教団の成り立ち
とりあえず大変悪質なカルト集団であるとわかったのでモチロン潰す1択なのだが。こういうのはできるだけ一網打尽にしたい。取りこぼしてしまったらまたどこかで増殖する。そう、忌まわしき虫的なものなのだ。
祈りとやらを終えて、私達は解放された。お土産にお香を渡された。
「毒ダ」
うん。わかってた。わかってたぞう。
そして、私はにっこり笑って教団の実態を報告した。床に責任者である美女のダークエルフが這いつくばっている。ちょっと特殊な性癖をお持ちの方はうれしい絵面かもしれないが、私は微塵も嬉しくない。私の性癖は普通なので。
「それで?教団について知ってることを洗いざらいお話していただけますこと?」
ストレスがメガマックスなので、いつもなら顔をあげてというか土下座をやめてと言うのだが、どうでもいい。
「ロザリンド……」
ディルクが許してあげたら?とこちらを見る。
「……とりあえず、顔をあげて説明してくださいな」
「本当に申し訳ない……」
ローズウッド様によると、例の教団はできてそんなに経ってないらしい。あっという間に大きくなったそうな。迷惑極まりないな。
「しかし、初期は無害な団体だったのにどうしてこんなことに……」
「初期から有害だと思いますけど」
毒がなかったとしても、本人の許可なく気軽に祀るんじゃないわ!
「初期は本当にロザリンドちゃんのファンクラブから派生したボランティア団体だったんだ」
「ええ………?」
それがなんで麻薬や毒が横行するアングラ組織に??
「ロザリンドちゃんは女神であると」
「タイム」
頭を抱えた。とりあえずこれだけは言っておきたい。
「アイムヒューマン!普通の女子!ごくごく普通のどこにでもいる侯爵夫人だから!」
「……………ええ??」
「う〜ん……あ、あはは……」
驚愕するローズウッド様と苦笑するディルク。解せぬ。
「神聖ロッザリンド教団」
「タイム」
正式にはそんな名前だったの?!ロッザリンドは固有名詞なの?!かけ声じゃないわけ?!神聖って何?!アイムヒューマン!!!
「ロザリンド……溜め込むと辛いから吐き出したら?」
「ディルク……」
優しい夫がそっとハリセン(恐らくロージィ君)を渡してくれた。
息を吸う。
「なんっっっっで!やねーーーん!!
!!」
私が放った渾身の一撃は、小気味いいスパァァァンという音と共に壁を跡形もなく吹き飛ばした。
「…………………………修繕費、お支払いします……………」
渾身のストレスをこめた一撃のおかげでスッキリしたが、やり過ぎた。
「だ、大丈夫!この建物は樹だからね。魔力を与えれば修復可能さ!」
「じゃあお詫びに治しますね……。いきなりぶっ飛ばしてゴメンね」
集中して魔力を注ぐ。
「ロザリンド、加減……」
ディルクがなにか言ったがパーンとかなると大惨事だから魔力を与えている樹木の方に意識を集中させる。
「………………………ロザリンドちゃん、いや、ロザリンド様………」
「ハイ………すいません………」
まあね、そのね。うん。
魔力、あげすぎたよね!!
幸いなことに他の住居まで進出することはなかったが、ほぼ倍の大きさになってしまい庭が消えた。だかま、なんかこう、レインボーにシャイニングしている。あれか。スーパーメリオの無敵みたいな……?
「だから加減してって言ったのに……」
「やる前に言って。パーンってなったら怖いから全集中してたぁ……。やる前に言って。やってる最中に変更とかそんな器用なことできないの」
「………普段は異常なまでに器用な魔力コントロールを見せるのに?」
「自分のを自分で適当に調節して動かすのは簡単だけど、自分のを相手に極限まで合わせて送り込むのはとっても難易度高いの」
「なるほど……?」
ディルクはあまり魔力に頼らないし他者にあげたことがないからわからないようだ。
「うむ……これぞ神業……。彼が言っていたのはこういうことだったのかもしれないな。正直ロザリンドちゃんの噂はその………現実離れしすぎていてな?特にここはクリスティアから遠いから、噂に尾ひれ背びれがついたと思っていたが………」
「……ちなみにその噂とは?」
「そうだな、特にそれはないだろうと思ったのが………敵対していたアルファネアを許し、大海嘯から救い、さらに飢えた民に惜しみなく施しを与えただとか」
「う」
いや、慈悲深くなんてない。肉パしなかったら暴動起きてたし。飢えたモフモフに食事を与えるのは当たり前!
「巨大なロザリンドちゃんが美しい羽根を生やして邪悪なものを倒しただとか」
「うう……」
あれは神の奇跡なんだ。私のせいではない!私以外にも居たじゃん色々!!
「今も精力的に種族関係なく孤児を保護し貧しいものも学べるような施設を作っているだとか、冒険者の遺族保険を作って遺族補償に勤しんでいるとか……全て本当だとしたら女神と思うだろう?そしてそんな人間がいるはずない。我々のユグドラシルを救っただけでもすごいというのに」
「概ねその通り……デス……」
いや、普通じゃないか?それはノブレスオブリージュってやつだから。貴族のお仕事なの。
「……………全部?」
「…………………概ね」
「……………………………え?ま、待ってくれ!つまりロザリンドちゃんは我々の恩人であるだけでなく全く関係ないウルファネアも救い、今も貧しきものを助け続けている?」
「ぶっちゃけ困窮した民に救済策をとるのは上位貴族なら当然では?と思ってます。それに衣食住足りて礼節を知るとはよく言ったもの。貧民救済は治安の改善に繋がります。善意的に解釈されすぎても困りますよ。私にも利があるからしていることです。そもそもウルファネアの件は半分成りゆきですし、飢えたアマゾネスと化したウルファネアのお母様達に白旗をあげただけです……。あと、羽根が生えたやつは神の奇跡なんで私が何かしたわけではたぶんないです」
まあ、邪悪なものを活性化させてしまった気はしないでもない。しかし余計なことは言わないでおく。お口チャック。
「荒唐無稽な話とばかり……神聖ロッザリンド教団の教祖はロッザリンドちゃんの素晴らしさを訴えていたが」
「ロッザリンド呼びはやめてください」
「………すまない。ロザリンドちゃんの素晴らしさを訴えていたが、私をはじめ誰も信じなかった。もしかしたらそのせいで良からぬ輩と手を組んでしまったのかもしれないな。気がつけば急成長してあんなことに………」
ローズウッドさん達も何度か摘発しようとしたが、集会場を定期的に変えるようになってしまい尻尾をつかめないそうだ。
良からぬ輩について情報が必要かも。一網打尽にするのなら、情報収集必須だよね!
とりあえず私の心の平穏のために、殲滅してくれるわ!!
はい、大遅刻しましたお久しぶりです。
めちゃくちゃ湿疹が出て痒くて死にそうでしたが復活しました。
マイペースに更新再開したいと思っております。




