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あの水平線を越えて  作者: 水野 宇海
1/9

伝えにいきます、水平線を越えてまでも。、

「私ね、あの水平線を越えて違う国に行きたいの。」

君は夕日に染まった海を指さして言った。

「うん。面白そう。」


波の音しか聞こえない砂浜で…僕は、君に伝えることができなかった。




'スキ'だと……



--------------------

「佐島くん、この書類今日中までにお願いね。」

「分かりました。」


社長から渡された書類を自分の机まで運んで、俺はパソコンを開いた。


普通に高校を卒業して大学に行き、普通に職に就くことができた。

こんなありきたりな人生つまんないだろ?

俺だってそう思う。特に就きたい職業なんてなかったけど、普通のサラリーマンか...。


「さーしまっ!今日、合コン行かね?」

同僚の石川賢斗が俺の肩を叩いてきた。

「俺は...いいや。遠慮しとくー。」

行く気なんてない。

「なんだよ、ノリ悪ぃなー。可愛い女の子、来るらしいよ?」

「いや、俺そういうの無理だから!」

賢斗の手をはらって、仕事を続けた。

「お前、彼女いたっけ?」

賢斗は手に持っていたコーヒーをすすりながら俺の方をチラッと見る。

「いないよ。」

呆れた口調で言うと、賢斗はふーんとした顔で自分の机に戻っていった。


俺はもう自分から行動したくないんだ。

行動しなければ、出会いなんてものもない。

俺はそれでいい。

人は運命の人がどうとか言うが、俺にはもうそんな素敵な出会いもない。


だって俺は。もうとっくに出会ってしまったから。





……運命の人に。



そして、その人はもういない。


--------------------

結局残業になってしまった。もう夜の9時。


職に就いてもう半年。一人暮らしはまだ慣れない。


コンビニ弁当が入った袋を手に提げてとぼとぼ歩いていると、どこからか太鼓の音が聞こえてきた。

「夏祭りか...。」

もう8月。世間は夏休みとかで自由に過ごしているのだろう。なのに俺は毎日毎日、働きっぱなし。

休みなんてものもない。どうせあったって、1人でゴロゴロするだけだし。一緒に過ごす人なんていねぇし。


「遠回りして帰るか...。」


できるだけ人に会いたくない。

なんで俺、こんなんになっちゃったかな。

ため息ばかりの生活にも飽きた。でも自分で変えようとも思わない。

そんな自信もないし、まずそんなことをするなら仕事に手をつけないと。


「ただいま。」



……。



「寝るか……。」

コンビニ弁当は冷蔵庫の中に入れた。


四畳半の部屋に行き携帯を充電した。スーツは上着だけ脱いでそのまま床に捨てた。


暑い。


夏だから。 ……布団を被らずに目を閉じた。


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「海輝ぃーーー!!」

「なんだよーー!!」


「今から、海見に行こう!」

「今から?」


「うん!今なら綺麗な夕日が見れるよ!!」



手を引かれ、走って、たどり着いたあの海は本当に綺麗だった。


「海って……オレンジ色だったけ…。」

「何言ってるの?海はブルーだよッ」


「あぁ。そうだよな、ブルーだよな。」


俺の目には夕日に染まった海しか見えない。

なんて綺麗なんだろう。こんな綺麗なもの、今まで見たことがあっただろうか?


「……。」


「海くん?」

「えっ?あっ、ごめん。見とれてた。」

「ぇー?私にぃー??」

「ちげぇーよ。」

「そこ、否定しなくても良くない?!」


そうだ。俺の隣には美波がいる。

今なら言える気がする。




スキ……だと。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

プルルルル。



プルルルル。


「……ん??……ぁ。寝てた。」


夢だったか。そりゃそうだ。美波に会うなんて無理なことだし。

携帯が鳴っていたから出ようとしたら丁度着信が切れてしまった。また後からかけ直すか。


久しぶりにいい夢を見た。俺はかれこれ1時間程寝ていただろう。もう夜の10時過ぎ……





のはずだった。










「おい……。なんだよ、これ...。」









寝ぼけてたが確かに分かった。外は明るい。

もう朝なのか?俺はそんなに寝てたのか?


どこからか階段をのぼる足音が聞こえてきた。

アパートの外階段を誰かがのぼっているのだろう。




いや、おかしい。この部屋の中で聞こえているように感じる。






「かいき!!!起きなさいよ!朝ご飯できてるんだから早く降りてきなさいよね!じゃないと遅刻するわよ?早く制服に着替えて!」






か、母さん……?







「……はいはい、今いきますよー。あー眠い。」






……お、俺と似たような声??




俺の目の前には……










俺がいた。


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