表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/90

1.俺の嫁

ここはどの種族もよりつかない辺境の地。そして俺と嫁の愛の巣。


嫁のイザナには愛の巣と表現するのは恥ずかしいからやめてと何度も言われてはいるが、そう表現するのが最もふさわしい。


「なぁ、イザナ。」


「なに?」


夕食後、食器を洗うイザナの背中に話しかけると、いつものように振り向くことなく返事が返ってくる。


「俺たち結婚してもう220年だろ?そろそろいいんじゃないかな?」


普通なら何が?と返す所ではあるだろうが、もう220年も一緒に暮らしているのだ、イザナなら俺の言いたい事を1発で理解してくれるだろう。


「何が?」


「............。」


全て理解した上でこの返し。


220年も一緒に暮らしているのだから勿論想定内だ。


「わ、分かってるだろ?」


「離婚?私はやだよ?」


「違うわっ!俺だってしたくねぇよ!」


「じゃあ何?」


「え、えーっと、その、夫婦っぽい事がしたいって言いたかったんだよ。」


「夫婦っぽい事.........たとえば?」


「え…たとえばって、そりゃ.........子作り.......とか?」


「私は獣人でハルトは魔族。子供なんて作れないよ。」


「あ、いや、うん。それは分かってるよ。」


魔族は子供を作る際に魔力の結合によって作る事が出来る。つまり、魔力をもつ種族である人間やエルフとは他種族間の子供が作れるのだ。


それに対して獣人というのは人間と同じく受精によって子供を作る。もちろん、人間とも交わる事は出来るし、過去にはエルフとのハーフが産まれた例もある。


が、獣人には魔力がなく、そして魔族には受精する器官がない。


つまり、この二つの種族は決して交わる事ができないのだ。


だが、そんな事は常識中の常識。


何百年と生きている俺が知らないはずがない。


だから、つまり俺が言いたいのはそういう事ではないのだ。


「じゃあ、なに?はっきり言ってよ。」


ほとんど俺の言いたい事を理解しているはずなのに.........敢えて言葉にさせようとするイザナ。


「いや、だから、その...........エッチがしたいなー、なんて。」


雰囲気もなしに、こんなセリフ恥ずかしくて仕方がない。


だが、言わなければ始まらない。


そう勇気をだして放った俺の希望はたったの一言で打ち砕かれた。


「やだ。」


「はぁっ?!」


わざわざ言葉にさせておいて断るかっ!?


.........だいたい分かってはいたが。


「ほら、その反応!私がエッチしたくない理由分かってないしぃ!」


「.......理由?」


俺とエッチしたくない理由?


風呂には一緒に入るのに触るのはオッケーで本番はダメな理由?


一つのベッドに寄り添って寝ているのにエッチをしてくれない理由.........?



.....................分からん.....。


「ハルト、私と一度だけエッチした日の事覚えてる?」


俺がその理由に頭を悩ませていると、呆れたようにため息をこぼしてイザナがヒントをくれる。


「222年と32日前だろ?」


「日にちなんて覚えてないけど、とにかくあの時私がどうなったか覚えてる?」


あの時.........まだ結婚する前のとある宿の一室でのエッチ.......。


「えーっと、めっちゃやらしい顔してたよ。」


あの時のイザナの表情を思い出すだけで顔がついニヤけてしまう。


「うっさい。別にやらしくないし。やらしいのはハルトでしょ。」


怒ってか恥じらってか顔を紅くして声をあらげるイザナ。


「...........まぁ、否定はしないよ......。」


「でね、ハルトは精力も体力も底知れないかも知れないけど、私は違うって分かってる?」


「いや.........まぁ、それは分かってる.......けど?」


俺は魔族の中でも数少ない淫魔。


精力だけでいえば全世界の男の中で俺に勝る者はいないと自負している。


「だからー、私は丸一日ぶっ通しでやったら体がもたないって言ってんの!あの後腰が砕けて立てなかったんだから!」


たしかにあの後、ベッドに寝たきりになっていたなと、懐かしく思い出すが、こっちにだってこっちの理由がある。


「だが、反論させてもらうが、」


「なによ?」


「俺はインキュバスだぞ?悪魔の中でも類稀なる希少種だ。」


「で?」


「そんなインキュバスがずっと捨てずにいた童貞を世界で一番愛してる女の為に捨てられるんだぞ?我慢なんて出来る訳ないだろ。」


世界で一番愛してる女。


このワードに少しはキュンときてくれるかと淡い期待も乗せての渾身の反論だったが、


「...........は?世界で一番愛してる女ならそれこそ少しは我慢して大事にするもんでしょ?だいたい盛りすぎなのよ。」


「え、えっと、だって、俺はインキュバスだぞ?なのに何百年も生きてきてまだ一度しかエッチしてないんだぞ?」


「知ってるけど。」


「...........もういいよ。いかがわしいお店の女の子に相手して貰うから!」


「よく嫁にそれを言えるね.......。でも、ダメだよ?」


おっ、さすがにそこは嫉妬...........、


「お店の娘に迷惑かかっちゃうし。」


...............はい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ