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予想外の貴族

 異世界でも朝と夜は交互に入れ替わる。時間も地球と同じ感じで流れていく。空気も地面も、地球とは大差ない。


「ふぁあ。・・・・・朝か」


 窓から入る日光に、意識を覚醒させる奏翔。しょぼしょぼした目を擦りながら、ベッドの上で寝ているであろう希美を見る。


「すぅ・・・・・すぅ・・・・・すぅ」


 希美はベッドの上で寝息をたてていた。服が脱げた状態で。誰もが脳の思考を奪われてしまうであろう状況で、奏翔は。


「服が脱げてる。俺が脱がしたのか?いや、それならなんで覚えてない?もしかして無意識?俺は無意識のうちに少女のパンツまで脱がす鬼畜ロリコン野郎だということか?いや、そんなことはない。そもそも俺には服を脱がす理由がないじゃないか。まさか希美が自分から脱いだとでも?あり得ないだろ。寝ている・・・etc」


 意味のわからない自己弁護は20分に渡り続いた。頭が良すぎるのが問題か、あらゆる角度から希美の服が脱げていたことを考えている。


「結論としては、希美が自分で脱いだ。そうだ。それ以外は考えられない」


 結局は希美のせいにして終わるという最低のパターンだった。妙に満足気に笑う奏翔を、希美が見たらどうなるのだろうか。


「奏翔、さん?」

「!!!!!のっ、希美っ」


 こうなってしまった。掛け布団で体を隠す希美。顔は真っ赤に紅潮し、今にも泣き出しそうになっている。


 ざくりと奏翔の胸になにかが刺さる。罪悪感の重さに耐えきれず、がくりと膝をおった。


「悪い希美。見苦しいとは思っている。でも脱がしたのは俺じゃない」


 必死に弁解している。確かに見苦しいが、希美はいまいち奏翔の言っていることを理解していないようだ。


「あ、あのぉ。これは、私の脱ぎ癖が原因なので、奏翔さんは、悪く、ないです」

「え?」


 話を聞いてみれば、希美は脱ぎ癖があるのだという。寝ている間に服を脱いでしまうあれだ。


「すいません。見苦しいところをお見せして」

「いや、希美が悪い訳じゃない」

「いえ。私のせいで奏翔さんに迷惑を」

「かかってない。迷惑なんて微塵も。悪いのは勝手に見た俺だ」

「違います。私です」

「いいや俺だ」


 訳のわからない言い合いが始まり30分。結局どちらも折れずに体力切れとなった。


「まぁいい。この話は保留としよう」

「そうですね。今度にしましょう」


 適当に身だしなみを整え、制服を来て1階のギルドへと降りていく。


「今日はどれにしますか?」

「そうだな。今日はまずこの服をどうにかしたいんだよな」

「どう見ても場違いですもんね」


 ということで、フレイに聞いて良い服を売っている店に行くことに。所持金は3G。少々少ないがどうにかなるだろう。


「無難に魔法使いっぽいローブでよくないか?」

「そうですね。凝ったものは邪魔になるだけですから」


 服を選ぶなりなんなり、2人は一瞬で決めてしまった。確かに異世界なのだから魔法使いっぽいローブでいいのだろう。だが、店員が妙にばかにされているのが気になるところだ


「ローブ2つで3Gです」

「ほら」

「丁度ですね。どうぞ」

「どうも」


 所持金の全てを失い、ローブを手にいれた。早速宿に戻り、着替える2人。


「どう、ですか?」

「あぁ、似合ってるぞ」

「奏翔さんも、お似合いです」


 慣れないであろうローブを着ながら、少しテンションがハイになっている様子。気分ホカホカのまま、掲示板を見る。


「なんか変なのがあるな」

「そうですね。えぇと」

「女の子とお見合いをするんだけど男女があと1人づつ足りない。数あわせのために来てください。報酬は5G」

「ふざけた依頼するやつがいるんだな」

「でも、報酬は高いですよ。時間は今日、そろそろですね。いってみましょう」

「まぁ、ただの数あわせだからな。行くか」


 奇妙な依頼を受けることにした奏翔と希美。気乗りはしないものの、いきるためにはお金が必要なわけだ。嫌々目的地に向かう。


 依頼主の指定した場所はとある貴族の邸宅だった。さすがは貴族と、喉をついて言葉が出てしまう。


 門には門番らしき人が。丁度いいのでその人にここの主を呼んでもらうことに。


「依頼を見てきたんだが、ここの主の」

「おや、あなた方が依頼を受けてくださったのですね。助かります。人数が足りなくてご主人様がお怒りだったもので」

「はぁ、そうなのか」


 気の小さい貴族だなと、心中で呟く。希美もおよそそれに近いことでも考えているのではないかと視線を向けると。


(貴族の人の家なんてはじめてです。失礼がないようにしないと)


 初めてみる貴族の家に興味津々の様子。目がキラキラ輝いている。


「君たちが僕の依頼を受けてくれたんだね。嬉しいよ」


 玄関を通り抜けると、依頼者とおぼしき人が出迎えてくれた。顔はそこそこだどこにでもいそうな普通の人。優しさでカバーしているのだろうか。


「それじゃこっち来て。早速始めよう」


 依頼者に引かれるままに、少しひろめの部屋へと通される。中には、3人の男と4人女がいた。おそらく依頼書に記されていたお見合いのメンバーだろう。


「いやぁ。遅れてごめん。人数確保に時間かかっちゃって」


 とりあえず誰も座っていない席に腰をおろす奏翔と希美。お見合いというよりは合コンに近い感じだ。


「それじゃ始めよっか」


 ほどなくして始まった合コンは、各々楽しそうにしていた。


「君は好きなものとかあるの?」

「特には、ないです」


 4人の男のうち3人が希美に言い寄っている。かくいう奏翔は、5人の女のうち、3人に言い寄られていた。


「あはは。2人に総取りされちゃった」


 楽しげに笑う依頼者。女と仲良くなることが目的の合コンで、女を総取りされていて気分を害していないだろうか。そんな考えが、奏翔と希美の脳裏によぎった。


「はぁ。じゃぁ今日はここで解散にしよう。みんなお疲れ様」


 結局、その事は言い出せずに合コンは終了してしまった。


「今日はありがとう。楽しめたかい?」

「そっちは楽しめたのか?」

「大丈夫。僕、男の人の方が好きだから」

「なっ」

「君、奏翔君だっけ?僕の好みだ」

「依頼は終了した。それじゃっ」


 全力で走り去っていった奏翔。驚くことに貴族様はBL好き変態だった。走り去っていった奏翔は、しばらく貴族を見れなくなったとか。

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