彼女はついに気がついた
大図書館でフロッピーディスクをもらい、ナビ本さんからオススメ小説やら調べたかったことの資料を発掘してもらったりと、あっという間に時間がすぎた。
「ロザリンド様、ディルク様、お迎えにあがりました」
案内役のダークエルフさんがお出迎えに来てくれた。
「えっ、もうそんな時間?!」
久しぶりに読書に没頭してしまった……!
「またいらしてください。大図書館は本を愛する方をいつでも歓迎いたします」
「ありがとう!」
ナビ本さんは司書らしく控えめに歓迎してくれた。うん、このぐらいでいいんだよ。本も楽しめましたし、お土産も買えた。
大図書館の販売コーナーに兄が探してた絶版の希少植物図鑑があったんだよね。うふふ、喜ぶこと間違いなし!
ご機嫌で大図書館をでて…………。
「筋肉ムキムキ!ロッザリンドォォ!!」
「ロッザリンド!ロッザリンド!!」
「ロッザリンド!!ロッザリンド!!」
とりあえず戻ってそっと扉を閉めた。
「………」
ちらっと窓からこっそり外を見る。
来たときと風景が違う。町が、盛大な祭りになってる!ナニコレドッキリ?!盛大過ぎるドッキリだな!?
ヴァルキリー神輿とか、よくわからんパレード始まってるうううううう!?出店も出てるし、なんでウルファネアの怪しげな一団がダンシングしながらロッザリンドってコール&レスポンス………。
あーーーーもーーーー!!ツッコミが追いつかねええええええ!!!
「エルフ長老様が宴とはりきりまして、有志の方も参加しております………ええと……裏手から迂回しますか?」
「お願いします!!!!!!」
この国のダークエルフさん親切!!察してくれたよおお!!
ディルクもチラッとドアを開けて外を見てそっと閉めた。無言だけど尻尾がピーンとしてるので驚いた模様。
「ロザリンド、目立たないよう移動しようね。認識阻害の魔法使って」
流石はディルク!!馬車もマークされてるかもしれないからと案内役のダークエルフさんに囮役をお願いして私を抱っこしてくれた。そして、ローズウッドさんが待つ建物まで運んでくれたのだけど……猫科らしくしなやかな動きが美しく、着地もほぼ無音。カッコよさに惚れ直しました。いつも惚れてるけど!
そして、囮になってくれた案内人さんが乗った馬車が………。
馬車ごとわっしょいされてた。
乗ってなくてよかったと思いつつ、案内役さんに絶対後でお礼とお詫びしようと心に誓った。本当にありがとう……!私達は、貴方の犠牲を忘れない!!
こうして私達は尊い犠牲の末、なんとかローズウッドさんのいる建物にたどり着いた。
「おや?早かったね。祭りは楽しめたかい?」
「あのお祭りは………」
「エルフの長老がはりきっていてね。君が来る話をしたら一月前から準備していたのさ。盛大にロザリンド歓迎祭りを開催すると、各里のエルフも参加してかつてない規模の祭りになっているよ。この国がこんなに賑やかになったのは初めてさ」
「明らかにエルフではない筋肉が多数いましたけど……」
「エルフだけでなく、ウルファネアの獣人達もロザリンドちゃんを称えるならぜひ参加したいと希望があってね。我らの恩人はとても慕われているのだね」
「ソウデスカ……」
「……すまない、もしや騒がしいのは嫌いかい?」
「……時と場合にはよるのですが、その……私は利己的な人間なのです。世界を救うとか崇高な目的があるわけではなく……なのでこんなに称えられると困惑するんですよね」
根っこは陰キャだから、こう……立役者ポジまでで勘弁して欲しい。わっしょいされたくないんだよ……!
「そうだったのか……!すまなかった。その……実は薄々感じていたんだ。他国から銅像を作る話も断っていたと言うし、目立つのが苦手なのかと」
「え」
初めて……初めてわかってくれた……?!
「もっと質素な宴がいいのかと……!」
「いや、宴ではなくもっと小規模の個人的パーティーとかがいいです!!」
国家間のアレコレとか気を使うし、豪勢な食事とかもなくていい。素朴なもてなしがいい。ダークエルフもそういう暮らしを美徳とするそうで、共感してくれた。
ローズウッドさんは初めて私が本気でわっしょいされたくない事実に理解を示してくれた。ナビ本さんといい、私………もう老後はここに住もうかな!
「しかしその……申し訳ない。招いてしまった者達に帰れとも言えない……」
「………デスヨネ………」
「そして、エルフの長をはじめ、皆は君に会えるのを楽しみに集まったのだ………」
「………デスヨネぇ………」
つまり、逃げ場がない。ローズウッドさんの立場を考えると、不本意ながら主役が匿ってもらうわけにもいかないのだ。指に光る、ヴァルキリーを見る。そして、ディルクを見た。
「ロッザリンドォォォ!!!!」
結果として、多分夜だし遠目からじゃ私のこと見えないだろうから、ヴァルキリーとロージィ君によるエレクトリカルパレードをお楽しみいただいた。
なんか、レインボーにシャイニングする魔法天使も虹色のパンツをはためかせて飛んでいたような気がするが、気の所為ということにしておいた。対抗して虹色に輝く変態マンドラゴラがダンシングしていたのも気のせいだ。
ダークエルフのご馳走は特製の蜂蜜を使ったお料理で、どれも素朴で美味しかった(現実逃避)
ああ、遠くでロッザリンドコールが聞こえる………。ヴァルキリーって……割と目立つの好きだよね?もうこのさいロッザリンドに名前変えて私の代わりに聖女とかなんかよくわからない何かになってくれないかなぁ……?
外の祭りは大変盛り上がっている。私のテンションはソレに比例して下がっている。そろそろ何か悟れそうなぐらい下がっている。
「ロザリンド」
「なに?」
「その、言うか迷ったんだけど……」
「うん」
「………その、今回みたいなサービス精神の結果が今なのでは……?」
外ではヴァルキリーとロージィ君がエレクトリカルダンシングショーを披露している。
「………………そ、そんなことは…………」
あるかもしれない。
長年悩んできたアレやコレやソレは………私のノリとサービス精神の積み重ね………?
「あと、相手が善意だから言いにくいのはわかるんだけど、いつも面倒だからって放置するからこうなるのでは……?獣人集団はともかく、長様以外のエルフはまだ話せばわかるかも……」
私は頭を抱えた。
「うわぁ、すごいな!」
ローズウッド様が喜んでるしいいかなって思ったけど、今後は落ち着いてからちゃんとこう、私は祭られたくないと地道に伝えてみようと思いました。
私は途中でふて寝したので知りませんでしたが、精霊さん達も参加してナイトパレードは大盛況だったそうです。
もうさ、今後こういうのは私じゃなくてヴァルキリーがいればいいのでは……?と思うのでした。
連載○年目にして、少女はついに現実と向き合う。
「逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ、逃げちゃダメだ……!」
襲い来るお祭り男達、迫りくるわっしょいエルフ達!
少女は、ロッザリンドォォォ祭りを終わらせることができるのか。
次回 祭りが終わる日 をお楽しみに!!
※すいません嘘です。
CMです。新連載、始めております。
13話あたりから白き神の使徒も出演予定です。10話以降アクセルがかかりますので、楽しんでいただけたらと思ってます。頑張って毎日更新中ですのでなにとぞ……!
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