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62.犠牲


「その情報、タダで、とはいかないんだろ?」


「そうですね。」


「条件は?」


「命令する権利を行使なさらないのですか?それを使われては私は無償で情報を渡さざるを得ないのですよ?」


「何言ってんだ、それを使えるのは魔王だけだろう。一介の魔族が魔王に命令なんて出来るか。」


まぁ、もし俺が魔王だったとしても使う事はないだろうが。


「そうですか、では今回は条件の提示はやめておきます。」


「ん?」


「本来であれば他国との抗争が激しくなった際の協力関係をお願いする所ですが、ハルト様のような方の場合には貸しを作っておくのも有効に見えるので。」


「貸し......ね。あぁ、分かった。」


それはつまり俺を信じるって事だ。


サタシヤに似て人の信用の取り方をよく分かってる。


「さて、それじゃあエルフの情報を教えてもらおうか。」


「はい、とはいえ、ハルト様は途中から勘づいている様でしたが。エルフを攫った種族、それは人間です。」


やっぱりそうか。


攫われたと聞いた時から薄々勘づいてはいた。


......が、これは最悪だな。


そして、


「リンジュ、少し落ち着け。」


牙を剥いて殺気立っているリンジュの頭にポンと手を置く。


「リンジュ様っ?!」


「鳥どうしたの?」


テイリとイザナの2人はリンジュに視線を向けるがリンジュはそれに応えない。


まったく聞こえてないみたいだな。


「さて、じゃあ話を進めるが、人間が攫ったって事は......。」


「はい、ハルト様のお察しの通りかと。人間がエルフを攫った目的、それは勇者召喚です。」


「......はぁ、せっかく落ち着いてるってのに。」


人間が勇者召喚をする、それはつまり戦力の底上げ、即ち戦争の準備という事だ。


もちろん戦争なんかが再び始まれば大量の命が消える事になるし、なによりアリス達に無駄な危険が降りかかる可能性がある。


そしてそれ以前の問題がもう一つ。


と、そこでイザナが不意に口を開いた。


「ねぇ、話が見えないんだけど。」


「ん?」


「どうして勇者召喚するのにエルフを攫うの?」


「あれ?イザナって前の勇者召喚の時の騒動知らないのか?」


「騒動?」


そうか、俺達の間では割と大きな事件でどの種族にも知れ渡っていると思ってたがそうじゃなかったみたいだな。


まぁ、獣人の方が誰も知らないって事はないだろうが、イザナが知らないとなると殆どの奴は知らないって事になる。


「勇者召喚ってのは別の世界から魔力値の高い奴をランダムでこっちの世界に転移させるんだ。だが、転移点(アンカー)を作れる所ならともかく世界すらまたいで異世界だ。魔法の技術はもとよりその代償、魔力はとてつもない量が必要になる。」


「それで魔力の多い他種族を攫って生贄にするって事?」


「あぁ。」


「勇者召喚、あまり深く考える事ってなかったけど、確かに考えればとてつもない魔法だよね。......ん?じゃあ前の勇者召喚、リサちゃんが召喚された時の生贄になった種族って...。」


イザナはそこまで言うと再び視線をリンジュへと戻した。


「あぁ、ドラグーンだよ。更にリンジュはその勇者召喚の生贄に攫われたドラグーン、その内の一体だ。」


「え?」


「俺も訳あってドラグーンの捜索に協力してたんだが、居場所を知ったのは勇者召喚が行われる直前でな、駆けつけた時には勇者召喚は既に終わってた。で、魔力が空っぽになって殆ど抵抗出来ないドラグーンを証拠隠滅に葬ろうとしてた人間を殺して何とか一体、リンジュだけ助ける事が出来たんだよ。」


あの時の悲惨な光景は今も脳裏に焼き付いてとても口で説明出来るものでは無い。


そして仲間が目の前で為す術もなく惨殺される様子を目の当たりにしたリンジュの心の傷は相当深いものだろう。


今でこそバカで騒がしい奴だが、いま隣で本気で怒っているリンジュを見ればその傷が到底癒えるものでない事は容易に分かる。


「だからこそ、あんなくだらないバカバカしい事、二度とさせてたまるか。」


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