この嫁にしてこの夫あり
選別が終了し、馬鹿共はオトコハツラ遺跡に収容された。なんか悲鳴が聞こえるけど気にしない。調きょ……じゃなかった。存分に反省したらいい。
騒ぎを聞きつけたバーディアの王や貴族たちが固まっていた。
「貴方がたもご不満があるならどうぞおっしゃって。まだ『空き』はあるようですし」
にっこり笑ってみせたら青くなって首を振っていた。
「あ、あの……か、彼らは何故その………」
そろそろ媚薬系統が効いてきたのかアンアンいい始めている。
「……………落ち着かないので場所を変えてよろしくて?」
満場一致で移動することになった。いくら私でもアレをBGМにしながら会話するのは難しい。
バーディア城の応接室。まあ、ギラギラしているがよしとしよう。
「か、彼らは何をしたからあのような目に……」
「ほほほ、身の程を知らず噛みついてきたので、躾を少々。それから、彼らは身をもって知るべきかと」
「な、何をですか?」
「いきなり見知らぬ場所に連れ去られ、身体をいいように弄ばれ、屈辱を感じても死ねないという思いを知るべきです」
そういう意味でオトコハツラ遺跡は合理的。思考を読み取り、性的搾取した女性と同じ目にあわせるらしい。ただアンアン言わせるわけではないそうな。
「い、いくら加害側だからっていたぶっていいことにはならないのでは?!」
「それはそうですけど………敗者の分際で勝者に意見する権利があるとお思いで?そもそも、私が強くなければこの国の被害者達と同じように扱われておりましたのよ?命があるだけありがたいと思っていただきませんと。ねえ、クラリン?」
「なぁに?ロザリン」
「この人達は、どちらかしら?」
「天罰ね」
「そういうわけで、身をもってわたくしに何をしようと思ったか……味わっていただきましょうか!」
逃げようとしたが、そうは問屋がおろさない!!即座に風魔法を展開!!
王達もオトコハツラ遺跡行きで〜す。残念無念、また今度!!そりゃ親玉なんだから無罪なわけないよネ☆
「悪い男はいね〜が〜」
「天罰てきめんなの〜」
「ぎゃーーーーーーーーー?!」
はいアウト!
「悪い男はいね〜が〜」
「無駄な抵抗はやめるの〜」
「助けてええてええええええ?!」
はーい、1名様18禁地獄へご案内!!
「悪い鳥はいね〜が〜」
「悪い男はいね〜が〜」
「あーーーーれーーーーー?!」
はいは〜い!毎度どうも!来世で会おうね!
私とクラリンはひたすらに加害者をオトコハツラ遺跡送りに処していった。
そして、男は(ほとんど)いなくなった。
「あの」
「はい」
「何してるんです?!そしてあの遺跡で一体何が?!」
先程捕縛を手伝ってくれてたバードルさんが慌てて駆け寄ってきた。
「……世の中には知らないほうが良いことがあります」
そんな事を言っていたら遺跡から謎の汁まみれになった全裸の男たちが排出された。
「お、おい!無事……ではないな?!一体何が……」
「あは……あはは………」
うーん、目の下焦点が合わんな。媚薬効果かしらん。異常無効の魔法薬をぶっかけた。ついでにヌメヌメも取れた。よかったよかった。
「………はっ?!さ、さっきの女!お、俺達になんの恨みがあってこんな事を?!」
「え?同じ女としてお前達がしたことが許せないからだよ。恨まれた結果だと思えるようなことだったわけ?……じゃあ聞くね?お前の伴侶に何の恨みがあってこんなことしたわけ?」
「…………あ…………」
「ねえなんで?恨んでたの??私はね、何の罪もない女性にこんなことした馬鹿がおんなじ思いをしたら良いと思ったよ。だから、やったの。まだまだ足りないだろうけど。だって、伴侶さんは1回きりではなかったんでしょ?何回?何年?望まない場所に監禁されて過ごしたの??ねえ、それなのにアナタは何の罪もないのかなぁ??」
男達はうなだれた。
うーん……なんというか………ナビ子さんの気持ちがわかる。わかりすぎる。クリスティアにもそれなりに性差別がある。私に加虐嗜好はないけど、許せない。
「ロザリンド、君が手を汚すことはないよ」
「……ディルク?」
怒りに燃えた私の目を塞いだのは、最愛の夫だった。
「まあ、自覚を促す必要はあったろうけど……同じ事を加害者にしたところで、被害者のためになるわけではない。同じ雄として情けないよ。そういうわけで、ここからは俺に任せてくれるかな?その根性……叩き直してあげるよ」
おだやかなその笑顔。しかし有無を言わせぬ圧がある。叩き直すって物理ですね、わかります。
「うわぁい、ダーリン頼りになるぅ!」
「…………なんとなく事情は飲み込めたが………なんというか、あんたら似た者夫婦なんだな………」
「どちらかというと、昔の俺はもっと人生悲観してジメジメしてたから彼女の影響です」
「え」
そしてディルクは地面を割った。すごいや……下手したらバーディア割れるのでは………?
「さて、獣人流儀でわかりやすくいこうじゃないか。服従か、死か。好きな方を選ばせてあげるよ」
にゃんこみたいに可愛くても、やはり黒豹は猛獣なのです。
「はう……ディルクカッコいい……」
「似た者夫婦というか、この嫁にしてこの旦那あり……なんだな………」
バードルさんは遠い目をしていたが、ディルクの教育的指導(物理)により比較的罪が軽かったバーディアの民はかなーり矯正されたのでした。
まあ悔しいけど、ディルクは強くてカッコいい雄ですものね……。彼らにとって受け入れやすかったのだろう。それにしてもうちの旦那様イケメン過ぎる。惚れ直したわぁ……。
良くも悪くもロザリンド色に染まりきったディルク。本人は今の自分のほうが好きと笑うのでしょう。
必要があるなら補えるパートナーっていいですよね。




