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二人の超能力者

 昔花市(むかしばなし)。人口10万人のそこそこ大きな市だ。


 昔花市には、世界でも5本の指にはいる名門校、天西高校(てんさいこうこう)がある。テストで450点は低すぎると蔑まれるレベルの天才学校だ。


 そんな学校に通う一人の少年、風早奏翔(かぜはやかなと)、17歳。全校生徒1000人のうち、上から9番目の実力者。


 勉学はもちろん、容姿も優れている。ドS感溢れる目に、身長180センチ。運動は50メートル走6秒4と速い。


 どこから見ても非の打ち所のない生徒なのだが、そんな奏翔にも一つだけ、他人に忌み嫌われるものがあった。


「きたぞ。あれが[電撃のテロリスト]だ」

「全く、なんであんなのがこの高校にいるのよ」


 電撃のテロリスト。11年前、とある幼稚園にて全幼稚園児が感電死しかけた事件が起きている。それの犯人が、当時6歳だった奏翔だったのだ。


(またか。そろそろ飽きてこないのか?毎日同じものを見てるだろう?)


 心中で愚痴を溢す奏翔。どうやら本人は、そう呼ばれても特に気にしていないようだ。


「おい、電撃のテロリストにつづいて[確定された支配者]だ」

「えぇっ。今日はついてないわね」


 この学校には奏翔の他にも忌み嫌われる存在がいる。それが確定された支配者、愛原希美(あいはらのぞみ)


 12歳。気弱な性格で、何を言われても黙っている。身長145センチ。運動は出来ない。勉学は大地を抑え、上から七番目。


 確定された支配者たる所以(ゆえん)。それは六年前に起きた前代未聞の事件。


 天西高校に飛び級という制度はない。それに反して、希美は平然と飛び級を可能とした。校長が希美の言うことに逆らえなかったということだ。


(みんな見てる。へんなとことかないかな?大丈夫だよね?)


 気が弱いため、周囲から自分がどう見られているのかが、常に気になってしょうがない。


 幸い、高校が名門校なだけに、セキュリティ対策が万全のため各場所に監視カメラがついている。そのためいじめは回避されている。


 放課後。今は夏のため、陽はまだ高い。ぞろそろと校門から出ていく生徒たちのなかに奏翔と希美の姿はない。


「はぁ。最後にでないとまた注目されるからな」

「そうですね。人目にはまだ慣れません」


 二人だけの教室。席が隣なので自然と仲が良くなった。もっとも、他の生徒は話しかけすらしないのだが。


 時刻は18時。生徒はすでに奏翔と希美しか残っていない。


「そろそろ帰るか」

「そうですね。帰りましょう」


 ささっと帰り支度を済ませ、校門をでる奏翔達。


 家の方向は同じどころか、家がお互い向かいにあるので最後まで一緒に帰ることになるのだ。無論、朝は人目もあるので一緒には登校しない。


「今日は少し遠回りをしませんか?」

「ん?なんで、あぁ、そういうことか」


 帰路の途中、数十メートル先に同級生を発見した。話しかけられるとマズイので、すぐ近くの路地を通ることにした。


「これじゃ俺達が悪いみたいだな」

「仕方がないですよ。それだけの力があるんですから」


 テンションが落ち気味の二人を背後から5人の生徒が呼び止める。見た感じ他校の生徒のようだが。


「おい、電撃のテロリスト。俺と勝負しようぜ」

「おいおい、女連れかよ。こいつリア充だぜ」

「ぶち殺してやりましょーよ。こんなリア充」

「爆発させるしかねぇな。こんなリア充」

「内臓ぶちまけろ。こんなリア充」


(どれだけリア充恨んでんだよ。そもそも俺リア充じゃないし)


 心中で突っ込みを入れる奏翔だが、決して口には出さない。

 

「お断りします。希美、早く帰ろ」

「は、はい」


 5人の生徒を無視してスタスタと歩き始める。しかし、5人の生徒はそれが気に入らなかったのか、付近に転がっていた鉄パイプで殴りかかってくる。


「はぁ」


 ピタリと足を止めた大地は、背後を振り返り迫り来るパイプと対面する。


「ぐぁあっ」

「もう俺にかかわるな」


 鉄パイプが奏翔に当たる瞬間、バチっと電気が散った。パイプを通して電気が伝わったのか、ガクリと膝をおる生徒。


「お前らもやるのか?」

「ちっ。お前ら、ずらかるぞ」


 たった数秒で一人の生徒をダウンさせることができるのだ。5人でかかっても勝てないと悟ったのだろう。


「はぁ。気が重い」

「はい。重いです」


 重い足取りで家へとたどり着いた二人は、軽い挨拶を交わし別れた。


「母さんは、まだ帰ってないか」


 玄関を開けようとしたところ、鍵がかかっていた。いつもは母親が先に帰って、鍵は空いているのだが。


「ただいま」


 自分で鍵を開け、中に入る。


「この力、どうしようか」


 バリッと掌から電気が散る。青白い電気は、電気のついていない廊下を照らすには十分な光だった。


 冷凍食品を電子レンジで温めて食べる。その後は、特に何をするわけでもなく勉強をして、風呂に入った。


 毎日注目されて、蔑まれ、ストレスの溜まる環境で生活しているのだ。布団に入ると、考え事をする間もなく、まぶたは閉じていった。

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