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84.馬車とはいったい……。

夜の営み?


「つまりエッチする為の馬車って事か?」


「はい。お客様の中には馬車での移動中も異性と交わりたいという方がいらっしゃいますので、その為に設計された物です。揺れを軽減するのは勿論、内部からの音を漏らさない防音、そして特に大きな声が出てしまう方の為に防音魔法の式が内部に描かれておりますので、魔力さへ流していれば完全防音で、「もういい。」......申し訳ございません。」


まったく、何が防音、何が夜の営みに特化だ。


.........俺だってこの馬車が必要になる機会に恵まれたいよっ!!!


馬車での移動中にまで盛ってそれを受け入れてくれる異性、羨ましくてしょうがねぇ!


..................はぁ。


「............真ん中のをくれ。」


「承知致しました。本日の受け渡しとなりますとこちらの展示品という事になるのですか問題はございませんか?」


「あぁ。」


「ありがとうござます。それと、敷物やクッションなどはお求めになりますか?」


「敷物?」


「はい。揺れを軽減致しましても硬い馬車に長期間乗る事を考えますと、色々と痛い所が出てきますので。」


「あー、そうだな。じゃあ痛くないように適当に付けてくれ。嫁とメイド、それに小さな女の子が二人........いや三人いるからそれを踏まえてくれると助かる。」


どうせ買うのならアリス達に喜んで貰えるものの方が良いからな。


「承知致しました。ではこちらのハーフ台、お値段410万ダベルとその他付属品で20万ダベル、計430万ダベルとなります。」


「ん、これで。」


問題なく予算内。


俺はポケットから入店時と同じく白金貨を取り出して店員さんへと渡した。


「では、内装の整理や、お釣りをとって参りますので店内の方で少しお待ちください。」


「あぁ。」


そして店員さんに促されるまま、店内へ戻るとソファへと腰をかけ、そして15分程待っていると店員さんが戻ってきた。


「お待たせ致しました。こちらお釣りの570万ダベル、金貨5枚と小金確7枚です。」


「ん、確かに。」


「では、お客様の馬車は表へ運ばせて頂いてますので、どうぞ表へ。」


裏手に置いてあった物をわざわざ移動しておいてくれたのだろう、店員さんに連れられて店の表へと出てみると、さっき裏でみた馬車が置かれていた。


「内装の方の確認をお願いします。」


「あぁ。」


促されるままに馬車に乗り込み中を見ると、ふわふわの柔らかそうなクッションやぬいぐるみが置かれていて、白に黄色、そして僅かにピンクと清潔感、そして可愛らしさの溢れた空間が広がっていた。


リサの店のように余りにも派手過ぎないのは俺にとってもかなりの高評価だ。


「こりゃいいな、なかなかのセンスだ。」


「お褒め頂きありがとうござます。ではこれにて取引成立としますがよろしいですか?」


「あぁ。勿論だ。」


「ありがとうござます。では、どうぞ良い旅路を。」


「あぁ。ありがとうな。」


軽く頭を下げた店員さんに、手を挙げてから俺は馬車を降りた。


そして馬車の前方へと移動すると、本来は馬に付けられるロープを手に取る。


「さて、出発。」


本来なら、やぁっ!と馬を走らせたい所ではあるが当の馬がいないのだから仕方がない。


俺はググッ!とロープを引っ張り、馬車を走らせた。


初めは軽く力がいるように感じたが、少し走らせてしまえばなんて事はなく、スイスイと走る。


「これなら思ってたよりは楽だな。」


これからイザナ達を乗せて家まで走るのだ。


余りに辛くては困る。


そして暫く一人で馬車を引き走っていると遠くに木の下の木陰で休んでいるイザナ達が見えてきた。


「ふぅ、待たせたな。」


馬車を減速させ、皆の前で停めるとアリス達は目を輝かせた。


「凄いっ!パパ凄いっ!」


「はいっ!とってもおっきいですぅ!」


「とても立派です。」


おぉ、外観だけでこうも喜んでくれると嬉しい限りだ。


「はるとぉ、乗ってもいーいっ?!」


「おぉ、いいぞ。アリス達も遠慮せず乗ってくれ。」


リンジュの問いにそう答えるとアリスに手を引かれてサヤナ達は一斉に馬車へと乗り込み、口々に感想を言い合っていた。


「気に入ったみたいだな。」


「そうね。外観もだけど、あの内装良い色使い。」


「あぁ、でも、それにしてはあんまりテンション上がってないみたいだな。」


「まぁ、今はいいんだけどね。」


「ん、今はって?」


「......この馬車、これから先使う事ってあるのかなって思っただけ。」


.........つまり無駄遣いなんじゃないかって事か。


「いや、俺はこれを使うつもりだぞ。」


「そう、ならいいけど。」


イザナの俺に向けられる信用していない瞳。


まったく、人を飽きやすい子供みたいに.........頭の隅で俺もそうなるんじゃないかなって思っていたのは絶対に口が裂けても言えない。


「さて、じゃあそろそろ出発するぞぉ!」


そう言うと俺の声に答える皆の声が馬車の中から聞こえる。


「イザナはどうする?......一緒に引っ張ってくれるのか?」


まぁ、引っ張るのは俺一人で全然間に合っているからただ俺の隣を歩いてくれればそれだけで俺は幸せなのだが、


......なんなら手網を握ってペちペちしてくれるのも俺としては嫌いじゃない。


「いやよ。たまに様子を見に顔出すから安全運転でお願いね。」


イザナはそう言うとぴょん!と馬車へと乗り込んだ。


「.........じゃ、じゃあ、しゅっぱつ。」


そして後ろから聞こえるアリス達の楽しげな声を耳に、俺はゆっくりと馬車を引き始めるのだった。


......ていうか、誰も馬がいないことには突っ込まないのかよ。

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