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47.戦い方


俺はウガルに注意を向けながら唱えた。


空圧破(ファルフィス)。」


別に大した魔法ではない。


ただ空気を掌に高密度に圧縮して破裂させるだけの魔法だ。


初級魔法の空気玉(エアーボール)が基礎となってるが故に魔法を使える奴なら誰でも使える。


だがしかし、俺が結界の次に多く使う多様性に優れた魔法なのだ。


俺はウガルの攻撃に対応出来るようウガルから視線を離す事なく今のところ無傷の左の掌に空気を圧縮する。


すると、ドゴンッ!と音がした途端ウガルの身体は再び残像を残して横へと揺らいだ。


さすがにこの距離を1歩で縮めるのはスピードが落ちるのだろう、蛇行するように数歩で距離を縮めると距離が50mを切った辺りで1層強く踏み込み次の瞬間、俺の目の前にはウガルの拳が迫っていた。


こんな巨体で良くもまぁあそこまで素早く動けるものだ。


瞬きの一つでもしようものなら何の反応も出来ずに頭が吹き飛ぶことだろう。


正面にふり抜かれたウガルの拳が当たる寸前、俺は左手を外へと向けて用意していた空気玉を破裂させると同時に全力で右へと回避する。


「さっきのお返しだ!」


服を少しかすり俺の真横を通るウガルの右腕に身体を一回転させて左肘を打ち込んだ。


.........が。


「ふん、効かんな!」


「か......硬ってぇぇ。」


骨をへし折ってやろうと意気込んでの一撃だった俺の攻撃はウガルの皮膚に生えた鱗を何枚か砕きはしたものの、ウガルの腕には殆どダメージが通らなかった。


さらに回避で空圧破(ファルフィス)を使ったせいで空中での回避手段を失っている俺の左脇をウガルの尻尾が殴打し、俺は再び離れた外壁近くまで吹き飛ばされた。


「ガハハハ!オロボアの懐刀と呼ばれていた割に随分と手応えがないぞ?わざわざ本気を出したのだ、少しは楽しませてくれんとつまらんぞぉ!ガハハハァ〜。」


随分と楽しげな高笑いを響かせるウガル。


それに対して俺はかなりの激痛に顔を歪めていた。


さっきの一撃。


一応魔力で強化していたとはいえ、肋骨が何本も折れて内蔵に刺さったり外に突き出したり。


ちょうどアリス達のいる観戦場の反対側だったから良かったものの、こんな姿は見せられたものじゃない。


にしてもウガルのこの怪力と硬さ。まさかここまでやる奴だったとは正直驚きだ。


「おい、ウガル。こんだけ力があってどうしてオロボアとの闘いの時に使わなかったんだ?」


「ふん、知れたことを抜かすな。あの女に使って何になる、ワシは己の力の限界も分からん阿呆ではない。」


「へぇ......じゃあもう一つ聞くぞ?なんで今回は使ったんだ?」


「ガハハ、それこそ知れたことぞ。勝つ自信があるからに決まっている!」


「そうか。......なら、その自信を粉々に砕いてやるよ。」



「うーむ、こっからではよく見えんのう。ウガルのあの馬鹿げた体。なかなか手強そうじゃがハルトは大丈夫なのか?」


イザナ達がいる観戦場、ほぼ対局に位置するハルト達の闘いを目を凝らして見ているツァキナが少し不安そうに零した。


ハルトが反撃した一撃もダメージは通ったように見えず、どう見てもさっきから劣勢だ。


「今ので肋骨が何本か折れて内蔵も結構傷ついてるけどハルトなら大丈夫だよ。」


「......それは大丈夫なのか?」


「ハルトは魔力は多いし操作も上手らしくて治癒スピードが結構早いの。戦争中に何度も手足をもいだのにすぐ治っちゃうから大変だったもん。」


「て、手足を………。」


ハルト達魔族には自己再生種と呼ばれている者がいくつかいる。


本来、食事をとれば、その中にある栄養素を体に吸収するが、魔族の中の自己再生種は違う。


食事によって得られるのは魔力を生み出す《核》の活性化。


そして活性化された核によって生み出された魔力を使い身体を新しく構築しているのだ。


それはつまり手足がなくなろうと魔力と時間さえあれば幾らでも再生が出来るということ。


先ほど左脇にウガルの尻尾による一撃をもろに受けていたハルトにイザナは視線を戻す。


「あ。もう傷が完治してる。ほんと魔族ってずるい。」


だが、その時イザナの言葉を聞いたツァキナ達は揃って思うのだった。


この短時間で完治するのは奴くらいだ、と。

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