29.再会
「到着しました。こちらでイザナ様達はお休みになられていますよ。」
フェルの後ろを歩くこと暫く。ようやく目的地へと着いた。
ここに来るまでに分かった事だが、変わっていない場所も多々あるが、やはり220年も経てばだいぶ城の構造が変わっていた。
案内されたこの部屋だって220年前はメイドの休憩部屋だったはずだ。
ここへの隠し通路もあるにはあったが、イザナ達がいる部屋と考えると到底辿り着けなかっただろう。
「ほんと、魔王の所に行ってて正解だったな。」
「着替えを目撃出来たからですか?」
「真顔でそういうのマジでやめてくれ。冗談なのか本気なのか区別出来ない。」
ツァキナを言葉責めにしてたのを見てるし、フェルには警戒しておかないとな…。
さて、と。
「皆いるかー?」
そう言って俺は扉を開いた。
「はるとぉ!!!!」
と、途端に大きな声を上げながら少女が俺に飛びつく。
「リンジュまだいたのか。」
「いつまででもいるよぉ!私ははるとの従者だもぉん! 」
頭を俺の顔にスリスリとくっつけてくるリンジュを引き剥がして部屋の中へと目を向ける。
「アリス達も無事みたいだな。フェルありがとな。」
「いえいえ、魔法壁くらいお安い御用ですよ。ハルト様にはそれと比べ物にならない頼み事をしているのでお気になさらず。」
「ねぇ、はるとぉ?」
「なんだ?」
「お礼はその女に言う前にまずあたしに言うんじゃないかな?」
自分にはお礼がないのかと少し頬を張るリンジュ。
「お前が定員5人だって嘘ついたお陰で俺は走ってくるハメになったんだが?」
「うにゅっ?!そ、それは......。」
「冗談だよ。皆を運んでくれてありがとな。助かったよ。」
リンジュがいなければ俺が通ってきたルートをアリス達を連れて走る事になってたからな。
本当に助かった。
お礼に頭を撫でると「うにゅぅ」と可愛らしい声を上げて目を細めるリンジュ。
「ねぇ、ハルト。1つ聞いてもいーい?」
「そりゃいーけど、なんだ?」
俺の肩をイザナがツンツンとつついた。
「ツァキナちゃんの裸見た感想は?」
「おぉ、そりゃなかなか良かっ...............何のことだ?」
「......やっぱり裸見ちゃったんだ.......。」
「うぐっ.........そもそも何でその事をイザナが知ってるんだよ。」
「私の隣にいるメイドが物凄く耳が良いって事忘れちゃった?」
途端にサヤナが目を背ける。
いつもイザナといるせいかイザナの味方になってるのは気のせいではないだろう.......。
そういえばこの部屋に入る前に俺の隣にいる女が着替えを目撃したとかいらないこと言ってたな。
「で、でも、あれは事故だ!故意に見た訳じゃないぞ。」
「始めは、ですよね。」
「ちょ、フェルは余計な事言わないでくれ。」
「あんなに顔を真っ赤にしているツァキナ様を見たのは何年も前にお漏らしをして以来ですよ。さすがはハルト様です。」
「だから余計な事を言うなって!」
何がさすがは、だよ!
「ハルト、後で事の全てを包み隠さずに私に話してね。じゃないと触るの禁止にするから。」
「.........はい。」
今晩がとてつもなく憂鬱になってきた。
「ハルト様は尻に敷かれているのですか?」
「.....................うるせ。」