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54.レンエル

「「いらっしまいませ〜、ご主人様ぁ!」」


「あ、はるっち!いらっしゃーい。」


「あ、あぁ。こんな時でも全く動じてねぇんだな、この店は。」


店内に入った時の店の雰囲気がいつもと何ら変わらない。


人間であるリサならともかく、働いてる少女達すらも不安を抱いてるようには一切感じなかった事に俺は少し驚いた。


「あはは。まぁ、この娘達には、はるっちが負ける事は万に一つもないって言い聞かせてるからねぇ。ただ、私達は良くても商売はあがったりなんだけど。」


「...みたいだな。」


リサの言葉通り、店の中はガラーンと全ての席が空いていた。


「まぁ、もうすぐしたら祭りが始まるしすぐに賑やかになるさ。」


「って事は勝ったんだねぇ。知ってたけどぉ。」


にしし、とリサは笑みを零した。


「はるっちに負けられると店の経営に響いてたから助かるよぉ。ありがとうね。」


「あ、そういえばまだ聞いてなかったが、結局お前は何でこの国にいるんだ?」


この前は流してしまったが勇者が魔界にいるのはどう考えても不自然だ。


無駄に危険が付きまとう事になるし、余程の理由がない限りは到底訪れない、ましてや店を開くなんて考えられない事だ。


「んーっとねー。50年くらい前までは无獣国でお店やってたんだけど、働いてくれてた娘が同時期に皆辞めちゃってね、どうせなら移転してみようかなって。」


「ん?ちょっと待て。そもそも何でここの前が无獣国なんだ?人間の国じゃダメなのか?客入りでも悪かったのか?」


「んーん、そんな事ないよぉ。勇者引退した時は聖人国でもお店やってたんだけど无獣国と変わらないくらいお客さん入ってたから。」


「なら何でわざわざ?」


「だって。ケモミミとか人化で隠しきれてないウロコとかしっぽとか。そういうのって凄く萌えるでしょ?」


「...............そうだな。」


理解出来てしまう自分が恥ずかしい。


「でねでね!私の一押しの娘がいるんだけどね!」


キラッキラと目を輝かせながらそこまで言うとリサはタタタッと店の奥へと走っていった。


そしてすぐに戻って来るとその隣にはメイド服を着た1人の女の子が連れられていた。


身長120cmくらいの見た目まだ子供なその女の子は鋭い目付きで無理矢理連れて来たリサを睨んでいた。


「この娘なんだけどね!何の種族か分かるぅ?」


そう言われて俺は改めて女の子に目をやる。


ずっとリサを睨んでいて目つきは悪いが、整った目鼻立ちはとっても可愛く、髪と瞳は綺麗な水色で、肌は透き通り、まるで向こう側が透けて見えそうだ.........いや、透き通って見えている。


「......まさかスライムかっ?!」


「そぉだよー!」


俺の驚いた反応が嬉しかったのか、リサはえへへ〜っと笑みを浮かべた。


だが俺じゃなくとも誰だって驚くだろう。


スライムといえば少し厄介な特性を持つ者もいるが、基本的に魔力が少なく、その扱いもかなり苦手で魔法が殆ど使えない種族だ。


故に人化出来るスライムなんて今まで1度だって見た事も聞いた事もない。


「にしし、これが私がこの国にいるもう一つの理由だよぉ。この娘はレンエル。私が育ててるの。」


自慢げにレンエルの肩に手を乗せてそう言うとレンエルはその手をパシンと手で払った。


「育ててる?エルを?リサが?ありえないっ!」


「またまたぁ、レンエルはツンデレちゃんなんだからぁ。」


「触るなっ!」


睨みをきかしているレンエルの頬をウリウリィと指でつつくリサの手をレンエルは心底嫌そうにバシンと振り払った。


「レンエルはスライムだからこうやって触られるのに慣れてないんだよぉ。だからすっごく敏感なんだよねぇ?」


「ヒャウンッ!......っ!!!!触るなぁ!」


「この恥ずかしがり屋さんめぇー!可愛いなぁ、もう!」


「だから触るな、抱きつくな!」


「随分と仲がいいんだな。」


「でしょぉ!」


「どこが!」


全然仲良くないと口では言うレンエルだが傍から見ればイチャついてるようにしか見えない。


「で、レンエルがいるからここに住んでるのは分かったが、そもそもどうやってスライムのこの子が人化出来るようになったんだ?」


「んーっとね、30年前くらいかな?ちょっと触手プレイっていうのに興味が湧いてね。」


「え、は?触手プレイ?」


余りに突拍子もない言葉に聞き返す。


「うん。女の子が触手で身動き取れなくされて粘液で服を溶かされてくのって興奮するでしょぉ?」


「............。」


リサの隣にはレンエルがいて、そしてその後ろにはここの店員が何人もいるのだ、間違っても賛同など出来るはずがない。


「でね、触手プレイされる女の子はうちの店員でいいとして、触手をずっと探してたの。でもウネウネェって動く植物とかはあっても触手って呼べるようなのってあんまり見つからなくてね。」


......ま、まぁ確かに俺の知ってる魔族の中でも触手に近い物を持ってる奴はいるがリサの言うような身動きを封じて服を溶かすなんて奴は聞いたことがない。


そしてだれも触れないが、さらっと触手プレイされるのはここの店員だという事を口にしたリサに店員の女の子達はあからさまに嫌そうな顔をしていた。


「でね!私思いついちゃったの!スライムって物を溶かしたりするし形を変えられたりするでしょ?実は1番可能性あるんじゃないのかなぁって!」


......確かにそう言われればそうだ。


............ん?


「ていう事はお前は触手プレイの為にレンエルを育てたと?」


「うんっ!」


「...............。」


くだらないとは言わないが.........。


「じゃあ人化はどうやって出来るようにしたんだ?」


「んー、そこは秘密かな。勇者パワーってやつだよ!」


「なんだよ、そこが1番重要な所だろ。」


「だって、はるっちとはまたいずれ敵対しちゃうかもだし能力を自分から話すのはねぇ。」


「......。ま、そう言われちゃ深くは聞けないが。」


再び敵対する事などお互い国を出ているのだからほぼ無いだろうし、あったとしても是非とも御免被りたい所だが有り得ない話ではない。


「そんな勿体ぶらなくても話せばいいでしょ。リサの能力は「レンエル、ストォープッ!!」ングゥー!...ンーッ!」


さらっと話そうとしているレンエルの口をリサは慌てて両手で塞いだ。


「とにかくダメだから!はるっちがあのメイドちゃんを私にくれるって言うまでは絶対ダメだから!」


「絶対あげねぇよ!」

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