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83.馬車に必要なもの。

「おーい、リンジュそろそろ起きろ。」


「んにゃむにゃぁ〜......。」


「一緒に冒険者やるって話、白紙にするぞ?」


「うぴゃっ?!お、起きてるよっ?!」


「おう、今起きたみたいだな。で、身体の方はどうだ?飛ぶのがまた辛いのなら馬車を買ってくるんだが。」


「うーん......、」


リンジュは鱗で出来た服の背中を開けてそこからニョキっと翼を生やした。


「うんっ!もう治ったよっ!!」


笑顔でそう言うリンジュの背に生えた翼は未だに元の綺麗な翼には戻っておらず、そもそもハウサラスに帰ってきた時となんら変わりが見当たらない。


「ったく、お前はもう少し魔力操作を練習しろよ。せっかく魔力が沢山あるのに治癒速度が遅いのは勿体ないだろ。」


「うにゅぅ......。」


昔からそこを鍛えろと言い続けてきたが、まったく進歩がみられない。


「ま、今日のところは休んでおけ。馬車を買ってくるからさ。」


「あ、あたし飛べるよっ!?」


「知ってるよ。でも休め、命令だ。それに馬車も一応欲しいと思ってたしな。」


「.........わかった。」


まぁ、見る限りとんでもなく酷い傷という訳でもなく、多少無理をしたところで後遺症が残る事はないだろう。


それでもこういう時にきちんと休むのは大切な事だ。


無理をする事に慣れ、それが当たり前になってしまうのは何よりもいけない。


俺はリンジュ含めたアリス達をイザナに任せると、少し離れたとこにある馬車を専門に取り扱っている店へと向かった。


馬車を欲しいと思っていたのは本当で、イザナとデートの時に見つけて覚えておいたのだ。


前々から俺とイザナは移動をせっかちに急ぐ癖がある。


勿論わざわざゆっくり移動する必要もないのだが、家族皆で野営の準備をしたり、外でご飯を作ったり、そしてゆっくり移動中のたわいない会話。


それらは大きな思い出とはならないかもしれないが、きっと幸せの一部となるはずだ。


途中で金物屋に寄り鍋などの調理道具を、そして屋台に並ぶ適当な食材を買いながら目的地を目指し、両手が一杯になった所で馬車を売っている店へと辿り着いた。


「いらっしゃいませ。」


「馬車が欲しいんだが、予算はこれで何かいいのあるか?」


店に入ると感じの良さそうな男の店員が接客してくれて、俺はポケットからお馴染みの白金貨を1枚見せた。


相当高いものでなければ一枚あれば十分過ぎる上に予算を多く見せればそれだけで対応も良くなるものだ。


......が、今回はそう上手くもいかなかった。


「申し訳ありません。実は先日の祭りで酒に酔った女がうちで売っている馬を全て逃がしてしまったんですよ。明日には馬の手配も出来るのですが。」


「いや、悪いがこれから必要なんだ。どこか馬を売ってる場所はないのか?」


「それが、1年ほど前までは2つほど店があったのですが、今回の位闘を前にこの国を出てしまって、今馬を取り扱っているのはここだけなんですよ。」


ツァキナを信用せず逃げ出した奴の実害がここで出てくるか。


馬がないと馬車は動かないからな.........ん、馬がないと?


「なぁ、馬車は今すぐ売って貰えるんだよな?」


「はい、荷物を積むなら荷台、人を載せるなら客台。またはその両方を兼ね揃えたハーフ台まで取り揃えておりますよ。」


「客台とハーフ台か.........。」


今は取り敢えずそんな大した荷物はないが、いつか旅行する時などに使うなら荷台もついていた方が便利だよな。


「じゃあ、ハーフ台を頼む。」


「ハーフ台ですね。承知致しました。商品は口頭や図面で説明しても宜しいのですが、すぐ近くに置いてあるのでもし宜しければご覧になりながらお決めになりますか?」


「ん、そうだな。」


手短に済ませたいとはいえ、納得がいくものをというのは最低条件だからな。


「分かりました。ではすぐ裏手ですのでこちらへ。」


「あぁ。」


店員さんに案内され、店の裏口から外へ出るとそこには20台を超える馬車が並べられていた。


「ハーフ台はこちらの3点ですね。」


「え、これだけあってハーフ台はそれだけなのか?」


店員さんが示した馬車は並べられた馬車の中でも隅の方に並べられた3つだ。


てっきりハーフ台が良く売れているものだと思ったのだが品揃えを見る限りはそうでもないようだ。


「うちのお客様は商人の方が多くて、商人の方は荷台と客台を別々で購入なされるのでハーフ台は正直売れ行きが悪いのですよ。」


「商人か、なる程な。」


通常、商人というのは一度に何台もの馬車を走らせて各地に商品を売って回る。


一台だけしか使わないのではなく何台も使う場合は中途半端なハーフ台を使わずとも、荷台と客台をそれぞれ用いればいいのだ。


「で、この3つはどんな特徴があるんだ?」


「そうですね、まず左にあるこのハーフ台。こちらは耐久性が高いですね。周りを鋼でコーティングしていまして、弱い魔物でしたら中に隠れていればやり過ごす事ができます。」


ふむふむ.........いらないな。


「次に間のハーフ台ですが、こちらは8人乗りなのに、食料、水、着替えなどの多くの荷物が積み込める収納設計、さらに特殊な技術を用いまして段差などによる揺れを軽減した長距離移動に特化した設計となっております。」


「へぇ、なかなかいいな。欠点はないのか?」


「欠点と言えるのは、左のハーフ台程の耐久性はない事と、この大きさ故の小回りの悪さでしょうか。あと他よりも少々値が張ってしまいます。」


「なるほど...。」


耐久性と値段については問題ないが、確かに他の2つと比べると大きいから家の周りの森では少し動きにくいかもしれないな。


「それで、右のはどうなんだ?」


「こちらは夜の営みに特化した設計となっています。」


.........は?


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