40.楽園
イザナとデートを始めて4時間ほどが過ぎたころ、アリス達の様子も気になるという事でリサの店へと足を進めていた。
「たまにはこういうのもいいわね。」
「そうだな。これからも週1くらいでするか。」
「そうね。」
そう小さく言うとイザナは足を止めた。
「どうした?」
「もうリサちゃんの店ね。」
「あ、あぁ。そうだな。」
もう目に捉えられるところまで帰ってきているところだ。
何も言わずに立ち止まっているイザナ。
少し戻りづらいのかとも思ったが、イザナの表情を見れば今イザナが何を求めているのかは一目で分かった。
...............仕方ない。久しぶりに勇気をだすとするか。
「イザナ。」
「なに?」
「.........キスしていいか?」
「.........ん。」
イザナはそう言って唇をひと舐めするとスッと目を閉じた。
...........................。
ドキドキを遥かに超える爆音で鼓動を打つ心臓を右手で抑えながら俺は唇をイザナの唇へと重ねる。
「さ、さて、帰るか。」
「ねぇ、ハルト。なんでエッチはあんなにやりがるのにキスは恥ずかしがるの?」
「............。」
何ていえばいいのだろう。
イザナにはキスならいつでもしていいとは言われているが、今まで数える程度しかしていない。
なぜと問われてもその理由をはっきりとは答えられないが気恥しいというのが1番だろうか。
「まぁ、いいわ。さ、帰るわよ。」
そういったイザナに今度は手を引かれ俺はアリス達が待つリサの店へと戻るのだった。
「あ、おかえりぃー!どーだったー?デート!」
「あ、あぁ、最高だった......が。」
なんだよこの状況は.........。
店に入るとサヤナだけでなく、アリスとフィオル、それにリンジュまでもがリサ、そして俺好みのメイド衣装を身につけていた。
アリスとサヤナに帽子を脱がせるためなのだろうか、店内には客は1人としておらず、まさにそこに広がるのはウサ耳&メイド天国だった。
「イザニャンに働かせるのはダメって言われちゃったから、今日は店を閉めてコスプレパーティにしちゃった!」
えへへ、と満面の笑みを浮かべるリサ。
サヤナが似合うのは当然だが、アリス、フィオル、リンジュの3人は容姿が幼く少しでも違和感があるのかと思いきや、そんな事はまるでなく、もう可愛すぎてふさわしい言葉が出てこない。
「皆、よく似合ってて凄い可愛いぞ。.........この機会にイザナも......。」
「やだ。皆着てくれてるんだから充分でしょ。」
イザナはそう言いながらアリスの頭をモフモフと撫でている。
まぁ、確かに皆が着ているのを見るのは凄く興奮するが、それとイザナが着てくれるのでは全く訳が違うのだが。
にしても、
「よくリンジュがそれを着たな。」
あいつもあいつでイザナと同じくこういう服装は極端に嫌っていたはずだが。
「ふふふ、これ着たらはるっちの心なんて鷲掴みだよ!って言ったら1発だったよ。」
「.........そっか。」
鷲掴みにはされなかったが、凄く可愛かったからなんとなく頭を撫でておいた。
まぁ、何はともあれ、リサがこんな子供用のメイド服を3着も作っていた事が何よりの驚きだな。
.........いったいメイド服を何着作ってんだよ、この変態は。
ハルトの血液に媚薬効果があるように、唾液にも勿論媚薬効果がある。
ハルトは気恥ずかしさの他にその事も心の隅にあるのだが、イザナはそれを分かった上で、それでもキスだけはしても良いとハルトに告げていたりする。