それは宝石などではなかった
※今回はバーディアの王子視点になります。
バーディアに生まれて、自分にふさわしい花嫁を探すために旅に出た。初めて会った時、自分の魔法を解呪する稀有な才能の持ち主だと、素晴らしい原石だと思った。
それから美しく成長し、美しい宝石のように輝く彼女に求婚したものの、他の男に夢中だったため断られた。ならば第二夫でもいいからと求婚したがそれすら色よい返事はもらえなかった。
何が足りないというのだろうか。
そうだ、バーディアに招くことができれば、きっと考えを改めるに違いない。バーディアは美しい国だし、財力も示せる。
名案を思いついた私は、少し強引に彼女をバーディアに招いた。しかし、宝石でたくさん飾ってもお気に召さなかった。それでは黄金か。それとも珍しい魔法鉱石がよいか。
思案しているうちに事件は起きた。
「た、大変です!王子殿下がお連れした客人が暴れてらっしゃいます!」
「捕縛しろ」
「そ……それができないのです!!」
バーディアは空の要塞。ドラゴンすらも訪れない高度に普段あるため、陸の人間は動きが鈍くなるはず。さらには、バーディアの民には羽があり、空からの遠隔攻撃も可能で負けるはずがない。ゆえに、捕縛は容易なはず。
「そんな事がありえるのか?」
「我が目を疑いましたが、次々と兵士の背に飛び乗り、翼と腕を縛り上げております!さ、さらには屈強な兵士を乗り物のように扱いだして操り、次々に撃墜しております!」
「はぁ!?」
慌てて双眼鏡を取り出し騒ぎの中心点を見る。ホントだ。というか、魔法すら使っていないのだが!?あの娘は本当に人間なのか!?
そして、雲一つないのにあたりが暗くなった。空を見ると、ドラゴン。
ドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴンドラゴン……バハムート?
「ピョ……」
いや待て。こんな大群見たことないが?というか普通海にいるバハムートがこんなにゆったりドラゴンと空を泳ぐの見たことないが!?
「ロザリンド、来たぞ!」
そんな予感はしていた。怒った彼女がドラゴンを呼び寄せてバーディアを滅ぼそうとしたのだろう。愚かなのは自分だけ。こうなってしまえば、我が身命を差し出してどうにか怒りを鎮めていただく他ないだろう。
「全軍に通達!客人がどれほど暴れようと、一切手出ししてはならぬ!私が殺されようともだ!」
太陽を宝石と見誤った私の責任だ。
鳥の獣人にはこんな逸話がある。誰よりも強く、誰よりも早く、誰よりも高く飛べた鳥獣人の王は太陽を手に入れると宣言し、旅に出た。
王は万全の準備をして太陽を目指した。誰も成し得なかった偉業をなそうとした。
しかし王でも太陽には届かなかった。
それでも王は諦めず、何度も何度も挑戦し、ついに太陽へと到達した。
しかし、王は焼け焦げて死んだ。
太陽に近づきすぎれば焼き殺される。いかに輝いていようとも、それは触れようとしてはいけないものだったのだ。近づくだけで燃え尽きてしまうものだった。
私はその愚かで傲慢な王と同じ道を歩いてしまった。あるいはその太陽は………彼女のように強く輝く魂を持った娘だったのかもしれない。
「私を捕縛せよ。捕虜として客人殿に引き渡せ。身命を賭してでも……民と国を守ろう」
そして私は罪人のように縛られ、彼女に跪いた。
「私が間違っておりました。この命を捧げます。どうか、民だけは助けてください」
「…………どうしてそうなった……」
なぜか、彼女は頭を抱えてしまった。怒りや憎しみではなく、困惑した様子でこちらを見ている。
「……そりゃ、ドラゴンがいきなり大群で来て拉致されたお嬢様の名前を呼んでたら報復行動だと思いません?」
確かこいつは騎士団長の息子だったよな。何故お前はそこにいる?監視役はどうしたんだ。何故協力者みたいな位置にいる??いや、あまりにも彼女が強すぎて寝返ったのか?
「いや、報復行動はやるなら自分ででしょ!?そんななんの罪もない民を虐殺したりしませんよ、私は!」
よくわからないながらも、一つだけわかったことがある。彼女はバーディアを滅ぼすつもりはないようなので、こっそり安堵のため息をこぼした。
悪役令嬢→変わった令嬢→ロッザリンドォォ→聖女→神子→女神→侯爵夫人→太陽的存在
途中掛け声が入ったのは気のせいです。
掛け声ってかもはやジョブな気がしてきました。
次回、何故ドラゴンずが来たのか説明回になります。
相変わらず部分的に計画通りにならないンドさんです。




