24.魔界への行き方。
「はるとぉ!!!!」
アリスとフィオルを下ろして扉をノックすると、数秒と立たずに扉が開かれ、鬱陶しいほどに大きな声を上げながら少女が俺に飛びついた。
「よう、1週間ぶりだな。リンジュ。」
「うんっ!!まさかこんなに早くまたハルトに会えるなんて感激だよぉ!今度こそあの狐と別れ.........、」
テンションMAXのリンジュの声が一瞬でプツリと途切れた。
「ん?どうした?」
「............何しにきた、狐...。」
まとわりつくリンジュを見てみるとその瞳はまっすぐイザナの方へとはりついていた。
ガルルルと分かりやすく敵意を剥き出しにするリンジュ。
「ん?狐って私のこと?前にも言ったでしょ、私は猫よ、猫。鳥ってほんとバカね。」
「はぁ?!誰が鳥だぁっ!それになんか他にも女がいっぱいいるしぃ!ねぇ、はると!これどういう事っ?!」
「お前らほんと仲悪いな。もともと敵だったからって少しは仲良くしろよ。」
リンジュは俺の従者。つまり俺とイザナが出会った戦争ではリンジュは俺と共に獣人と戦っていたのだ。
「無理だよ!あたしからはるとを奪ったこの女狐だけは敵味方関係なく仲良くは出来ないのぉ。」
「私は別に仲良くしてもいいんだけど、この鳥にその気がないみたいだから無理かな。」
「誰が鳥だぁ!!」
.........はぁ、ほんとにこの2人は合わねぇなぁ...........。
俺は呆れつつも話が進まないのでイザナにリンジュを挑発しないように宥めてからリンジュに事情を説明する。
俺が話している間もちょくちょくイザナに敵意を向けていたリンジュだったが、オロボアの死を知るとおとなしくなり俺の話を最後まで聞いてくれた。
「で、あたしは何をすればいいの?」
「向こうに付けば後のことはこっちで何とかするから、お前の背中に乗せて魔界のツァキナの王城まで飛んでくれないか?」
帰りは別に急ぎではないしゆっくり帰ったので構わない。とにかく今は4日以内に向こうへつく事さえできればいいのだ。
「うん、もちろん!ハルトの頼みだもんね!でもぉ〜、私の背中は定員5人なんだよねぇ……わかるよね?」
ったくこいつは........要はイザナを背中には乗せたくない訳か。ま、そのくらい想定済みだけどな。
「そういう事なら俺が乗らないのが一番だな。」
「へっ?!」
やはりバカなリンジュはこう返される事が想定出来ていなかったのだろう、素っ頓狂な声を上げる。
だいたい定員が5人?笑わせるな。戦争中に軽く10人は乗せてた事ある奴が何言ってんだか。
「別に俺は走って十分間に合うからな。リンジュ、他の5人は任せたぞ。それとフェル、あんた魔法壁ぐらいは出来るよな?」
「当然使えますよ。」
「じゃあそれで風圧と気圧の変化を遮断してやってくれ。イザナは大丈夫だろうけど他の三人は多分もたないからさ。」
時速何百キロも出して飛ぶドラグーンの背中だ。常人なら到底耐えられたものじゃない。
「じゃ、任せたぞ。」
そう言うと俺は有無を言わせる間も無くその場を去った。
理由は簡単。いくらイザナを背中に乗せるのが嫌なリンジュでも俺が頼んでる以上、後で乗せて来なかったなんて事になればタダではすまない事をリンジュは分かっているからだ。
そして理由はもう一つ。
これから出向いて戦う相手は魔王、もしくは相当な力をもった俺と同じ代理人。
200年以上のブランクがある俺がいきなり相手にするには少しばかり厄介、道中に少しでも感覚を取り戻しておきたいのだ。
さて、と。リンジュ達は飛びたった頃だろうし俺もそろそろ本気で魔界を目指すかな。
「魔制解除。」