表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/61

パーティーへのお誘い

「パーティー?」

「お願いします。パーティーにはあと2人必要なんです」


 1階のギルドにて掲示板を見ていた奏翔は、4人の冒険者からパーティー誘にわれていた。


 パーティーとは、サッカーでいうチームみたいなものである。この世界では、パーティーには最低6人必要なようだ。


「ダンジョンでステータス上げをしたいんです」

「もっと強くならないといけないの」


 必死に懇願してくる冒険者たち。役職は戦士2人と道化師2人。戦士が男2人で道化師が女2人だ。


「なんで俺達なんだ?俺たちよりも強い冒険者達は他にもいるだろう」

「かっこいいからです」


 ここで奏翔は疑問に思う。何がかっこいいのだろうと。


「あなたがかっこいいので、来てほしいんです」

「この子が可愛いから来てほしいんだ」


 理由が驚くほど不純だった。欲望に従っているという点では純粋なのだが。


「俺達ステータス低いから」

「はい。役立たずですよ」


 なんとか断ろうと、自身のステータスの低さをアピールするが、それでもなかなか折れてくれない。


「なら、依頼として出す。僕たちと来てくれ。報酬は10Gだ」

「「準備はできてる」」


 プライドはないのだろうか。そこを突っ込みたくなるが、財政難の奏翔達にとって10Gとは大金なのだ。


「よし。それじゃ城近くにある穴からダンジョンに行こう」


 ダンジョン。ただの洞窟に魔力の素、魔素があつまって魔獣が生まれ、魔獣が住みかを掘り進め開拓された迷路。いわば大きな魔獣の家だ。


 遠い場所に位置するダンジョンへ行くべく、馬車で移動する奏翔達。初めての馬車に胸を踊らせる希美だった。


「君達武器は無くていいの?」

「希美がいれば十分だ」

「すごい自信だね」


 実際、希美の力はそこらの冒険者を一掃できるだけの力がある。武器なんてあっても意味はないのだ。


「着いたよ。ここがダンジョンだ」


 馬車に揺られおよそ30分。奏翔達の足元には半径20メートルに及ぶ大穴があった。


「これがダンジョンの入り口。螺旋状(らせんじょう)の階段になってるから普通に降りられるよ」

「誰がこんな階段作ったんだか」

「どうやって作ったんでしょう」


 階段は、壁に沿って作られており幅は二メートルとやや狭い。ちょっと押せば落ちそうなの階段である。


「深さは50メートルくらいか。上るのが大変だな」

「気をつけてすでに魔獣の巣窟にはいってるんだから」


 階段を下りると、壁に大きな穴が横に延びている。おそらくそれが入り口であることは、奏翔にもわかった。


「希美、石を持っておけ。5発分」

「大丈夫です。もう持ってます」


 前列に2人の戦士が立ち、後列に2人の道化師が立つ。奏翔達はその間だ。


「来た。前方に2体の魔獣」


 早速魔獣のお出ましだ。見た感じ豚が2足歩行しているようなやつだが。


「ゴブリンだ。後列、光系統の魔法で目眩まし」

「わかった。目閉じててねっ」


 後列から光の玉が飛んでいく。ゴブリンに着弾すると、いきなり強く発光しゴブリンの目をつぶした。


「はぁっ」

「せいっ」


 前列の2人の戦士が一匹ずつ殺した。


「慣れてるな」

「何度も来てるからね」


 にこりと笑う戦士。先程まで真剣に戦っていたとは思えないほどだ。


「先に進もうか」


 その後も難なく進み、ダンジョンに中層部に来たところで。


「そろそろ強い奴がくる頃だね」

「問題ない。ぶちのめしてやるぜぇ」

「援護は任せて」

「へまはしないでね」


 奥までくると、魔獣も強くなってくるというのが当たり前だ。その証拠に、2人の戦士は軽く息が乱れている。


「ォォォォォ」


 言ったそばからから強い奴がお出ましのようだ。このダンジョンは長い通路に分岐点を加えただけの一方通行のダンジョンなのだ。


「なんだアイツ」

「見たことない魔獣だ」

「この前本で見たよ」

「えぇとたしか、ミノタウロスって名前だった気がする」


 牛頭人身(ぎゅうとうじんしん)の化け物。体長は人間を遥かに上回る三メートル。右手にはトラックでも潰せそうなこん棒らしきものを握っている。


「オオオオオォォォォォ」

「やばい、離れろっ」


 咆哮をあげこん棒を降り下ろしたミノタウロス。戦士の1人が防いでくれたことで奏翔含む5人は助かったが、


「ああぁっ」

「オオオオオォォォォォ」


 防御にまわった戦士は、強すぎる力に太刀打ちできていない。初撃で左腕を痛めたらしく、満足に剣を振るうことすらできていない。


「ぐあぁっ」


 案の定、戦士はミノタウロスに敗北。どさりと奏翔の足元に転がる。まだ息はあるようだが戦闘の続行は不可能だろう。


「やばい。うちのエースが」

「どうしようどうしよう」

「君達なんかすごいことできないの?」

「俺らか?」


 すごいことと言われても希美の操る力しかないのでそれを使うことに。


「下がって」

「がんばります」


 上から目線で見下ろしてくるミノタウロスに、真っ直ぐ上目遣いで見上げる希美。


「オオオオオォォォォォ」

「動かないで」


 どうやらミノタウロスは希美をなめていたようだ。可愛らしい容姿の裏には、人を簡単に殺せるだけの能力を秘めていることを見抜けなかった。


「そこの石とそれとそれも。鉄になって。秒速3キロであいつを貫いてください」


 付近に転がる石3つを鉄に変え、秒速3キロで発射された。


 当然だが鉄はミノタウロスを貫き、壁や天井にぶつかり、がらがらと崩した。


「まだ死なないみたい。・・・・・燃えてください」

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」


 鉄でぶち抜かれても死なないミノタウロスに、燃えろと命令。ミノタウロス身体からは青い炎が吹き出し、その身を焦がしていく。


「討伐、完了です」


 へなっと座り込む希美。緊張がとけほわっとした笑みを浮かべる希美に、冒険者達は驚愕の視線を注ぐ。


「「「「ぜひ、正式にうちのパーティーに来てください」」」」


 4人全員が頭をさげ勧誘をしてくる。それはそうだろう。何度もここに来ていた戦士ですら歯が立たなかった敵を、ほぼ一瞬で倒してしまったのだから。


「えぇぇぇ」


 困惑100パーセントの希美の声が、ダンジョンの奥へと響いていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ