表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/90

89.幸せ


アリス達の身体を洗う事を目的として結界の中へ入って行ったイザナを見届けてから辺りを1周見渡した。


見晴らしの良い土地を選んだおかげで軽く暗視が出来る程度に魔法で目を強化すれば周囲に敵の影が無いことは容易に把握出来る。


まぁ、そもそもここに野営の拠点を築いた時に周囲50m四方に結界を張っているから仮に敵が俺達を見つけたとしても早々に襲撃を受ける事はないだろう。


「ねぇ、ハルト。」


「ん、何か問題でもあったか?」


見張りも暇なもので、不可視の結界のその先を見えない事は自分が一番良く知りながらも、じーっと眺めていると中からイザナから声がかかった。


「んーん。問題というほどでもないんだけど。」


「ん?」


「ハルトの事だからもしも覗いたらどうなるかを考えてきっとそんな考えは起こさないんだろうけど、ずっと見られてるように感じる状況にサヤナちゃんが耐えられなくて。」


おっと、そういえば俺からは何も見えなくても中のイザナ達から俺は丸見えなんだったな。


.........ん、


「.........つまり俺の視線が恥ずかしいと?」


「......申し訳ございません......。」


サヤナが恥ずかしそうに小さく謝った。


なにそれ可愛い......。


あのおっぱいの大きくて可愛くて綺麗なサヤナが一糸まとわぬ姿で俺の視線に身体をモジモジとして恥じらっている。


そんな姿を想像すれば淫魔の俺でなくとも世の男共は揃って興奮する事だろう。


「じゃ、俺は馬車に乗っとくよ。」


このまま見えもしないサヤナの体をガン見して、サヤナを恥ずかしがらせるのも悪くないが、サヤナの中での俺の評価が最近はやたらと下がってるみたいだからな、たまには欲望を抑えるとしよう。


イザナ達に一声かけてから馬車へ乗り込むと、大きなクッションをいくつか集めてそこへ横になり頭を置いた。


値段が張っていただけあって質の良い生地を使っているのだろう、フワフワ、サラサラで肌触りはたまらなく気持ちがいい。


そしてこのクッションにはさっきまで.........。


「どう?女の子の匂いする?」


「んー、匂いはそんなにしないけど、さっきまでここに美少女達の肌が触れていたと考えると............って、イザナッ?!」


「アリスちゃん達の視線がないと相変わらずね。」


「誤解.........ってほど誤解じゃないが、俺はこのクッションの性能をだな、」


「そこ、ずっとサヤナちゃんが座ってたわよ。」


「へぇ、ここにサヤナが......。」


「............。」


「べ、別に変な事は考えてないぞっ?!」


「............。」


あんな美人なメイドが座ってたなんて聞けば誰だってニヤついてしまうものだ。


だから、そう冷たい瞳で俺を見ないでくれ。


「さて、それじゃあ、俺もそろそろ風呂に入るかな。」


「別にいいけど、今入ったらこれから一生1人風呂だからね。」


「.........ごめんなさい、待ちます。」


美少女達が全員風呂から上がるのを待ちますとも。


それから俺達二人は皆がワイワイと風呂を楽しむ声を片隅に馬車に腰をかけて待った。


「平和ね。」


「ん、そうだな。昨日、命張ってたのが嘘みたいだ。」


まぁ、リンジュ以外はそんな事があった事すら知らないだろうけど。


「ずっとこんな生活が続けばいいのにな。」


不意にそんな言葉が漏れる。


ありきたりなセリフだが、今を幸せと思える者なら誰もが望むことだろう。


「そうね。その為にも頑張ってね。」


「ん?」


「ハルトの頑張り次第で私達の幸せは決まるんだからね。」


エルフをさらった人間に力を貸した存在、そして新しく召喚された勇者の動向。


もしも戦争が始まろうものなら俺は全力で家族の為に戦い守らねばならない。


「あぁ、任せろ。皆まとめて絶対に幸せにするからさ。......ところで、」


「なに?」


「今晩辺りそろそろ俺の幸せの為に頑張ってくれないか?」


「ハルトの幸せ?別に身体を触るくらいなら構わないよ?」


「いや、確かにそれも幸せなんだけど......そうじゃなくて、さ。...分かるだろ?」


「何?ハルトは私に何をして貰ったら幸せなの?」


「そんなに言葉にさせたいのかよ......。俺が幸せになるのはただ一つ。エッ...「パパ、お風呂でたよ!」.........お、おう、そうか!」


突如背後からかけられた声にビクゥッ!と身体が跳ね上がる。


そして同じタイミングで、微かにニヤリと頬を上げるイザナ。


風呂を出るアリスに気づいて狙ってやがったな。


「で、何て言おうとしたの?」


「............俺はイザナと一緒にいられるだけで幸せだよ。」


「そう。私もハルトといられるだけで幸せよ。」


イザナは満足そうに笑みを浮かべてアリスに続いてフィオルとサヤナ、リンジュが出たお風呂へ向かって馬車を降りていった。


「はぁ、まったく適わねぇな。」


......でも、わるくない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ