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73.私の欲しいご褒美はただひとつ。


そしてゆったり心地よくリンジュの背中に運ばれ、朝日が登ろうとしている頃にようやくハウサラスへと帰ってきた。


「どう?もう動ける?」


膝枕をしているイザナが顔を伏せて俺の顔を見ながら問う。


最初目が覚めた時は魔力が枯渇して身体が石になったかのように全く動かなかったが今ではイザナの膝枕のお陰で随分と回復し、戦闘でなければ全く問題なさそうだ。


「まだ無理だな。」


「.........そう。じゃあ降りたら私がおんぶするね。」


「えっ、あ、あぁ。頼む。」


正直、おんぶはされるよりもする方が色々と嬉しい事が多いのだが、たまにはこういうのもアリだろう。


イザナは俺の目をじっと見つめてあっさりと嘘だと見抜きながらも何も言わずに話を合わせてくれた。


街の上空を飛行していると、昨日の祭りとは打って変わり、街は静かな朝を迎えていた。


「ついたよぉ。」


リンジュはそう言いつつ傷んだ羽を優しく羽ばたかせながら衝撃を最小限に抑えてゆっくりと城の前へと身体を下ろした。


「じゃあ、ちゃんと掴まってね。」


「おう。」


イザナはよいしょ、と俺の頭から膝を抜くとわざと動かない俺をポイッと放り投げてから背中でキャッチした。


よし、ちゃんと掴まらないと。


ふにゅ。


「ねぇ、絶対やるとは思ったけど、胸から手を放さないと自分で歩かせるよ?」


「ごめんなさい。」


名残惜しいものの、仕方なく手を離し普通に掴まる。


「エルフ達は動けるか?」


「いえ、シュミー以外はまだ殆ど動けませんわ。」


「そうか...。」


まぁ、幸い魔力枯渇は特定の種族以外は後遺症が残る事はないから待てば元気になるだろう。


「じゃあその子達も中に運んで休むか。」


「いえ、」


「ん?」


「まだ色々と話したい事や、お礼はあるのですが、私達は一度アスカナンへ帰りますわ。里の者には当分連絡を取っていませんでしたし、この子達の家族も心配しているので。」


「あぁ、そうだな。この子達も1ヶ月ずっと辛い思いをしてきたんだ。家でゆっくり休ませてやってくれ。また近い内に会いに行.........来てくれて構わないからな。」


「何で来てくれませんのっ?!」


「いや、お前の里遠いからな......気が向いたら行くよ。それに、まぁ、家に来てもらいたいって気持ちもあるからさ。」


「テイリさんが来るならきちんとおもてなしするから是非遊びに来て。」


「ありがとうですの。私も一度行ってみたかったんですのよ。今度是非伺わせて頂きますわ。」


「おう。」


「では、改めて。ハルト様、イザナ様、それにリンジュ様にフェル様。この度の件、本当に心から感謝しますわ。ありがとうですの。」


テイリは数歩下がると俺達へ向けて深々と頭を下げた。


「では。転移(テレポート)。」


テイリがそう唱えるとテイリ含めその場にいたエルフ全員が一瞬にして消え去った。


「これだけは本当に便利な魔法だよな...。」


「ハルトは練習しないの?」


「練習して出来るならとっくに練習してるよ......。」


俺は魔力ゴリ押しで高火力の魔法を使うのは得意だが転移魔法のように小難しい魔法は全く出来る気もしない。


「じゃあ俺達もそろそろ。」


「そうね。」


イザナは俺をおぶったままぴょんっと軽くリンジュの背中から飛び降りた。


それに続いてフェルも飛び降りるとすぐにリンジュは人の姿へと戻った。


「んーっ!疲れたぁ。」


「お疲れ。翼大丈夫か?」


人化して今は翼が見えないものの、傷が癒える訳ではない。


「うん、ちょっと背中がヒリヒリするくらいだよぉ。」


「そうか。あまり酷くないならいいが。そういえば昨日言ったの覚えてるか?」


「ふぇ?」


「お礼に何かするってやつだが、まぁ、忘れてるならいいや。」


「わー、わー、わー!覚えてる、覚えてるよぉっ!!」


「もう決まってるか?」


「んー.........うん。」


「そっか。で、何がいいんだ?」


「...............。」


「...............ん?」


「......えっと.........。」


リンジュはなかなか言い出さず、そしてチラチラと俺をおぶっているイザナへと邪魔そうに視線を向けた。


「あぁ、イザナに聞かれたくないのか。」


「え、なに?もしかして性的な事なの?殺すよ?」


「ち、違うっ!違うけど......。」


声色はいつもと全く変わらないのに放たれた殺気は息を飲む程でリンジュは後ずさった。


「じゃあ何なの?性的な事じゃないならハルトが個人的にしようとしているお礼の邪魔なんて無粋な事はしないよ?」


「......また.........。あたしはまた従者としてハルトの役に立ちたいっ!」

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