伝えなければならない。
俺は……君のことを―――――。
==========
「おっちゃん……美味しかったぜ!」
「おう!」
毎朝の楽しみ、大通りの露店で朝食をすまし、俺はギルドへと向かった。
ちなみに、今食べたのはエルフ族たちの郷土料理『水晶魚の小鬼トマトソース添え』だ。
彼らにとって森の動物たちは良き隣人、肉料理は食べない。
森深くの冷たい清流に住む透明な魚『水晶魚』と、ゴブリンたちのおやつである『小鬼トマト』を使った素晴らしい一品。
ごちになりました!
人の行き来が少ない早朝の大通りを歩いていると、
「レオンの旦那! おはよう!」
「レオンさん、今日も冒険ですか?」
「あっ、レオンのお兄ちゃんだ!」
色々な人から声を掛けられる。
この町で暮らし始めて約3か月。
最初の頃は『ただのよそ者』だったが、露店で買い物をしたり、町の子供たちの遊び相手になったりしていたら、いつの間にかこうして声を掛けられるようになった。
帝都にいた頃には無かったもの……なんだか嬉しいな。
「お兄さん、なんか買っていかないかい?」
「お前……また冒険者の身ぐるみ剥いだのか?」
「シーーー! それは言わない約束でしょ」
「そんな約束、した覚えはないんだがな……」
大通りの隅っこにどっぷりと腰を下ろし、胡坐をかいて座っているフード付きのコートを着た獣人族のお姉さん。
広げられた風呂敷の上に並べられているのは、彼女の甘い誘惑に騙されたマヌケな冒険者たちのアイテム。
彼女が誰これ構わず強奪するような悪い奴ならば、俺も冒険者としての責務を果たさなければならないが……彼女の誘惑に騙されるのは品行不良な冒険者たちばかりなわけで。
「お兄さん、だいぶこの町に慣れてきたみたいだね」
「町の皆のおかげさ」
「お兄さんは人がいいからね。 皆ちゃんと気づいてるんだよ」
「俺を煽てても何もでないぞ―――この『高体温薬』を4本売ってくれ」
「二ヒヒッ、はいよ~」
お姉さんは嬉しそうにニカッと笑いながら、高体温薬を俺に差し出した。
今日の冒険で、高体温薬は必ず必要になる。
ここで売っているのはどれも高品質だし、そのうえ安い。
だから、別に煽てられて嬉しくなったから買うのではない、ないのだ。
「お前も一部の間では有名じゃないか。 「悪い冒険者たちをパンツ一丁にする獣人族のお姉さんがいる」って話を聞いたことがあるぞ」
「そうか、アタシも有名になっちまったか。 ……この町はけっこう気に入ってたんだけどなぁ、そろそろ別の町に―――」
「もう朱那ったら……また約束破って冒険者からアイテムを奪い取ったでしょ」
「げっ、エルシアの姉貴!」
後ろから聞き覚えのある声が。
振り向くと、やれやれといった表情のエルシアが、こっちに向かって歩いて来るのが見えた。
「なんだ、迷宮から帰ってきてたのか?」
「え?―――な、なんであなたが……」
エルシアは俺の顔を見ると途端に頬を赤く染めて、俺から離れるように少しずつ、少しずつ後ろに下がっていった。
「……そんな露骨に嫌われると、さすがに悲しいぞ」
「あ、いや、そんなつもりじゃないのよ……これはその、体が勝手に」
体が勝手に……って、そっちの方がヒドくないか?
エルシアと会うのは2か月ぶりだ。
妖樹との戦いが終わった後、彼女はすぐに別の町に行ってしまった。
迷宮を攻略するためだとアデーレさんは言っていたが……この話を聞いた時、なぜかアデーレさんは何かを思い出したようにクスリと笑っていた。
「エルシアの姉貴は、お兄さんと面識があるんですか?」
「前に……ちょっとね」
「ふ~ん、ちょっと……ですか?」
獣人族のお姉さん、朱那さんはニヤニヤした顔で、勘ぐるような視線をエルシアに向けた。
好奇心に満ち溢れた、野性的な鋭さを持つ紅い瞳に見つめられたエルシアは、
「な、何が言いたいのよ。 一度だけ一緒にモンスターと戦っただけだから」
「へぇ、いつも1人で冒険してるエルシアの姉貴がねぇ」
「それは……」
朱那さんを叱りに来たはずなのに、いつの間にか話のペースを奪われ、困った表情している。
いつもの凛々しさはどこへやら……俺のことを嫌っているとはいえ、本人の前であまりひどいことは言えないのだろう。
魔力枯渇のせいで倒れた俺を心配して沼地に残ってくれて、しかも、寒くならないように俺を体温で温めてくれた、心優しい少女なのだから。
「そう言えば、妖樹の解体作業をギルドに頼んでおいたが、まだ何の話も来てないな。 エルシアさんは何か聞いてるか?」
「え? あ、あぁ、実は今日この町に戻ってきたのは、アデーレに呼び出されたからなの。 たぶん、その話と関係があるんじゃないかしら?」
「そうなのか。 じゃあ、とりあえず一緒にギルドに行くか?」
「そ、そうね」
朱那さんに別れを告げる。
困った顔のエルシアを楽しむように見ていた朱那さんは少しムスッとしたが、最後はなんだかんだ笑顔で、手を振って見送ってくれた。
無言のままも気まずいので、俺から積極的にエルシアに話しかけて、2人でたわいもない話をしながらギルドに向かった。
エルシアはどうやって朱那さんと知り合ったのか。
俺とマルクたちが、無事に『銀ランク』に昇格して雪山を探索できるようになったこと。
エルシアが今潜っている迷宮の話。
まぁ……一番驚いたのは、朱那さんがまだ15歳であるという話だ。
獣人族は成長が速いと聞いたことがあるが……ずっと『年上のお姉さん』だと思っていた。




