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19.くまさんが.........。



「...........何してんの?」


「おにぃさん.........。」


湯を沸かす為に風呂場へ行くとさっきリビングにいなかったフィオルが涙目で座り込んでいた。逆さに吊られたクマさんを見つめて。


「ぅう、ぐすん。」


「おいおい、こんなとこいたら風邪 ひくぞ。どうしたんだよ。」


もう日が暮れてだいぶ気温も下がってるってのに。


「.....ダメなんです...ぐすっ。」


「何が?」


「...クマさんを綺麗にしないと.........。」


...............いや、わけがわからん。


「一体どうしたんだよ。説明してくれないと何一つ状況がわからん。」


「ぅう、えっと......、」


フィオルは両手で涙を拭うがそれ以上に溢れる涙。


一体なにがあったというのか。


「.....あさ、起きたんです、」


うん。で?


「...隣にはクマさんがいてぎゅーってしたんです、」


.........可愛いな。


「...そしたら冷たくて、」


.....................。


「...布団も冷たくて...、」


.............あ、なるほど。


ここまで聞くとおおよそ全ての事情が把握できた。


.........ようするにお漏らしか。


「.......そこにおねぇさんが来て冷たくなったクマさんを見るなり怒ってしまって、ぐすっ。」


だから風呂場でクマさんを洗って干して今に至るわけか。


「飯はちゃんと食ったのか?」


「.....はい。だけどおねぇさんずっと機嫌悪くて...、だから......。」


「でも、ここにいたら寒いだろうに。乾くまではまだ時間がかかるんだからリビングに行っとけよ。」


「.......だめ、です。ちゃんとクマさんが綺麗になるまでは......、」


「んー、ちょっと待ってろよ。」


俺は泣いているフィオルの頭を撫でると風呂場を出てイザナのいるリビングに向かった。


「おい、イザナ。」


「なに?」


「なんでフィオルが風呂場にずっといるのに声かけないんだよ、風邪ひいたらどうすんだよ。」


「...........だ、だって、私昨日ちゃんと言ったのに.........なのに、ハルトから始めて貰った大切な宝物を.......。」


っ?!


大事にしてくれてるのは分かっていたが、改めてそう言われると照れるな。


でも、


「それは分かるが、フィオルだって反省して今クマさんが乾くのを待ってるんだからお前から声かけないとダメだろ。」


イザナは尻尾を力無く垂らしている。


イザナも、少し大人気なかったと反省しているのだろう。


「.....まぁ、とにかくフィオルとはちゃんと仲直りしろよ。これからも一緒に暮らしてくんだから。」


「...うん、分かったわ。ごめんなさい。...........でも、一つだけいい?」


ん?.............なんだろ、さっきまでの弱々しいイザナが一変して軽く殺気を放ってきているんだが......。


「フィオルちゃんとこれから一緒に暮らすってなに?フィオルちゃんは担保で預かってるだけなんだから明日にでも返しに行けばいいんじゃないの?」


っ?!!!


「え、いや、それは.......、」


だって.........なぁ?


あんな可愛い子に一生俺の召使いになるって言われちゃあなぁ?


「ママ、フィオルちゃんはパパの召使いになったんだよ?」


ちょっ、アリス、なに余計な事をっ!


「召使い?ねぇ、ハルト。一体どういう事?」


...........どういう事でしょうね!!



それから俺は風呂場でクマさんを綺麗に洗濯した後で、フィオルの事についてイザナに問い詰められ、ちゃんとイザナと一緒に暖かいお風呂に入ったおかげでフィオルは風邪をひかずにすんだのだった。



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