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65.母親


「さて、それじゃあ早速中に入るか。」


右手にはリンジュ、左手にはレミと両手に花状態で俺達は家へと入った。


家に入ると俺達が来るタイミングを見透かしたようにちょうど母さんが姿を現した。


母さんも昔から人化を解くことはほとんど無く、俺が知る限りではずっと人間の姿だが、その容姿は人間でいう25歳くらいだろうか。


基本的におっとりとした性格で、その性格が顔にくっきりと現れている。


髪は艶のある綺麗な黒髪でもし母親でなければ俺はきっと母さんに恋をしていたと確信出来る。


イザナと出会っていなければの話だが。


「ただいま。久しぶりだな、元気だったか?」


「えぇ、勿論元気してたわよぉ。随分と会わない間に色々あったみたいねぇ。」


母さんはそう言うとチラリとイザナの方へ視線を向けた。


「はじめまして。私はハルトと220年前から夫婦をさせてもらってますイザナです。挨拶が遅くなってしまってすみません。」


お、なんか珍しい。


こんなにも緊張してかしこまってるイザナはなかなか見れるものじゃない。


「あら、いいのよぉ。私の名前はミヤっていうのだけど、嫌でなければお義母さんって呼んでちょうだい。」


「では、そう呼ばせて貰います。......お義母さん。」


イザナは顔を少し紅くして目線を逸らした。


いつもの堂々としたイザナも素敵だがこういう一面も可愛いな。


「なに?」


「いや別に。」


俺の視線にやや不機嫌気味に問うてくるイザナだがついつい頬が緩む。


「うふふ、知ってはいたけどこうしてちゃんと見ると本当にお似合いねぇ。嬉しいわぁ。それでそちらがテイリちゃんね。」


「は、はいですわ。ハルト様には昔からとってもお世話になっていますの。そのお母様であるミヤ様にお会いできて嬉しい限りですわ。」


「貴方がハルトの事を慕ってくれてるのは良く知ってるわ。ありがとうね。」


「い、いえ、そんな。」


「さて、挨拶はこの辺にして早速話を進めたいんだがいいか?」


「そうねぇ。そうしましょうか。じゃあ立ち話もこの辺で場所を移しましょう。ルミ、お茶を入れて持ってきてくれるかしら。」


「はい、お母様。」


「レミも手伝うのっ!」


ルミはそう言うと台所がある方へ歩き出し、その後をレミが走って追いかけた。


「こちらへどうぞぉ。」


ニコッと1つ笑みを零してから応接間がある方へ歩き出す母さんに続いて俺達も後を追う。


「あ、そういえばリンジュちゃん。」


「は、はひっ?!」


ふと思い出したように名前を呼んだ母さんにリンジュはビクッと驚き怯えながらも声を押し殺して返事をした。


「もう、そんなに怯えないでぇ。前みたいに騒がなかったら別に怒らないから。」


「.........。」


リンジュは母さんの言葉に何も返す事無くススッと俺の後ろに身を隠した。


「ハルト様、一体何があったんですの?」


「母さんは騒がしいのが嫌いって言ったろ?」


「えぇ。」


「リンジュは妹二人のからかいに対して騒ぎ回ってな、その時の母さんがトラウマなんだよ。」


「......そうなんですの......。」


テイリは俺の説明にイマイチ納得していない様子で首を傾げた。


まぁ、今の母さんは怒ってる姿なんか想像出来ないくらいおっとりしているからな。無理もない。


「さっ、どうぞ遠慮せず座って。」


「ありがとうございます。」


部屋へと着くと母さんに促されてイザナは椅子へと腰を下ろし、それに俺たちも続いた。


「お茶、お持ちしました。」


「お茶なのー!」


と、ちょうど良いタイミングでルミとレミはお茶を持って部屋へと入ってきた。


「ありがとうな、二人とも。」


ルミはレミの持ってきたお盆に乗せたお茶を全員の前へと配った。


「ありがとうね。」


「ありがとうですわ。」


「ふん。」


若干1匹、お礼の言えない奴がいるな。


まぁ、前に母さんに怒られたのは元はと言えば妹がちょっかいを出したからで無理もないが。


「さて、じゃあ余り時間もないようだし、早速本題へ入りましょうか。」


「助かる。」


「ちょっと待って、本題って、そもそもどうしてお義母さんが今回の事を知ってるの?」


「あぁ、そういえば言ってなかったな。母さんは耳が良いんだよ。」


「......それで?」


「うふふ、それだけよ。私は耳がとっても良いの。よーく耳をすませば世界の裏側だって聞こえちゃうくらい。」


「母さんは騒がしいのが嫌いって言ったろ、それはこれが原因だよ。多少は除外出来るらしいけどそれにも限度はある。」


まぁ、母さんのその特性を一欠片も受け継がなかった俺としては世界中の音が聞こえるという事に全く想像がつかないが。


イザナは少しポカンと何かを考えていると小さく口を開いた。


「じゃあ、私達の結婚してから......ハルトと出会ってからの出来事は全部知ってるんですか?」


「えぇ、そうねぇ。全部知ってるわ。だって私の大事なハルトだもの。その様子は気になるでしょう?」


いや、そこ疑問形にしても......。


「だからハルトが欲求不満だって事も知ってるし、イザナちゃんがたまに発情期に苦しんでる事も知ってるわ。」


............ん?

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