双方にとって予想外
そんなわけで私はバーディア王宮にて緊急会議をしたわけなのだが。
「とりあえず、経緯を説明してもらえるか?」
何故かアルフィージ様ではなくアルディン様がいらしてしまった。理由はわかっている。嫌な予感がしたアルフィージ様(行きたくない)に気を使い立候補したからだ。
やりにくいことこの上ない。
こういった場面で笑顔で搾り取れるだけ搾り取るアルフィージ様と違い、アルディン様はあまりにも善良だからだ。とりあえず事の経緯をアルディン様に説明した。未来の王ははたしてどのような判断をするのか。
「話はわかった。バーディアから正式な謝罪を求める。ロザリンドは我が国の侯爵夫人。国の要人に対してあまりにも非礼が過ぎる」
「もちろんでございます」
もはや土下座しているバーディア国王一家。やりにくいから普通に座ってくれないかな?
「反面、ロザリンドもやり過ぎだ」
「異議あり!!」
「……ええ?」
「私は死者も出さず場を収めたんですよ!?褒められてもいいぐらいと思います!!」
「……それはそう、なのか?」
「そうですよ!私がたまたま自力でどうにかできる系侯爵夫人だから解決できただけ!戦闘能力皆無な女性だった場合は泣き寝入りです!監禁凌辱コースですよ!?実際そういう被害者多数ですよ!!」
というか、バーディアの女性はここで産まれたわけでない限りそうなのだ。
「そうなのか!それは解放してあげないとだな」
「そ、そうなっては我が国は滅んでしまいます!」
流石に異議ありなようだが……立場をよくわかってないみたいだね?
「受け入れられないのであれば、滅ぼしますが?」
そもそも私は怒っているのだよ。
「ロザリンド、気持ちはわかるがどうしてそう悪者になりたがるんだ。兄上にはきっちり解決策を含めて報告してるのに」
「え」
アルディン様がバラしてしまったので仕方ない。
「滅ばない代わりに国交の正常化を求めます。それがそちらを滅ぼさず、金銭等を要求しない対価。この国はかなり豊かですからね。家族と折り合いが悪いとか、贅沢したい人なら嫁ぐケースもあるでしょう。お見合いを斡旋してあげてもいいですよ。その代わり、帰還を望む人はすべて解放してください。それが和睦の最低条件です」
「ぐっ………」
バーディアとしては飲むしかないが、一時的にとはいえ女性を大幅に減らすことになる。それが嫌なのだろう。
「ロザリンドの言うとおりだ。お前達だって、故郷が……この国が大事だろう。民を蔑ろにする国はいつか滅びる。少なくとも俺は王として、その在り方を認められない」
アルディン様……立派になって……でも眩しすぎてなんか謎の発光物体になってて台無しだよ……。頼むからもう少し照度を落としてくれないかな?目がチカチカするんだが。
「おお……なんと神々しい……」
「内なる輝きが見えるかのようだ…」
いやそれ、物理的な輝きだからね?光の精霊さんによるサービス?だからね??
「その清らかさと輝きに感服いたしました。我々は貴殿に従います」
「え?」
アルディン様が涙目でこちらを見た。我が主君(予定)は大変お困りであるらしい。私はにっこりと微笑んで親指を立てた。多分だけど鳥だからヒカリモノが好きなんじゃないかな?頑張って!
私からのフォローはないと理解してくれたらしく、アルディン様はショックを受けたようだった。
基本的に生命の危機とか、アルディン様の名誉を傷つけるやつには容赦しないけどバーディアの民は好意的ですし。拝まれてるぐらいだから害はないし。私が普段こういうことで困っても誰も助けてくれないからいい気味とか思ってない。ないったらない。
そういえば、こういう時に多少フォローしてくれるディルクが何も言わないのは珍しい。隣を伺うと何か考えている様子だった。
「ディルク?」
「あ、ごめん。考え事してた」
「考えごと?」
「うん。バーディアって、どこかで似たようなものを見たことあるなってずっと考えてて………いま思い出した。オトコハツラ遺跡だ」
オトコハツラ遺跡。
救世の聖女であること姉ちゃんが作った女性専用シェルターであり、男性専用お仕置き施設であり、空飛ぶ移動要塞でもある。
「え」
「我が君、アルディン様!この国を支える神の使いを紹介いたします!」
あ、嫌な予感しかしない。
現れた円筒形のボディ。背中に鳥の羽。
「……やっぱり」
とても見覚えあるんだが?!
「バーディ様です!!」
とりあえず、見なかったことにしたいがアルディン様がめっちゃこっちを見て微笑んだ。
アルディン様がアルフィージ様の弟だと実感した瞬間だった。
今回はそんなにおまたせしてない……かなと!
珍しく意地悪しそうなアルディン様。
書いてて楽しい回でした!




