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4.娘買います


「あ、えーっと名前なんだっけ?」


「サヤナです。」


「そっか。サヤナちゃんも立ってないで座りなよ。席だって空いてるし。」


「え、ですが.........。」


サヤナは困惑した様子で座ろうとしない。


一般常識として、奴隷は物。つまりは人間以下の存在だ。


それはつまり、人間と奴隷とでは優先順位が違うのだ。


仮に奴隷が椅子に座っていたとしても、人間が座りたいと言えば譲らなければいけないし、邪魔だと殴られたとしても文句の一つも言えない。


なんとも嫌な世の中だ。



ま、魔族である俺にとってはどうでもいい事だが。


人間が決めたルールなんて正しいとは思わないし、守ろうとなんて全くもって思わない。


それは獣人であるイザナも同じ考えのようだ。


「もし誰か文句言ってきたら殺すから心配しないで。」


「いや、その言葉の方が心配だよ!まぁ、サヤナも気にせず座れよ。奴隷になる時にいろいろ奴隷としてのマナーを教わっただろうけど、俺はメイドとして買ったんだから。」


「は、はい。.........ではお言葉に甘えて。」


サヤナは恐る恐る俺とイザナの隣の席へ座った。


奴隷教育はその人の人権を真っ向から否定して行われる。


奴隷自身が、自分は人ではなく物だと思わせるところから始まると聞いた事がある。


サヤナは俺と会ってからずっと何かに怯えて緊張してるようだし、俺がこいつの支えになってやれるといいんだけどな。


なんて、淫魔の俺が何を考えてるんだか。


『では、これよりオークションを再開いたしまぁぁぁす!まずはこちらから!』


そしてオークション後半が始まり、次々と多種多様な奴隷が落札されていった。


が、イザナ曰く奴隷は基本的に15歳から値段が高く売られるようで、今回のオークションでもその殆どが15〜20歳の奴隷だった。


「なかなか良いの来ないな。」


「だね。出来るだけ小さな子がいいのに性奴隷や冒険者奴隷ばっかりであんまりいないね。」


冒険者奴隷というのはもともと冒険者をやっていた奴隷の事だ。


この場合、ルックスなんかよりも戦闘技術やギルドランクを見て殆どの場合で冒険者の人が落札している。


手頃なパーティの穴埋めなんかにはうってつけなのだろう。


『さてさて、いよいよ次で最後の奴隷となります!ドォォォォン!!』


もう最後か。


殆ど諦めてはいるが、ステージ左から連れてこられる奴隷に注目する。


...........お?


獣兎(ルーラビット)族のこの商品!まだ成熟しておらず性奴隷としても冒険者奴隷としても活用には難あり。ですがっ!!見てください、この愛くるしい顔!これをどのように扱うかはお客様しだい!!さぁさぁ、10万ダベルからどうぞ!』


サヤナが綺麗というのに対してあの娘は可愛い。凄く可愛い。


見た目からして7歳といったところだろうか、年齢的にも可愛さ的にも俺の娘にピッタリだ。


これは買うしかない!と入札板片手にイザナに許可を貰おうとした時に、イザナとは反対の席に座っているサヤナがポソリと零した。


「...........アリス......。」


ん?アリス?


振り返ってサヤナの顔を見てみるとその目はまっすぐにステージに立っている奴隷へ向かっていた。


「サヤナ、あの子と知り合いなのか?」


同じ獣兎(ルーラビット)族。


知り合いだとしてもおかしい事はない。


「は、はい。.......妹です。」


「ふーん、妹.......って、妹?!」


「はい。私達は両親を小さな頃に盗賊に殺されて、家事をこなす代わりにひっそりと人間の家にお世話になっていたのですが売られてしまって...........。」


へにょりとうさ耳を折って悲しそうな顔をするサヤナ。


確かにあの奴隷はサヤナに何処と無く似ている感じがする。


「なぁ、両親が亡くなったとき、アリスは何歳だ?」


「1歳にもなっていなかったと思います。赤子のアリスを抱えて逃げたので。」


「イザナ。」


「うん、いいんじゃない?この機会逃すとまたオークションに来なきゃメイドを買った意味がなくなるし。」


「だな。」


イザナはこう言ってはいるが、恐らく俺と同じ考えだろう。


今のサヤナに必要なのは確実にアリス。そして、アリスにもサヤナが必要なはずだ。


それに加え、娘としてちょうどいい年齢で親という物をあまり覚えていない。


もはや買わない理由は存在しないだろう。


俺は持っていた入札板を挙げた。


「1億ダベル。」


『なんとぉ!またもや244番から1億の入札だぁぁ!他に入札はっ!?』


「1億3千万。」


『おぉっと、52番が1億3千万ダベル!!他に1億3千万以上の入札は!!!』


俺の入札に対抗したのか52番の男はニヤニヤと、してやったりな視線を向けてくる。


見た感じ良いとこの貴族の坊ちゃんといった感じだ。


「ったく、そんなちびっと上げられた程度で俺が諦めるかよ。」


俺は再度入札板を挙げた。


「3億ダベル。」


『え、えぇーっと他に3億ダベル以上の方は〜?いませんね?では244番、3億ダベルで落札です!』


俺の言い放った金額に、もう対抗しようという者は一人もいなかった。


サヤナをイザナの所へ残してまた俺一人でさっき買った奴隷、アリスを引き取りに行くとサヤナを引き取る時にいた仲介人にまた運悪く当たってしまった。


今回はアリスに見とれながらも仲介人さんの言う事をしっかりと聞いて怒られないように早く支払いを済ませたおかげで、何事もなく引き取る事ができ、アリスと二人ですぐにイザナの元へ戻る事ができた。


「お姉...........ちゃん?」


「アリス!」


状況がイマイチ理解出来ていないのだろう、ポカンとしているアリスをサヤナが抱きしめた。


そのサヤナの顔にはさっきまでの緊張感はない。


この光景を見られただけでアリスを買った価値はある。


「さてとりあえず出るか。」


「あの!ハルト様、イザナ様、ありがとうございます!」


「ん?」


「妹とは奴隷になる際にもう2度と一緒にはいられないと覚悟していたので...........。」


「お姉ちゃん.........。」


「別に、ただメイドにしたい、ただ娘にしたいって思って買っただけであってお礼を言われるような事はしてねぇよ。」


「それでも.....。ありがとうございます。」


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