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74.嫁と仲間


「.........ん?お前はもうとっくに役に立ってるだろ?」


ギルドの依頼の時だって、ハウサラスに来た時だって、そして勇者召喚を既のところで止められたのもリンジュが頑張ってくれたからなし得た事だ。


「......じゃなくって、昔みたいに一緒に戦ったり......一緒に寝たり......。」


「は?」


「違うっ!今の寝るは野営的な意味だぞっ?!」


言葉というのはまったく厄介なものだ。


ギロリと睨むイザナに慌てて釈明をする。


こうして嫉妬してくれるのは愛されている証拠で嬉しい限りだが、度々肝を冷やされるのはどうにかして貰いたいものだ。


「......でもリンジュ。残念だがそれは無理だ。」


「......え、なんで......。」


「俺はもうとっくの昔に全ての地位を捨てて今の暮らしを手に入れてる。今回は状況が状況だけに急遽国に戻ったがこれから先ここに留まるつもりもない。」


まぁ、つまり何が言いたいかというと、


「俺は無職なんだ。」


国に属さないのだから偵察も戦も、昔のようにリンジュの力が必要な事は殆ど無い。


「ハルト、冒険者も仕事よ?」


「ん、冒険者?いやあれは4億稼いだら辞めていいって話だろ?」


そして今回の位闘での働き。


その位の金額はツァキナに請求すれば払ってくれるだろう。


.........意地でも払ってもらう。


「誰も辞めていいなんて言ってないよ?」


「.........え?」


「だって、アリスちゃん達に働く事の大切さを教えるのはハルトの仕事って言ったでしょ?最低限稼いだから辞めるなんて良くないよ。」


「............。」


「だから鳥も冒険者をやってみたらどう?」


「ふぇ?ぼ、ぼうけんしゃ?」


唐突な話の振りにリンジュは首を傾げた。


「そっ。それで稼いだお金をハルトに従者として働かせてもらっているお礼に全部渡すの。そうすればお互い得して平等でしょ?」


びょう.........どう...?


俺にはただ主が従者に働かせて稼いだお金をふんだくっている最悪の図にしか見えないのだが......。


「......よく分からないけど、分かったっ!それでまたはるとの役に立てるなら、あたし冒険者やるっ!」


「............リンジュ.........。」


お前はどれだけ良い奴で、どれだけバカなんだよ......。


「さて、じゃあそろそろツァキナに報告しに行っとくか。」


フェルを颯爽と連れ去って事情をまだ知らないからな。


心配している事だろう。


「着いてきてもつまらないしリンジュはその辺で休んでてくれ。」


「えっ、あ、あたしも行くっ!」


「言うこと聞かないと一緒に冒険者やってやらないぞ?」


嘘だけど。


リンジュはこう見えてかなり我慢強い奴だからな。


今日1日でかなりの距離を飛び、疲れ、そして傷付いているにも関わらず、こうでも言わない限りは無理してでも俺についてくる。


サヤナといいリンジュといい、この手の連中が一番厄介だ。


「や、やすむぅっ!」


リンジュはそう言いながら俺から手を離すと倒れ込み、道のど真ん中に大の字で仰向けに寝転がった。


「.........踏まれないようにな?」


「では行きましょうか。」


「あぁ。」


そして城の中へと......、


「ふぎゅぁっ?!」


歩きだそうとした時に不意に足元から聞こえた妙な叫び声に覗き込むとそこには全く悪びれもせずにリンジュの腹を堂々と踏み抜くイザナの足。


「......いや、お前が踏むのかよ。」


「あっ、うっかり。」


どうやったらたった今目の前で横になった奴をうっかり踏めるのか。


「きつねぇっ!!!!」


怒りを込めて叫ぶリンジュを颯爽と無視するイザナ。


全く......今日一日で少しでも仲良くなったと思ってたのに、いつになったらこいつらが仲良く出来る日が来るのか。


それからようやく城の中に入ると、フェルに着いてツァキナの自室へと向かった。


そしてその最中、さっき思った事を呟く。


「にしても意外だったよ。」


「何が?」


「てっきりイザナならリンジュが俺といようとするのを却下すると思ってたからさ。まさか冒険者を一緒にやれなんて言うとは思わなかったよ。」


「んー.........うん、そうね。少し前の私ならきっと嫌だったと思うわ。心の奥底でほんの少しだけ不安があったのよ。ハルトが他の誰かを好きになるんじゃないかって。」


「.........。」


「勇者召喚の時、ハルトは私と一緒にいる事よりもエルフちゃん達、んーん、テイリちゃんの為に命をかける事を選んだ。」


「いや、あれは、」


「分かってる。もしハルトがあそこで助けに行かなかったらそれは私の好きなハルトじゃないもん。でもハルトがテイリちゃんの為に命をかけたのはテイリちゃんが女の子だから、じゃないよね?」


「当然だ。テイリは俺の従者、仲間だ。性別なんて関係なく俺は命をかけて力になる。」


「うん、だからだよ。ハルトは鳥の事も命をかけてもいいくらい大切に思ってる。ハルトの大切な物は私も大切にしたいもん。」


「イザナ............。」


じゃあそろそろ名前で読んでやれよ...。


ていうか、お前はついさっき大切にしたいものを容赦なく踏みつけたんだぞ?


.........まぁ、口には出さないけど。


「あ、でもハルトが鳥とエッチな事をしたら、その時はハルトの大切なものとか関係なく殺すからね?浮気はだめだよ?」


「わ、分かってるよ。」


きっとイザナはこうは言ってるが根っからの本心ではないはずだ。


俺の事、そしてリンジュの事を考えてかなり譲歩しての提案だろう。


「俺が疑わしい行動ばっかりなのは自覚してる。でも、これだけは信じてくれ。俺はイザナに辛い思いは絶対させない。それに俺は従者の為なら命をかけるっていったけどな、俺が最も命をかけて守りたいのはイザナなんだ。エッチしてくれなくてもいい、俺の事を嫌いに......はなって欲しくないがもし嫌いになっても、それでも俺はお前を一生愛し続ける。」


「.........うん。よく分かったよ。ありがと。」


イザナは小さく笑みを浮かべた。


「エッチはしなくていいのね。」


「.........えっ?!」


そこっ?!!


あけましておめでとうございます。


本年も、ちまちまニマニマと書いていくのでお付き合い頂けると嬉しいです。

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