5.天使とメイド
「さて、と。じゃあ、服でも買いに行くか。」
「そうだね。流石にその格好だと見窄らしいし、2人とも私の服は合わないから、買いに行かないと。」
せっかく綺麗な顔をしているのに服装がこれでは勿体無い。
残念ながらイザナの服はサヤナには主に胸のあたりがキツそうだし、アリスが着るとぶかぶかだろう。
「あの、私はこれでも構いませんが。」
やはり遠慮気味なサヤナ。
だが、今回はそんな遠慮を許すつもりはない。
「ダメだ!サヤナ、お前はメイドなんだ。メイドと言ったらメイド服!ミニスカにフリル付きの可愛いメイド服買いに行くぞ!アリスは何でも好きなのを選ぶといいぞ。」
「.......で、ですが...。」
「ありがとう、ございます、です。」
まだ遠慮気味なサヤナに対してアリスは素直にお礼を言ってくれる。
「うんうん、サヤナもアリスみたいに素直にしてればいいんだよ。さっきも言っただろ?俺は奴隷じゃなくてメイドとしてお前を買ったんだ。俺のメイドにそんな服装でいられると困る。」
「本音は?」
「メイド服姿のサヤナが見たい!」
「だと思った。じゃ、買いに行くよー。」
それから会場を少し離れた所に見つけた服屋へと四人で入った。
外見はそんなに大きな店には感じなかったが、中に入ってみると奥行きがあり相当な量の服が売られていた。
「随分と種類があるもんだな。」
メイド服だけでもざっと20種類はある。
「それじゃ、アリスちゃんは私と服を選ぼっか。」
「うん!.....です。」
イザナはそう言うとアリスを連れて子供服を置いている奥の方へ進んだ。
メイド服が良いと言ったのは俺だ。サヤナの服選びを俺に任せてくれたのだろう。
「サヤナ、お前はこの中で着てみたいのとかあるか?」
「...............。」
「サヤナ?」
「あ、す、すいません!どれもとても素敵で.......。」
「そっか。じゃあ、とりあえず俺が選んでやるよ。」
この店に入ってメイド服が目に入った瞬間に俺のサヤナに着てもらいたい物は既に決まっていた。
清純な白のメイド服が多い中、一際目立つ黒いメイド服。
フリルもところどころ付いているし何よりミニスカ!
黒という色のおかげで妖艶さも増して、サヤナに似合わない筈のない一品だ。
「ここ、試着はいいのか?」
その黒のメイド服を片手に後ろで待機していた店員に聞くとニコっと笑顔で試着室の扉を開いた。
「ほら、これを試着してみろ。もし、一人で着るのが大変だったら言ってくれよ。俺が手伝うから。」
「え、あ、あの、一人で.....出来ます。」
頬を紅くしたサヤナは俺からメイド服を受け取ると一人で試着室へと入っていった。
それからしばらく中でガタゴトガタゴトとメイド服を着るのに少し手間取っているようだったが、残念ながら俺への手伝い要請はなく、外でサヤナがメイド服を着れるのを待っていると、
ガチャリと試着室の扉が開かれて中からメイド服を身に纏ったサヤナが出てきた。
.........これは予想以上に.......。
「あの.........どう、でしょうか?」
俺がついつい見惚れていると、うさ耳をヒクヒクさせて恥ずかしそうにサヤナが体をもじる。
「あぁ、似合ってるよ。」
ニヤニヤを隠す為に少し怖い顔になってしまったかもしれないが、俺の言葉にサヤナは嬉しそうにしていた。
さてと!
「じゃあ、メイド服はこれで良いとして、パジャマとか下着とかは自分で選んできていいぞ。あ、これは主人としての命令だ。自分に似合うと思う服や下着を10着持ってこい。」
途中まで話しているところでまた遠慮すると踏み、先にその考えを潰した。
「.........分かりました。」
サヤナはメイド服のまま試着室を出ると下着やらパジャマなんかを置いているコーナーへと向かった。
ちょくちょく様子を伺うようにこちらをチラ見しているところが何とも可愛らしい。
と、下着を選んでいるサヤナをじっと眺めていると店の奥からイザナとアリスが戻ってきた。
「ハルト、アリスちゃんの服、こんな感じでどう?」
そう言ったイザナと後ろからアリスが試着した服で現れた。
クマのイラストが描かれた少し大きめのTシャツに膝上くらいのミニスカート、髪にはうさ耳の隣に二つ団子がクマの飾りのついたシュシュで結えられている。
なんで兎のアリスにクマ?と少し疑問には思ったが、そんなことはどうでもいい。
「か.........かわいい、天使じゃねぇの?」
「天使じゃなくて獣兎よ。」
「いや、知ってるけど。」
別にそこ勘違いしてるわけじゃねえよ。
まぁ、勘違いしそうなほど天使ではあるけども!!
これを見ているとロリコンの気持ちが分かるような気がした。