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俺と彼女

今回はディルク視点です。

 俺がロザリンドに初めて出会った時、俺は疲弊しきっていた。獣人のハーフだから、人にも獣人にも交われず、嫌われて蔑まれる事が当たり前だった。

 そんな俺を応援してくれて、屈託のない笑みをくれた彼女に俺が落ちたのは当然だろう。俺は彼女を奇跡みたいに思ってた。


 俺は彼女に与えられてばかりだった。彼女は悪役になってまで俺の騎士団での扱いを無理矢理改善させ、その後も俺をフォローした。彼女のおかげで友人もできた。

 獣人のイメージをよくしたいと俺を連れまわし、本当に改善させてしまった。彼女に出会ってから間違いなく貴族の風当たりは弱くなって、好意的な人間もいるぐらいだ。



 そして何より惜しみなく俺に愛を囁いて、幸せにしてくれる。彼女がいるだけで世界は輝いて、俺は幸せになれる。


 だから、彼女を支えたかった。彼女を守れる自分になりたかった。努力は惜しまなかった。勉強も訓練も今まで以上に取り組んだ。騎士だったから、彼女の助けになれるように、人脈も確保した。

 やっと、彼女が頼ってくれるまでになった。まだ彼女の横に立ててはいない。足りないけど、少しは進めたんだと思った。



 それなのに、俺は失敗した。最低だ。彼女の意思を無視した。踏みにじった。

 自分の獣人としての本能に、負けた。彼女を、自分のつがいを奪おうとしたジェンドが、子供達が許せなかった。目の前が真っ赤に染まったあの感覚。身の内を焦がすのではないかというほどの激しい怒り。ロザリンドが止めなかったら、ジェンドは死んでいたかもしれない。




「おーい、生きてるか?」


「…死にたい」


「ばーか、生きろよ。嫁に叱られたぐらいで死ぬな」


 カーティスに頭をペシペシされる。ロザリンドは追いかけてくれなかったんだ、という事実に更に落ち込む。嫌われたの、かな。


「多分ロザリンドはたいして怒ってねーぞ」


「え?」


「ロザリンドは俺にお前を頼んだ。ガチギレしてたらそんなことしねーだろ。むしろ更に奈落にたたき落とすだろ?」


「…確かに」


 ロザリンドが本気で怒っていたらそれぐらいはするだろう。本人は否定するかもしれないけど。ああ、でも彼女は自分の事ではそんなに怒らないな。彼女が本気で怒るのは、自分の大事なものを傷つけられた時だ。


「さっさと謝って仲直りしろよ。多分今頃お前を心配してウロウロしてんじゃね?」


「うん。ありがとう、カーティス」


「おう、今度晩メシオゴリでチャラなー」


「了解」


 カーティスに背中を押されて、俺はロザリンドに謝りに行くことにした。







 マーサさんに案内されて、ロザリンドの部屋の前に来た。深呼吸して覚悟を決める。まず、きちんと謝ろう。

 ノックして扉を開けたら、頭が見えた。





え?頭?







「嫌いなんて嘘ですごめんなさい世界一愛してます!!」


 ノンブレスで言い切ったロザリンドがそれはもう綺麗かつ完璧な土下座を披露していた。


「え?ええええええ!?」


 出鼻をくじかれるとは正にこのこと。俺はアホみたいに叫ぶしかなかった。

 ロザリンドは本当に予想外の塊みたいな女の子です。

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