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02.増える人格
親の期待に応えるために解離した―――。
それが出された答えだった。
「じゃあ、あなたは明日香というのね?」
「そう。三絵なら中にいるけど出せないよ」
親は三絵だけが娘だと、三絵を出せと一点張り。
しかし明日香にも数年間回してきたプライドがある。そう簡単に変われるはずもない。
それに三絵は全文敬語だ。世間から見たらおかしい部類に入るだろう。
だからこそ、出すわけにはいかなかった。
「出す気がないのなら警察に送ろう」
「どうぞご自由に。警察は取り合わないよ」
明日香は笑いながら風邪薬を一気飲みした。
いや、明日香は薬が嫌いな人格であり薬を口にはしない。また増えたようだ。
「俺は七哉、女だ、よろしく」
煙草をバリバリと食べながら挨拶をしてくる七哉と名乗った人格。
煙草は食べ物ではないと分かっている親は全く焦る様子もなく、後で苦しめこのバカ娘と呑気に思っていたらしい。