悪いのは勇者様だと思いたい
とても見覚えがある円筒形ボディ。とてもナビィ君に似ていらっしゃる。そしてポーチさんが容赦なく点滅している!!もう出さなくてもわかる。隠れ家の鍵だ!!ナビィ君でしょわかってるけどヤーーダーーー!!
「私は長期休暇なうなんです!最愛の旦那様とラブラブ新婚旅行なうなんですったらーーー!!」
「ロザリンド」
「ぴえ……」
アルディン様は笑顔だった。めっっちゃ笑顔だった。後光が差して……いやこれは精霊さんのサービスだわ。物理的にまばゆいのは通常運転だ。
「別に俺は働けなんて言ってないぞ?とりあえず、出してあげたらどうだ?」
「嫌だー!!だってこれ出したら詰む!!」
駄々っ子と思われてもいい!回避するんだー!
「……ロザリンドはなんで騒いでるんだ?」
何も知らないルランが首を傾げた。
「ロザリンドは待ち人ってやつでね」
「私が悪いんじゃないもん!こと姉ちゃんが元凶なんだからーー!」
ディルクの説明を遮ったのだが、NGワードが飛び出していた。
「マチビト……?」
ぎぎぎ、とバーディ様が体を鳴らしてゆっくりと近寄る。めっちゃ劣化しているようでギコギコいってる。
「アナタは、マチビト、サマ、ですか?」
「違います」
なぜかディルクに問いかけた。ワードに反応したんだね。
「ロザリンド」
そしてなぜルランが滝汗??
「はい」
「ま、待ち人?」
「私というか、私の中にいる贈り人が、です。渡瀬凛という女性なんですよ」
「おま、な、な、な、なんで早く言わないんだよおおおおお!!!!」
「はい????」
なんでルランは地面に寝そべったの??
「いや、ワタセリン?リン=ワタセ??」
「こっち風だとリン=ワタセだね」
「あーーーーーーー!全員整列!!待ち人様に礼!!」
「……………………うえ??」
なんで私はドラゴンに礼をされてんの???そしてディルクの説明でディルクが待ち人でないことに納得してしまったバーディ様がこちらに来てしまった。
「アナタは、マチビト、サマ、ですか?」
「………………」
言いたくない。え、何この状況。
そして、無情にもポーチさんが隠れ家の鍵をペッてした。
今このタイミングで?!!
そして鍵から出てくるナビィ君。
「座標ヲ確認。バーディノエリアト確認。管理AI本体の劣化ト損壊ヲ確認。マスター、修復許可ヲ要請シマス」
「………許可します」
いやぁまぁねー。ちょっとかわいそうだと思ったしねっていうか、これはどういう状況なの???バーディ様はナビィ君に連れられていなくなり……後には私に頭を垂れるクリスタルドラゴンの群れが残ってしまった。
「大変な無礼をお許しください、待ち人様」
「え、やめてよ。私とルランは友達でしょ?友達に距離取られたほうが悲しいんだけど。どういうこと?」
その昔、クリスタルドラゴンは幼竜が乱獲されていたそうな。ドラゴンってこう、時間感覚やばいのでしばらくエサ取りで数日不在とか普通にあるからその隙を突かれたらしい。そしてその密猟者達を根こそぎ蹴散らした勇者コトハ。さらには巣に警報を設置。子ドラゴンが襲われたら激しく鳴り響き他の大人ドラゴンが侵入者を始末するのだとか。
ドラゴンは恩を忘れない。誇り高きドラゴンを救った勇者に仕えようとしたのだが勇者コトハはいつか現れる待ち人に仕えてほしいと願ったそうだ。
こと姉ちゃん……絶対めんどいから私に丸投げしたよね?!私だって困るんだけど?!
「そういうわけで今から俺たちの群れはロザリンドの下につく」
「いや、つかないで!今までどおり友達でいて!困った時はお互い様ぐらいの関係がいい!!私、これ以上(厄介な)部下は欲しくない!ルランとはお友達でいたいの!!」
「ロザリンド……」
「お願いだよ!私、高位貴族だから対等に話せる関係は希少なんだよ!!気軽に遊んだりできなくなるのは嫌!!」
ドラゴン達が頷いた。
「そこまで言うなら……あくまで俺達は対等な関係……つまりこれまで通りで本当にいいんだな?」
「いい!それがいいの!!そもそも私は人やらドラゴンの上に立つ人間じゃないし!」
「…………為政者向きではあると思うが……まあいい」
よっしゃあ〜〜〜〜!!クリスタルドラゴンの主回避成功!!!
「戻りました!待ち人様、このバーディが心より歓迎いたします!」
一難去ってまた一難とはまさにこのこと。
「あ……ハイ……」
これに関しては回避不可(ナビィ君もそうだけどAIさんは説得不能のため)なので顔を引きつらせつつ頷いた。諦めたとも言う。
そして今頃なのだがバーディアの人々からドン引きされていた。私は悪くない!ドラゴンが私に頭下げるからだー!悪いのはこと姉ちゃんなんだー!!
そんな私の心の叫びが悲しく心中に響くのであった。
ちなみに言葉さんは回避したかっただけでこんなに凛が困ることになるとは思っていません。あと、結構病弱だっためかそれなりに過保護でもあるので助けを……と思ったらこんなことになっています。
言葉さんの旦那さんは薄々やりすぎでは……?と思っていましたが言葉さんが楽しそうなので止めませんでした。