スペシャリストと未来の王様
今回は休暇中だからアルディン様に丸投げしたわけだが………少しは手伝おうかなって思っています。
「現状、1番の問題は被害者達のケアだと思うが……いい案はあるか?」
クリスティアでもやはり根強い男尊女卑。色々手広くやっている私もまあそれなりに出しゃばりすぎるとかはしたないとか、女は一歩下がって男を立てるべきとか言われてましたのことよ。
そんなわけでこういった事件の被害者へのケアも全く整ってない。整ってないどころか男を誘った女扱いするバカ野郎もいる始末。
「解決策はあります」
「本当か?!」
「ええ、連絡して向かってますよ」
そう、もう一つの遺跡、オトコハツラ遺跡!!
「スペシャリストが管理AIで多忙なんで管理してる施設へ移動しました。まあ、施設もある意味使えそうですし……」
オトコハツラ遺跡も実は移動要塞らしいけど、ここシェルターだから決死の思いで逃げてきた人が入れないと困るだろうしってことでこっちから行くことにしました。
「悪い男はどこですかーーー!!このナビコが成敗いいたしますよおおおおお!!」
フルスロットルナビコさんがダッシュして遺跡から出てきてくれました。それにしても殺意高いな!?説明が悪かったかしら……?
「バーディ、ナビコさんに情報共有」
「了解。接続を確認。これより情報を転送いたします」
ナチュラルに命令してしまったけど、私はもうマスターではないはずだよね??確認すると藪蛇になりそうだから言わんが。
「情報、取得いたしました。許せませんね。我が施設の出番ですね?!不届き者はどこですか?!」
「まあ、それもいずれお願いするけど、今はそっちではなく傷ついた女性たちのケアを優先でお願いしたいんだけど」
「このナビコにお任せを。傷ついた女性のケアはナビコの最重要任務です。すぐカウンセリングを実施いたします」
「ロザリンド、彼?彼女??は???」
「ナビコさんはオトコハツラ遺跡の管理者。オトコハツラ遺跡は傷ついた女性たちのシェルターなのです。言うなればナビコさんはその道のスペシャリストと言っても過言ではない」
いや、スペシャリストどころかぶっちゃけ世界最高峰と言っても過言ではない。何百年ものノウハウがあるのだ。う〜ん……そう考えるとナビコさんはすごすぎるのでは……?
「そ、そんな……マスターにそこまで褒められたらナビコは照れてしまいます……」
「いや、事実ですからね。よく考えたらナビコさんは性被害に遭った女性のメンタルケアにおいて世界最高峰と言っても過言ではないです。かといってナビコさんだけでは手が足りないでしょう。バーディ、貴方が助手をしなさい」
「了解。命令受諾」
「流石の手腕だ。やはりロザリンドはすごいな!」
「ぐぬっ!」
しまったつい……!アルディン様に難しい案件を任そうと思ったのに働いてしまった!け、けどまあ女性のケアについては男性であるアルディン様に任せるのは酷かなって思うし女性たちが怖がるかもだから!うん!だから仕方ない、よね??
「バーディは女性達に脅威である可能性がありますので、オトコハツラ遺跡の住人でセラピストになり得る者を派遣します」
「ナビコさん!!その人達、この件が終わったらというか、ナビコさん含めて働いてくれないかな?!この世界にナビコさんの力が必要なんだよ!!」
「マスター………!ナビコは感激しています!AIとしてこれほど嬉しいことはございません!この身がスクラップになろうとも、必ずやマスターの指令を完遂してみせます!!」
「うん。ありがとう!」
今後ナビコさんのノウハウを被害者支援に取り入れるとしよう。まだまだそっち方面は未熟だからね……。私も力押しは得意だけどそういうのは苦手だし。
アルディン様にしっかり説明したら、なぜかしょんぼりされてしまった。
「ロザリンドはすごいな」
「ええ?今回スゴいのはナビコさんでは?」
「上に立つ者として、部下の能力を把握し、先を見据えた采配をしている」
「それを言ったらアルディン様もですが?」
「俺??」
「いつだって部下を見て、信頼して仕事を任せてくれるじゃないですか。だから私は貴方の下につくと決めたんです」
「そう。なのか?」
え?なんでアルディン様は泣きそうなの??
「はい。それがアルディン様の才能かと」
正直政務能力ではアルフィージ様に劣る。それでも私達の王は彼だ。だって、私達を信じて任せてくれる。なんなら、自分が責任を取るからと背中を押してくれる。
そんな王様だから喜んで従うし彼のために働く。私は彼ほど優しくなれはしないが、だからこそ彼の望む綺麗で優しい国に憧れ、望みを叶えたくて働くのだ。
彼が信じてくれるなら、私達はきっと優しいものにだってなれるだろう。偽善だって最後まで貫いたのならいつか善になるだろう。
「そして、差別なく公平な目を持っている。僕達の王は、貴方だけ。ディルク=バートンは命尽きるまで我王に仕えます」
「同じく、ロザリンド=バートン。我が王の国が、治世がより良きものとなるよう誠心誠意お仕えします。未熟でもよいのです。私達が支えますし、未熟ということは成長の余地があるということ。私達は私たちの意志でお仕えすると決めたのです」
「……ああ!俺は2人に恥じない王になる!絶対だ!」
「はい、期待してます。今だって素敵な上司ですけどね」
まあ、とはいえオトコハツラ遺跡のもう1つの顔は……まだ教えなくていいかなって思う。
被害者のケアや保証が最優先ですし……加害側は私が処理しておくとしよう。適材適所ってことで、親愛なる王様のためなら汚れ仕事も喜んでやりますよ。
なんだかんだでやはりアルディン様に甘いロザリンド。なんというか、アルディン様はそういう王様でいいと思うんですよね。




