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31.ハルトVSアイリス



ここは城の裏に建てられた闘技場。


そこで俺とアイリスはこれから始まる決闘に備えて軽く身体を動かしていた。


周りには観客席がありイザナ達の他にも昨日俺を追い回してくれた奴らもどこからか聞きつけたのだろう、観戦しに来ていた。


と、そこにツァキナが観客席へと入ってきた。


「あれ?ツァキナちゃんも観戦するの?」


イザナ達の隣に腰をかけたツァキナにイザナが声をかける。


「この決闘は妾にも多少の責任があるからの。仕方あるまい。それに、ハルトの実力を知るには戦いを見るのが1番じゃからの。」


「ふーん、それじゃあ見ててよ。私の夫の実力。」


嫁にここまで言われたんじゃ負ける訳にはいかねぇな。


まぁ、元から負ける気は一切ないが。


「周りへの被害を防ぐ為に結界張るがいいよな?」


大抵の攻撃ならイザナがアリス達を守ってくれるだろうが、無駄な危険を犯す必要もないからな。


「うむ、そうしてくれると私も助かる。」


「ん。魔孔結界(まこうけっかい)!」


腕を振るうと同時に観客席前に簡易の結界を張る。


「にしても、槍使うんだな。」


「私の唯一の師に教えてもらった戦闘術だからな。」


唯一の師って......。


ただ合法的にセクハラしたいが為だけに武器の扱いがからっきしなクセして槍の使い手を装った俺の事を師って......。


「俺なんかが師でごめんな。」


「そんなことは無い!私はハルト様に槍の使い方を教わったお陰でここまで強くなれた!私にとっては最高で最強の師だ!」


.........普通こんな事を言われれば嬉しいはずなのに、罪悪感しか湧かない。


「あの、そろそろ始めてもよろしいですか?」


俺の結界の外、イザナ達の所にいるフェルが声をあげる。


「あぁ、俺はいつでもいいぞ。」


「私も問題ない。」


「では、これより位闘代理人を決める模擬戦を行います。あくまでも模擬戦、致命傷になる可能性のある攻撃は控えてください。勝敗はどちらかが負けを認める、もしくは戦闘不能になった時点で決する事とします。よろしいですね?」


「あぁ。」


「うむ。」


「では...............始め!」


闇惹蒼球(ウァイズ・スチース)!」


俺は決闘が始まって早々、加減なんてものはせず魔法を放つ。


相手が1歩踏み出すよりも早くに構成し、放てる大きさ、直径1mほどの青黒い球がグォン!と風を巻き込みながらアイリスへと一直線に飛ぶ。


さっきフェルが言っていたこの決闘のルール。不老不死に近いアイリスにとって戦闘不能になった時点で敗北、というのは、俺にとって不利に思えるかもしれないが実はそうではない。


そもそもの俺の目的は勝つのは当然だが、アリス達に俺の良いところを見せるのが一番の目的なのだ。


《致命傷になる攻撃は控える》


これはつまり、不死身に近いアイリス相手なら俺はお構いなしに全力の攻撃が出来るという事になる。


つまり俺の見せ場をルール上で作ってくれているのだ。


だが、


「まさか一撃で終わりなんて事はないよな?」


これで終わるようなら、アイリスの実力はしれてるし、そんなアイリスが位闘に出ようとしている時点でこの国の実力もしれている。


まさかオロボアがいなくなっただけでそんなに落ちぶれはしないだろうという俺の切なる願いは想像を遥かに超えたアイリスの行動によってすぐに叶えられた。


「んぬぅぁあ!!」


力強さを纏った声と共にアイリスは手に持っていた槍を振り下ろした。


「はっ?!」


力技にしか見えないその攻撃に俺は目を疑った。確かに即座に放った為に完璧ではなかったが、流石にこの光景には驚きだ。


なんと俺の放った魔法がアイリスの槍によって真っ二つに切り裂かれていたのだ。


俺の魔法を一刀両断って…。


「その槍、まさか魔剣か?」


「あぁ。この国で一番の腕を持っている鍛冶師に打たせた一級品にフェルに魔法式を組み込んで貰ったものだ。」


やはりか。………って、魔法式を組み込んでもらったってフェルそんな事も出来たのかよ。


魔法式の組み込みなんて相当魔法を勉強してなけりゃ出来るもんじゃねぇぞ。


戦闘中だがついついフェルの顔を横目でみると、思いっきりドヤ顔をされた。


「なんか腹立つな。」



「ねぇ、フェルさんあれほんと?」


アイリスさんの言っていた事に半信半疑に本人に問うてみる。


「えぇ、あの槍に魔法式を組み込んだのは私ですよ。私はこれでも魔法の知識に関してはこの国一ですからね。あの程度の魔法式の組み込みくらいなら1日もあれば可能ですよ」


「フェルよ、ドヤ顔も大概にの。それにあの槍には3日かけておった事知っておるぞ?」


「ツァキナ様、それは余計な事というものですよ。」


「余計ではなかろう。」


「それでは私も余計でない事を。昨日のツァキナ様の恥ずかしい一件について。」


「やめーい!それこそ余計じゃ!」


顔を紅くしたツァキナちゃんはフェルさんの口を急いで手で塞ぐ。


まぁ、夜にハルトからあらかたの事を聞いたし、ちゃんと反省してたからもう何とも思ってないけど。


「2人は仲がいいんだね。王と配下の関係には見えないよ。」


「まぁの、フェルとは産まれてこの方ずっと一緒におるから、メイドとして傍にいても、もう友達や家族みたいなものじゃ。」


「嬉しい事を言ってくださいますね。そういう所もまた可愛いですよ、ツァキナ様。」


「か、可愛いと申すなと言っておろう!」


「なんで可愛いって言っちゃダメなの?」


「妾はあのオロボアの娘じゃ。それが可愛いなどと言われておっては嘗められるであろう!」


そうかな?


「それに何より、て、照れるではないか。」


「「かわいい。」」


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