そんな気はしていたと……以下略
ナビ本さんの案内でかなり深くまで移動した。
「しかし、お客様方は運が良い。あれは残念ではありますが女神。この大図書館の守り神なのです」
「………興味本位で聞くけど、ナビ本さんとどっちがえらいの?」
「……………………純粋な権限でしたらあちらが上です。腐っても神ですから。実務は私がメインですので、実質は私のほうが上位ですけど」
「なるほど?」
「………ロザリンド、いつ言うの?」
ディルクに言われてため息をつく。
「ナビ本さん、ここに遺産がありますか?私の贈り人は渡瀬凛。待ち人です」
ギギギ、ガシャン………。なんかやばい音がしてナビ本さんは停止した。
「おおおおおおおおおオオオオオオオオオ」
「!?」
「こ、壊れた?!」
「壊れテはオリまセン。待ち人サマ。ご来訪をお待チしておりマした」
いやいや、さっきまでと違ってめっちゃヤバくなってる!なんかゴリゴリいってるし!!
「ナビィ君!ナビィくーーーーん!!」
思わずポーチをブンブンしてみたところ、目当ての鍵が落ちてきた。
「……座標確認。ナビ本ノエリアト確認。マスター、コ゚要件ハ?」
「ナビ本さん壊れてない?!」
「ナビ本ヲサーチ…………解析完了。感情ノ高ブリニヨリ神経系統ニ過負荷ヲ確認。部品交換ヲ推奨シマス」
「直して!!」
「了解」
やっぱり壊れてるじゃん!!
そんなわけで待つことしばし。
「大変失礼いたしました………」
ナビ本さんは無事修理され、ナビィ君は鍵に戻った。いや、びっくりしたわ……。
「いや、直ってくれてよかったよ」
私のせいで壊れたらシャレにならん。どう考えてもニメガだけで大図書館の管理できないだろうし。
「歓迎したいところではございますが、このエリアは静寂を良しとする大図書館。最深部、管理者エリアへご案内いたします」
意外にも大騒ぎせずナビ本さんは淡々と私たちを案内してくれた。
「こちらです」
案内されたのは行き止まり……ではなく、本棚が生き物かのようにどいて道を作る。隠し通路の先にあったのは、エレベーターだった。
「どうぞこちらに」
エレベーター内部には執拗と思うほどの魔法陣が刻まれていた。刻まれた魔法陣は……『秘匿』『防音』『認識阻害』違和感をおぼえるほど、何かを隠そうとしている。このエレベーターをというより、その最深部の存在を隠そうとしているのだろう。
それにしても…………このエレベーター…………長くね?
かれこれ10分は経っただろうか。ようやくエレベーターが停止して、扉が開かれた。
「ようこそ、大図書館最深部へ」
そこは、町だった。見覚えのある町だった。
「ここは……」
だけど、誰もいない町だった。
「我が創造主の故郷を再現したそうです」
凛の記憶から抜け出したかのような町。迷いなく街の中心部へと歩みを進める。そこには鳥居があり、神社とかつての私が暮らした家があった。
「………本当に貴女は待ち人様なのですね……」
ナビ本さんが感慨深げに言う。ドアには鍵がかかっていた。彼を見るが、ここの鍵はないのだという。
「壊す?」
「ダメですよ!?まあ、ドラゴンブレスでもここの扉は壊れませんけど……」
逆に試してみたい気もするなぁ、それ。でもまあ、壊さなくても大丈夫だろう。
「いや平気。この辺に……あったあった」
植木鉢の下から鍵を取り出す。定番の隠し場所だったのよね。または郵便受けに入ってる。
「「そんなところに?!」」
え、そんなに驚くこと?
「うん。よくここから鍵出してたのよね。子供に鍵を持たすのは怖いけど、家に人がいないことも多くて、こうするしかなかったの」
記憶通りに扉が開く。だが、その先は……………。
「うわ……」
覚えている。ああ、覚えている。
玄関の先は、草原だった。
まだ私が病気ではなくて、母もいた頃。幸せだった時期、一度だけ行けた旅行先。
そこで見つけた不思議な場所。森を抜けた先、今にして思えばおかしな、どこまでも続く草原と大きな木。
「………約束、守ってくれたんだ」
思い出の場所ではないけれど、悲しくなんてないけれど『また行こう』という何気ない約束を思い出して涙がこぼれた。
自然と木の幹に触れると、木からボール状のものが出てきた。そして中身は…………。
「フロッピーディスク?」
「それは?」
「ええと、記録媒体かな」
ここまで厳重に守っていたのだ。何か重要な情報なのだろう。とりあえず封印して…………フロッピーディスクドライブ買ってこないとだわ。凛花にでもメールして買っといてもらお。
しかし、この情報を早く確認すべきだったと後に後悔することになるのだが………今の私は知らない。
昨日までお仕事だったので疲れ切って寝てしまいました……。なんとか更新です。




