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13.俺はクマさんの代わりだそうです。

「...........おにいさん?」


「お、目が覚めたか。」


風呂を上がってから暫くし、脱衣所で看病をしているとイザナの殺気で意識を飛ばされたフィオルが目を覚ました。


「...はい。私どうして.....?」


フィオルは自分のパジャマ姿に首を傾げる。


あの後、裸のままでは風邪を引いてしまうとフィオルの持ってきた鞄からパジャマと下着を取り出して着せようとすると、イザナに私がやると横取りされて結局イザナがフィオルに服を着せたのだ。


とまぁ、それはともかく、


「のぼせて気を失ったんだよ。」


「...そう、ですか。...すいません、ご迷惑を.......。」


どうやらイザナの殺気にあてられた事は覚えていないようだ。


まぁ、あんな殺気、戦場を経験していない幼い少女にとってはトラウマになりかねない。


脳が勝手に記憶を思い出せないようにしているのだろう。


「気にすんなよ。ほら、リビング戻るぞ。」


リビングへと戻ると、イザナは自分の髪をタオルで拭き、サヤナはアリスの髪をクシでといていた。


「あ、起きたんだね。どう?大丈夫?」


「.......はい。ごめんなさい。」


「んーん。どうせハルトにも気にするなって言われてるでしょ?」


おいおい、記憶が曖昧って知らずによくもまぁそういう態度でいられるな。


誤解を生んだのはフィオルでもフィオルが意識失ったのは確実にイザナの早とちりだろうが。


「ん?ハルト何か言いたい事ある?」


「いえ別に。さ、さて、もう夜も更けてきたし子供は寝る時間だな。」


眠そうに目を擦っているアリスの頭を優しく撫でてみる。


風呂から上がってちょうど髪が完全に乾いた頃で柔らかくふわふわで、なかなか癖になる触り心地だ。


「部屋どうする?」


「んー、俺たちの部屋以外に四つくらい空いてたろ。そこを使ってもらえばいいよ。あ、サヤナはアリスと同じ部屋にするか?」


「はい、そうして頂けるとありがたいです。」


ずっと一緒に暮らしてきた姉妹だ。奴隷になって離れ離れで不安だっただろうし、部屋は同じ方がアリスも安心して眠れるだろう。


いずれは俺とイザナの間に寝て欲しいところではあるが。サヤナもついでに。


「...おにいさん、私はおにいさんと同じ部屋?」


「んーん、フィオルちゃんは1人部屋。ハルトと一緒に寝ていいのは私だけ、それがこの家のルールよ。」


そんなルールは初めて聞いたけれど、嫉妬してくれてるのだろうか.......。なんか嬉しい。


それから二階へと上がってそれぞれの部屋を決める。


といっても空き部屋は4つあるものの、使えるような部屋は実質2部屋。二択でしかないが。


「じゃあ、アリスちゃんとサヤナちゃんはこの部屋で、フィオルちゃんはこっちの部屋ね。」


この二つの部屋は誰か知り合いが来た時に泊まれる部屋としてベッドや机を一式揃えていた部屋だ。


まぁ、こんな辺境の地に訪れてくるほどの知り合いは存在せず、この家を建ててから一度も使う事はなかったが、たまに掃除はしているから埃まみれという事はないだろう。


そう思っているとフィオルが俺の服の裾を引っ張った。


「.......あの、1人は.......怖いです。」


.........可愛い。


じゃなかった、確かにそうだよな...。


「まだ8歳だもんな.......イザナどうする?」


「仕方ないわね。それならこのクマさんをフィオルちゃんに貸してあげるわ。とっても大事な物だからお漏らしして汚さないでね。」


イザナはそう言うと俺たちの寝室から取ってきた1mほどの大きな熊のぬいぐるみをフィオルに押し渡した。


「ふわぁ.......。」


するとさっきまでの不安そうなフィオルはどこえやら、嬉しそうに熊を抱きしめると部屋へと入っていった。


「お前があのぬいぐるみを貸すとはな。」


あれはイザナの抱き枕でもある。


あれがないと寝れないって自分で言っていたくせに。


「ハルトと一緒に寝るなんて言われたら堪らないもん。あれくらいは我慢するわ。」


「お、おう。」


なんか今日のイザナは随分とかわいいな...。


なんというかいつもよりデレが多い気がする。


「ほら、早く寝るわよ。」


「あ、あぁ。」


イザナが布団に入り、その隣に俺も潜り込む。


「んなっ?!」


「な、なによ?」


突然の事につい声を出してしまい、イザナはそんな俺に戸惑う。


いや、でも、今のはイザナが悪い。


だって......。


「なんでいきなり抱きついてくるんだよ!」


「え、なに?いや?」


嫌なはずねぇだろ!!


どこの世界にこんな可愛い嫁に抱きつかれて嫌がる男がいるってんだ。


「むしろ嬉しいけど、今まではそんな事しなかっただろ。」


「だって.......。」


「.....ん?」


「クマさんをフィオルちゃんに貸しちゃったから、ハルトを抱き枕にするしかないじゃない。」


「.................そか。じゃ、じゃあ、どうぞ?」


「.....うん。」


.........なにこれ?


なんだよこのピンクピンクした雰囲気っ!


やばいよ、本当に。


今日のイザナのデレは今までの数段上をいってる。


俺の自制心はいったいどこまで働いてくれるのだろうか。


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