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あの水平線を越えて  作者: 水野 宇海
4/9

約束

「こっちに来なよ、詳しく話をするよ。」

石川がリビングから呼んだ。正直、聞くのが怖かった。俺は下を向いてリビングへ向かった。


「すげぇな。」

俺はリビングに入るなり、口をポカーンと開けてしまった。石川のリビングはとても綺麗だった。真っ赤なふかふかのソファに、ガラス張りのテーブル。窓際にはお洒落な観葉植物が置いてある。

いかにも金持ちって感じだ。

「ここ、本当にお前ん家?」

俺が笑いながら聞くと、石川はソファから立ち上がってヤレヤレという顔をした。

「疑ってるの?ここは正真証銘僕の家だよ。ここのアパートはつい去年にできたばかりなんだ。」

「去年...ってことは10年前?」

「まぁ、そうだね。今、コーヒーを入れてくるからそこでくつろいでてよ。」

そう言って石川はそのままキッチンへ向かって行った。なんだか落ち着かない。石川は9年前、ここに住んでいたのだろうか?石川は何者なんだ?いろいろ考えていると石川がコーヒーを持ってきてくれた。

「熱いから気をつけて。」

「ありがとう。」

石川は俺の前にコーヒーを置くと、隣に座った。

「詳しく話すよ、君には。ちゃんと伝えとかないといけないからね。」

石川は手にコーヒーを持ってニコリと笑った。

なんだか怖い。石川はコーヒーを一口飲んでテーブルの上に置いた。そして、詳しく話しはじめた。

「まず、ここは9年前の海星町。それは分かるよね?」

「あぁ、なんとなく。」

正直、全く分からない。

「僕はね、人の過去を知ることができる。これは本当だ。僕は人間じゃない。信じられないかもしれないが、僕が君を9年前の世界にタイムスリップさせたんだ。佐島くんはいつも浮かない顔をしてるよね?僕が合コンに誘った時もすごい嫌そうな顔をしてた。会社仲間との飲み会にも参加しなかったよね、君。おかしいと思ったんだ、希望を失い、ただ前を真っ直ぐ見つめる君の目はとても冷たかった。光が何もない、真っ暗な世界。君はこの世界から抜け出したかったんだろう。もう一度運命の人に会いたい、会って話がしたい、そして……想いを伝えたい。僕は分かっていたよ。君を救いたい。君に光を見せてあげたいんだ。」


石川の言っていること、全てが心の奥に深く深く刻まれていった。怖いけど、なんだか信じられるような気がした。

「僕が、君の役に立つことをしよう。」

「役に立つこと……?」

「君が運命の人に想いを伝えられるように協力するんだ。」

……運命の人。そうだ、俺は美波に伝えたい。

「いいかい?」

石川は笑顔で俺の顔を覗き込んだ。俺はずっと下を向いていたみたいだ。

「……あぁ。」

石川なら信じられる。そう思った。

「……ただ、約束してほしい事がいくつかある。」

石川は急に真剣な表情になった。

「この世界には9年前の佐島海輝がいるということ、過去の運命は変えられない、だから美波ちゃんは必ず自殺するということ。もし君が彼女の運命を変えたなら、君もこの世界で死ぬことになる。そしたら一生本当の世界に戻ることはできないよ。いい?約束できる?」


自殺……。運命……。死ぬ……。嫌な単語ばかりが俺の頭の中を支配する。急に気持ち悪くなって、手を口に当ててしまった。

怖い、怖いけど俺は伝えなきゃならない。

俺は顔を上げて石川の方を向いた。

「……約束するよ。」

声が震えていた。でも心は不安だけでなく、小さな期待も芽生えていった。

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