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11.私のご主人様。


サヤナは脱衣場で服を脱ぎながら今日あった出来事を思い起こしていた。


性奴隷という絶望的な扱いを受けることを覚悟した矢先の出来事。


今まで一緒に過ごしてきた妹とも離れ離れになり、これから先の真っ暗で何も見えない未来を4億ダベルという途方もない額のお金で助けてくれた主人。


一体何者なのか、何をしている人なのか。


まだ何も知らないけれど、この人達には一生を掛けて恩を返さなければ。


そんな事を考えているとサヤナの服を脱ぐ手はいつの間にか止まっていた。


「お姉ちゃんどうしたの?」


ぼーっとしていたサヤナの顔をアリスが心配そうに覗き込んだ。


「あ、んーん、何でもない。ほら、早く服を脱ご。」


「うん!」


サヤナは今まで暮らしていた頃と同じように、アリスに両手を挙げさせると服を脱がせて、自分も少し手こずりながらメイド服を脱いで二人で風呂場へと向かった。


「あ、遅かったね。アリスちゃんは此処に座って。」


中に入るとフィオルが鏡の前に座ってその頭をイザナが洗ってた。


でも、それより、なによりも、サヤナはポカンと風呂場を見渡した。


「広いですね.......。」


外観からしてもかなり大部分を占める広さである。


「そうでしょ。お風呂はのんびり入りたいからハルトに風呂場は大きく作ってねってお願いしてたの。」


「ハルト様が作ったのですか?」


「うん。この家は私とハルトの自信作。」


.......こんな立派なお家を2人で...。


サヤナはその事を踏まえた上で再度風呂場を見渡すのだった。


「はい、綺麗になった。フィオルちゃん浸かってみて。」


「...はい。」


髪をお湯で流して綺麗になったフィオルはかなり広い浴槽の淵からちょんちょんと足の先でつつき、熱さに慣れながらゆっくりと身体を浴槽へと沈めた。


「........ふにぁあ、気持ちいいですぅ〜。」


本当に気持ち良さそうに顔をとろけさせるフィオルを微笑ましく眺めたイザナは次にアリスが座っている後ろへとまわった。


「アリスちゃんは私が洗うからサヤナちゃんそっちで洗っちゃっていいよ。」


「はい、ありがとうございます。」


慣れた手つきでアリスの髪を洗うイザナに言われてサヤナは隣の椅子へと腰を下ろした。


今まで食べ物には困らないながらも裕福とは言い難い生活をしていたイザナは、いつもはお湯につけた手拭いで体を拭いていた。


故にお風呂というものは初めてで隣にチラチラと視線を向けてイザナの行動を真似るように身体を洗い始めた。


そして粗方を洗い終わり、後はお湯で流すだけとなった時、サヤナは恐る恐るイザナへとずっと不思議に思っている事を問いかけた。


「あの、一つ聞いてもよろしいですか?」


「なに?」


「イザナ様は獣人族で、ハルト様は魔族ですよね?どうしてお二人は結婚なされたのですか?」


獣人と人間の結婚ならまだしも魔族との結婚なんてサヤナは聞いた事がなかった。


「っ!.......私が獣人なのはともかくハルトが魔族だってよく分かったね。ずっと人になりすましてるのに。」


「私たち獣兎(ルーラビット)族の耳はその人の心音までハッキリと聞こえるのですが、心音は種族によってそれぞれ特徴が違って、私はだいたい聞き分けられるんです。」


それは獣兎(ルーラビット)族の中でもサヤナしか聞き分ける事が出来無かったサヤナの優れた耳を証明する特技である。


「へぇ、そんなの初めて聞いたわ。あっ、それでどうして結婚したのか.......ね、」


サヤナの特技に関心しながらイザナは少し懐かしそうに目を閉じた。


「私はもともと无獣国(ないじゅうのくに)で国の為に戦ってた獣騎士なんだけど、ある戦争で魔王軍と戦った時に初めてハルトに出会ったの。その時に今まで戦ってきた敵の中でも圧倒的な強さを持ったハルトに少し興味が湧いたのがきっかけかな。」


魔王軍との戦争という言葉にサヤナは少し疑問が頭に浮かんだ。


何せここ200年はお互い守りに入って戦争なんて起きていないのだ。


「それから何度か戦場で顔を合わせて、気がついたらいつの間にか好きになってたの。まぁ、敵と恋に落ちるなんて国は許してくれなかっけど。」


「それでどうなされたのですか?」


「ん?捨てたよ?国を。」


「え?」


「私は国への忠誠心とか正義感とかそういうのは別に無かったの。ただやる事が無かったから獣騎士として戦ってただけ。それ以上に大切な物が出来たらそりゃそっちに乗り換えるわ。」


国を捨てる。


本来驚かないはずの無いその言葉にイザナはサヤナの反応に首を傾げた。


「どうしたの?」


「いえ、イザナ様とハルト様は本当に愛し合っているのだなと思いまして。」


「うん、だからハルトを傷つけるような事はしないでね。もしそんな事をすれば誰であっても絶対に許さないから。」


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