81.俺のセクハラにうちのメイドはお困りのようです。
料理を食べ終わり、少し店内で休憩しているとだんだんと店の客入りも減ってきて、サヤナがいつものメイド服へと着替えて俺達の元へと帰ってきた。
「おつかれ。もういいのか?」
「お疲れさま。」
「ありがとうございます。レンエル様にピークは過ぎたから上がっていいと言われましたので。......あ、イザナ様、そのお洋服とっても素敵です!」
「うん、ありがと。」
サヤナはイザナの服が変わっているのに気が付くと目を輝かせた。
「さて、それじゃあサヤナも終わった事だしアリスとフィオルを迎えに行くか。」
「あ、あのっ!」
俺とイザナが立ち上がるとそんな俺達をサヤナが呼び止めた。
「ん?」
「こ、これ、昨日の夜とさっきまでの報酬だと今レンエル様に貰ったんです。」
サヤナはそう言うとチャリンと音の鳴る小袋を見せた。
「へぇ、ちゃんと給料くれたのか、良かったな。」
「えっと、その、どうぞ......。」
「.........はぁ。」
おもむろに差し出された小袋に俺は小さくため息を零した。
そしてそんな俺の隣でこう来る事を俺と同じく最初から予想していた様子のイザナは差し出された小袋を下ろさせた。
「それはサヤナちゃんが空いた時間に自分で稼いだお金でしょ?私達に渡す必要はないわよ。」
「ですが、奴隷の所有物は全てご主人様の物です。それにそもそも私達を購入する時にハルト様はとんでもない金額をお支払いしました。この程度では足しにもならないのは承知してます。でも、ほんの少しでも、「もういい。」......。」
サヤナの言葉を聞くに耐えず途中で辞めさせた。
「何度も言ってるよな?お前は奴隷としてじゃなくメイドとしてうちに来たんだって。あとな、お前とアリスの購入金額をお前が気にする必要はない。」
そもそも購入金額に関しては手っ取り早く落札したくてぶっ込んだ俺の責任だ。
アリスと一緒に買った事で恩を感じているのは分かっているが、その購入金額まで恩を、そして罪悪感を感じる必要など何処にもない。
「だから気にせずその金はしまっておけ。」
「うん、私達に渡すくらいならそれでアリスちゃんに何か買ってあげて。」
「.........分かりました。ありがとうございます。」
お礼を言う所ではないんだけどな。
まぁ、理解してくれて良かった。
「さて、それじゃあアリスとフィオルを連れて、そろそろ家に帰るか。」
「そうね。」
「はい。」
今度はサヤナも連れて再び店の奥へとお邪魔すると、いくつかの色の丸いマスが描かれた絨毯にそれぞれ手足を置いてアリスとフィオルが辛そうな体制で体を重ねて、プルプルと震わせていた。
.........なんか見ててドキドキするな。
「これは何やってるんだ?」
「異世界の国民的遊戯だよぉ。ツイスターっていって、指定された色のマスに手足を置いて先に倒れちゃった人が負けって遊びだよぉ〜。」
「へぇ......イザナ、俺とやってみるか?」
「嫌よ。どさくさに紛れていろんな所触られるのが目に見えてる。」
「............。」
まったく、イザナは俺を性欲の塊とでも思っているのだろうか.........まぁ、その通りだが。
「仕方ない。じゃあサヤナ、一緒にやるか?」
「...え、えっと.........。」
「嫌みたいね。」
サヤナは俺の誘いにあからさまに嫌そうな反応をしつつ、イザナへチラチラと目で助けを求めイザナがサヤナの気持ちを代弁した。
「......そっか。」
さっきまでの奴隷の立場を気にした態度はどこへいったのやら...。
.........まぁ、でもやっぱりこっちの方が俺には合ってるようだ。
どうも俺は人を従順に従わせるというのが向いていない。
こういうゲームでサヤナとエッチな展開になる事を望んでいるのは確かだが、立場的に拒否出来ずに嫌々やるというのは俺の望んでいるものではない。
購入してうちに来た当初のサヤナは、嫌な事は嫌と言えと何度言っても何一つ弱音を吐かずに無理をしていた。
まぁ、今でもその根本は変わってはいないが、今みたいにイザナへ助けを求める回数は時間が経つごとに増えた。
それは単にイザナに対して心を通わせてきたという事かもしれないが、それでも自分を追い詰めてしまうサヤナの性格上、こうして逃げ道が出来たというのはとても良いことだ。
.........俺がセクハラしなければ逃げ道なんてそもそも要らないのかもしれないが............まぁ、無理な話だ。