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37.メイド喫茶、そのお店は、



「「いらっしゃいませぇ〜!」」


イザナとサヤナによる冷たい視線を振り切って店に入ると、表に立っていた女性と同じくメイド服を着た女の子2人が出迎えてくれた。


..................1人に見覚えがある。


いやいや、ありえない。


ここは魔界だぞ。そこにあいつが、それもこんな店で............いや、こんな店なのはありえるが......。


「......元勇者が魔界で何やってんだよ。」


「.........えっ?!うそ、はるっち?!ひっさしぶりぃー!どうしてこんな所にいるのぉ?」


「ちょっと魔王に頼まれ事をな。それより元勇者のお前こそなんでここにいるんだよ。」


「シィー!店の娘以外には隠してるんだからあんまり大きな声で言わないでよ!」


ここは魔界。人間、それも昔に魔王と一悶着あった元勇者のこいつがいたとなれば騒ぎなんてもんじゃない、それこそ戦場となるだろう。


「あー、悪い。じゃあ、リサ。お前なんでここにいるんだ?」


「うんっとねー、まぁ、色々とあったんだけどぉ、今はこの店のオーナーやってるからここにいるって感じかなー。」


「は?ここお前の店なのか?」


「うん。もう何年も赤字が続いてるんだけどねー、貯金切り崩して経営してるんだぁ。」


............赤字でもなお続けてるのはこいつ自身が楽しんでいるからなんだろうな...。


リサも俺と趣味はあまり変わらなかったのはよく覚えてる。


っと、あまりに想定外の人物にイザナ達の事をすっかり忘れてた。


「えっと、イザナは会った事は勿論あると思うけど敵として以外で会った事は無かったよな?」


「あるわよ?」


「えっ?!」


「確かハルトとまだ数回しか戦ってなかった頃の獣人と人間の同盟の話があがってた時かな。最終的に成立はしなかったけど、その時に何度か顔を合わせたから。」


「へ、へぇー、そうなんだ。」


確かに同盟が組まれるかもって色々と騒がしい時期があったな。


もしそんな事になれば戦況は魔族が劣勢になってしまうからと、あの時ばかりはオロボアも焦っていたのを思い出す。


「まぁ、アリス達はもちろん初対面だよな。こいつは俺と昔敵対してたリサだ。で、こっちは嫁のイザナに娘のアリス、メイドのサヤナと召使いのフィオルだ。リンジュの事は覚えてるよな?」


「うん、確かドラグーンだったよね?220年も経つのに全く変わってないねぇ〜!」


......ん、まぁ、それはそうなんだけどさ。


人間なのに召喚されてから既に300年余り生きてるどころか容姿に全く変化のないお前の方が俺には驚きなんだが......。


「......て、えっ?!イザニャンはるっちと結婚しちゃったの?!ていうか娘?!それにメイドちゃんと召使いちゃんめっちゃ可愛いしどうなってんの?!」


どうなってんのってなんだよ。


ていうか、イザニャンって可愛いな......。


「ねぇねぇ、3日でいいからさそのメイドちゃんこの店で働いて貰う訳にはいかないかなぁ?」


絶対に売り上げ伸びるんだけど。


とサヤナの胸を鷲掴みするリサ。


...羨ましい。


「ダメに決まってるだろ。サヤナは俺の専属メイドだ。」


「ハルトのじゃなくて私達のだけどね。」


「あ、あぁ、そうだな。」


細かい事をきちんと訂正してくるイザナ。


「むぅ〜、ならうちのメイド服を試着してみてよ!これ私がデザインしたやつで絶対似合うと思うの!ねぇ、一瞬!1時間でいいから!」


「1時間は一瞬とは言わねぇよ!」


だが、試着か......。


このメイド服をサヤナが...............、


「サヤナ、試着してみるか?」


「えっ?!こ、これをですか?」


「嫌か?」


「いえ、そういう訳では.........分かりました...。」


メイドといっても身分が奴隷だという事をサヤナはどこかで意識しているらしく、頼めばなんでもやってくれる。


もちろん性的なものは恥ずかしがって抵抗するしイザナがサヤナの味方についているから勿論却下だが、ちょっと露出が多く、そしてエロく、派手なメイド服ぐらいならこうして少し粘れば余裕だ。


そもそも普段から大して変わらない服装をしているから抵抗が薄れているのかもしれないが。


......そんなサヤナにくらべて...、


「イザナも試着してみるか?」


「いやよ。」


ひとけりされた。


「......だと思ったよ。」


イザナは昔からあまりこういう服装には関心なかったからな。


まぁ、照れがその大部分を占めているんだろうけど。


最近スカートを履くようになってくれたのは結婚して以来の服装で1番の進歩だ。


「じゃあメイドちゃん!こっち来て、こっち来て。特別にあたしが着せてあげるぅ!」


「い、いえ、自分で着られますから。」


「.........あはは、そんな遠慮しないでよぉ。ほら、こっちだよぉ〜!」


リサは一瞬の静けさののち、笑いで誤魔化しながらサヤナの手を引いて店の奥へと連れていった。


あいつの行動パターンがあまりにも俺と一緒でなんか恥ずかしい......。


「ハルトがもし女だったらあんな風になってたの?」


「............かもな。」


俺に聞かないでほしい。恥ずかしい...。


「さて、ここで立ってるのもあれだし席に座るか。」


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