80.メイド喫茶の経営難は止まらない。
「そろそろ注文した物も出てくるだろうし戻ろっか。」
「あぁ。アリスとフィオルはもう朝ごはん食べたのか?」
「うん、さっき食べたよ。」
「レンエルさんの料理、とっても美味しかったです。」
「へぇ、レンエルは料理も出来るのか。」
どんな料理を作るのか食べてみたいものだ。
「まぁ、レンエルは元々厨房担当だからねぇ。厨房の制服を裸エプロンにした時に辞めちゃったけど。」
「お前はレンエルを嫌がらせる天才か?......ところで厨房には関係者以外も入って構わないのか?」
「入らなくていい。」
ゴスッ!と割と強めにイザナの肘が俺の横腹へと突き刺さる。
「じょ、冗談だよ。」
「ん、入るのはダメだけど、床をガラス張りにしてるから地下に行けば下から見学出来るよぉ〜。」
な、なん......だと......。
発想が天才すぎる上にそれに勝る行動力。
何てものを作り上げるんだこの勇者はっ?!
この場にイザナとアリス、フィオルの3人が居なければ懇願して見学させてもらっている所だ。
「へ、へぇ。まぁ、あんまり興味はないけど......。」
「そっかぁ〜、厨房もみんな可愛い女の子を選りすぐってるから見てもらいたかったんだけどなぁ。興味ないなら無理強いはしないよぉ。あー、残念。」
リサはニヤニヤと俺の今の状況を知った上で楽しむかのように挑発した。
「............飯食おう。」
「そうね。」
こんな誘惑の嵐に身を投じていては俺の精神は崩壊してしまう。
アリスとフィオルはまだリサと遊びたいようで、3人を残して俺とイザナは店の方へと戻った。
「ここの席よ。」
「おう。」
席は初めて来た時と同じテーブル席で、俺とイザナは向かい合うように腰を下ろした。
「お水です。」
「お、ありがとな。」
「うん、ありがと。」
「いえ。もう少しで料理の方をお持ちしますのでもう暫くお待ちください。」
メイド姿の店員さんはぺこりと頭を下げると他の客の接客へと戻った。
「それにしても前来た時も思ったが接客が丁寧でほんと心地が良い店だよな。」
「そうね。料理も美味しいし。」
値段はそう高くないし、店の女の子だって皆可愛い。
当然客入りも、男ばかりではあるが、最近見ているうちは満席も珍しくないほどすこぶる良く、赤字だと言っていたのが不思議なくらいだ。
と、店内の様子を感心しながら見ていると料理をトレイに乗せたメイドさんが料理を運んできた。
「お待たせしました。こちらがオムライスセット。そしてこちらがカレーライスセットになります。」
「おぉ、相変わらず美味そうだな。」
料理名は全く聞いた事ないが、どちらも見た目、そして匂い共に美味しいのが食べる前から分かってしまう。
「それではごゆっくりお過ごしください。」
「あ、ちょっと聞いてもいいか?」
「はい、なんでしょう?」
「言っちゃダメなら答えなくて良いんだけどさ、この店が赤字ってのは本当なのか?」
「はい、赤字ですよ。」
答えてくれなければリサに後で聞くつもりだったが、メイドさんはあっさりと答えてくれた。
「こんなに賑わってるのにか?」
「売り上げは悪くないんですが、その分は全てお給料へ回されるので店への収益はないんですよ。」
「......は、全部?」
「はい。お給料良くなかったらあんな店長の下では働いていられませんから。それでは。」
ニコッと1つ笑み残してメイドさんは歩いていった。
「.........つまりリサのセクハラのせいで赤字って事か。」
「つまりハルトに店の経営は無理って事ね。」
「何故俺がセクハラする前提だっ?!.........まぁ、どっちにしても俺には無理だが。............食べるか。」
「そうね。いただきます。」
「いただきます。」
2人手を合わせてから俺がカレーライス、そしてイザナがオムライスをスプーンで口に運んだ。
「......なにこれ、めちゃくちゃ美味い。」
「こっちもとっても美味しい。ほんのり甘くて、だけどそれに負けないお肉の旨み。こんなの初めて食べた。」
前に食べた時にリサにレシピは異世界の物だと教えて貰ったが、こんな美味い物が溢れているなんて羨ましい限りだ。
「イザナの一口貰うぞ?」
「うん、私はハルトの貰う。」
そう言ってお互い手を伸ばして互いの料理を食べるとこれまた2人して頬を抱えた。
「美味すぎるだろ......。」
「.........私、ちょっとこのお店で働こうかな......。」
「お、なら俺も皿洗いかなんかで厨房の手伝いするぞ。」
「どさくさに紛れて入ろうとしない。でも、ほんとに美味しい。これくらい美味しい料理作れたらいいのに...。」
結局その後、料理を食べ終わるまでイザナは本気で料理を習うか悩んでいるのだった。
◇ある日のできごと。◇
「ふぅ、次の話出来たよ。」
「ん、見せてー。」
友人Aはメールで送った80話に目を通した。
……結構前から読んでもらってるけど、やっぱりこうやって目の前で読まれるのは恥ずかしい。
「ふふっ。」
あ、いま笑った。
読み始めてから、少しって事はあの辺かな……嬉し。
それから暫くして読み終わった友人A……エーコは携帯から顔を上げた。
「うん、普通に面白かったよ。」
「そっか。」
「あ、でも、ダメ出しって訳じゃないけど、」
あぁ、この始まり方、これはあれだ、普通にダメ出しだ。
そんな予想は見事に的中、それから少し、幾つかダメ出しをされ、そして、
「でもまぁ、普通に面白かったよ。」
それもう聞いた……嬉しいけども。
「じゃあ、もういい時間だしさっそく投稿しようかな。誤字なかったよね?」
「多分ね。」
「りょかーい。さて……ん、タイトルどうしようかなー。」
「裸エプロン下から見るか横から見るか、とか?」
「あ、上手い。」
「でしょお!」
ふと思いついたであろうそのタイトルを褒めるとエーコは自慢げに胸を張った。
「あー、でもそのタイトルは使わないかなぁ。」
「えー、せっかく良いと思ったのに。」
「いやだって、あんだけいい作品のタイトルをこんなくだらないので乗っかるのはさぁ、」
「見てないくせに。」
「いや、それ関係ない。」
「君の名はも見てないくせに。」
それもっと関係ない。
「じゃー、もっといい案出すからちょっと待って。」
「いや、タイトルくらい自分で考えるから、」
「しゃらっ!」
エーコは黙れと掌をこちらに向けて、80話のタイトルを考え始めた。
「…………裸…………、裸…………」
タイトルにつけるにあたる話の中の要点、80話の中身は裸以外になかったのかなっ?!
「もー、適当でいいから、」
「…………メイド喫茶の経営難は止まらない…………つまんないなぁ。」
「いや、別にサブタイトルにそんなこだわらなくても、」
「やっぱり裸エプロン下から見るか横から見るか。が、いいなぁ。」
「女は嫌がり男は喜ぶ最低で最高な職場環境。」
「つまんなっ!!!!!」
ひどっ、
「それだったら絶対、裸エプロン下から見るか横から見るかだよ。」
「わかった、わかった。」
サブタイトル、メイド喫茶の経営難は止まらない。
「さて、投稿っと。」