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69.命を懸けてでも。


「あ、見えてきたよ。」


あまりの突風で目を開けるのが痛いがイザナはじっと前方を見ながら言った。


「お、速いな。地図上ではかなり距離があったのに流石のスピードだな。」


どれどれと進行方向を見てみると遥か前方、ポツリと小さく何かあるように見える。


......この風の中で相変わらずの目の良さだな。


「フェル。」


「...............はぃ。」


「かなりキツそうだな。」


まぁ、魔法が得意なテイリの身体強化でもこれだから仕方ないだろうが。


「キツい所悪いがあの村に着いたらすぐに魔法式を解析してくれ。」


「......か、かいせ.........き.........。わか.........。」


おいおい、言葉を途中であきらめるなよ。


「解析ってどういう事するの?」


「ん、そうだなぁ、魔法は対価はもちろん、色々とリスクがあるもんなんだ。それを阻止するのにはまたそれなりのリスクがある。まぁ、リスクって言ってもそれぞれはそう大したもんではないんだけどな。ただ、勇者召喚程の大魔法になれば阻止の仕方で何が起こるか分からない。だから魔法式からどう対処するのがいいかをフェルに調べて貰うんだ。」


つまり素人が分からない物に気安く手を出すなという事だ。


それから少しするとリンジュの流石のスピードもあり、あれだけ遠かった村があっという間に目の前へと現れた。


ようやくスピードを落として村の上空を旋回するリンジュの背中から村を見下ろす。


「この高さでも分かるほどでかい魔法式だな。」


村全体を使って地面に直接描かれた魔法式は今まで見てきた数々の魔法式の中でもかなり大きく、そしてややこしい。


そして、その村を中心として八方向に数百単位の騎士達が隊列を組んでいた。


.........ん?


「おいリンジュ、翼ボロボロだけど大丈夫か?」


「ちょっと痛いけど平気だよ。」


ふと目に入ったリンジュの両の翼は鱗が疎らに剥がれ、そして、一部痙攣してピクピクと不自然に脈打っていた。


そもそもリンジュは全速力で俺の実家とハウサラスを往復、そしてこの村まで飛んでいた。


途中で、俺達の話に触発されてかなりスピードを上げていたがあれは限界を超えたスピードだったのだろう。


悪いな。


そう喉元まで出かけた言葉を飲み込み代わりの言葉を吐き出す。


「ありがとうな。」


「うんっ!」


リンジュは嬉しそうにワサッ!と翼を羽ばたかせた。


全く、本当に俺には勿体無いくらいの良い従者だ。


「で、フェル、魔法陣の方はどうだ?」


「......残念ですが一足遅かったようです。」


「......え、」


「どういう事だ?」


まだ様子からいって勇者召喚が終わった様子はない。


だとすれば、


「もう既に魔法発動の準備期間に入っています。こうなっては......。」


「なら、発動しちゃう前に魔法陣を消せば、」


「それはダメだ。さっきも言ったろ、これだけ大規模な魔法だと下手な事は出来ねぇんだ。」


土地が枯れるか、辺りにいる奴らに影響が出るか、一体どうなるか想像もつかない。


フェルの言っている遅かったというのはそういう事だ。


「じゃあ、もうどうする事も出来ないんですのっ?!」


テイリは縋るかの様に掠れた声を上げる。


その目には大粒の涙が浮かびリンジュの背中を濡らした。


「......テイリ、リンジュ、命令だ。ここから少し離れて待機してろ。」


「...ハルト......様?」


「はると......?」


「言ったろ、エルフ達は絶対に助ける。」


「まさか今からエルフを探しに行くおつもりですかっ?!危険、いえ、無謀ですっ!もういつ魔法が発動されてもおかしくないんですよっ!!」


フェルは位闘の事を頼みに来た時のように、声を荒らげた。


だが、そんな事は百も承知だ。


無謀なのを承知の上で、それでも俺は行く。


ここで引く選択肢なんて俺にはない。


「イザナ、もしもの時はアリス達を頼むぞ。」


「............。」


イザナは何も言葉を発する事無く俺の目をじっと見つめた。


「愛してるよ。」


俺はそう言葉を残すと村目掛けてリンジュの背中を跳び降りた。


やる事は至って簡単。


邪魔する騎士を飛び越えて村に入りエルフを連れて魔法陣から出る。


いくら準備期間といっても、魔力源が無ければ周囲に大きな影響を及ぼすような事は無いはずだ。


魔制解除(リミステル)。...さて、」


「じゃあ行こっか。」


...............え?


「......なんでイザナ着いて来てんの?」


「私、待機してろって言われてないし。まぁ、言われても聞く気はないし。」


「...............。」


そうだった、イザナはこういうやつだった。


「それにもし魔法が発動しても私は魔力ないし問題はないでしょ?」


「ま、まぁ、そうだけど。」


「なら、一人よりは二人。エルフちゃん達を絶対助けるよ。」


「ああっ!」


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