何故皆、人で商売をするのか
なんとか私の像やらなにやらを爆破したいと思ったのだが、笑顔のディルクにことごとく阻止された。ディルク相手に近接は不利どころか、近頃は勝てた試しがない。だからといって無差別広範囲魔法をかますわけにもいかず……我慢するしかなかった。
「あ、ロザリンド。向こうの店を見てきていいかな?」
「だが断る」
つい、某有名漫画キャラの台詞がでてきたよ。それはそれとして、絶対ヤダというか、ナニアレ。姫勇者専門店ってナニソレ。この世界に肖像権というモノが存在しないため、皆様やりたい放題ですよ!クリスティアでようやく法令が整備されそうなぐらいかな……。あ、ウルファネアにもお願いしよう。これまでの報酬ってことで!
「ええと……見てきたいなー」
自分より背の高い男がうるうるしておねだりしたって可愛くなんか……可愛いけども!カッコよくて可愛いとか何なの反則!!
「ぬぐぐ……」
「これでも駄目となると……んー、ロザリンド……今夜は好きなだけモフモフしていいよ」
「地獄まででも喜んで!!」
つい世界一イケてるモフモフに今夜はエンドレスモフモフ解禁してあげる発言には抗えないモフリストの性が憎い……!いやもうね、仕方ないのよ。ディルクがイケモフなのが悪いのよ!脊髄反射で何でも許しちゃう!
そして嫌だけど入った姫勇者専門店。
お店に飾られた能面がスゲェ目立つんだが。
予想通り私グッズが山程あるが、こと姉ちゃんのグッズもたくさんある。能面とか能面とか能面とか能面とか能面とかたまに魔女っ子ステッキみたいな呪いの杖のレプリカとか。
よく考えたら、アレは聖遺物的なブツでウルファネアの国宝だったわね……。子供への土産としてはありかしら。そして、能面って並ぶと怖いな。ディルクの尻尾もなんか緊張してるし。猫ってこう……ガンつけられるの苦手だからディルクも能面が苦手なのかな?こう……見られてる感があるしこれだけみっしり能面があると怖い。
能面のインパクトにより、私のグッズが微塵も気にならないのは嬉しい誤算だ。
「……これ、鍵子さん達へのお土産にしようかな」
きっと(鍵子さんは)喜ぶに違いない。鍵子さんが喜べばダンジョンマスターも喜ぶだろう、多分。とりあえず一通り購入しておいた。これを飾るの嫌だなぁ。
ディルクがしこたま私のグッズを買い込んだのは見なかったことにした。いや待て。何故に四個ずつ買うの!?
「観賞用、保存用、予備、お義父さんへのお土産」
「残り三つはいらない!」
「いや、必要だよ!!」
結局ディルクに負けた。悔しかったので尻尾をモフモフしてやった。これは報酬の前借り。正当な権利なのである。そのすきに残り三個は片付けた。私はナルシストじゃないので自分のグッズとかいらんのですたい。
「それを部屋にたくさん飾ったら、もれなく私が寄り付かなくなりますよ?」
「一つで我慢します!」
私のグッズであふれかえる部屋なんてごめんです。私の本気が伝わったらしく、ディルクも諦めていたが全シリーズ制覇しようとした。
「ディルク、抱きまくらは駄目」
「え……」
「本物を抱きしめるべきです」
「そうだね!」
「ディルク、ぬいぐるみも駄目」
「これも!?」
「ディルクに抱っこされるべきなのは私です!」
「そうだね!」
こうして、大物はだいぶ削った。私は頑張った。というか、抱きまくらやぬいぐるみは見知らぬ男に使われると思うと結構嫌なので正式に抗議文を作ってセインティアに提出しよう。というか、勇者権限で肖像権を作ってもらおうかな……?迷惑代ってことで。それも折り込んだ書類を……って、働かない!!ついうっかり働こうとしてしまう……!これが社畜根性というやつなのか………。
「ロザリンド、考え込んでどうしたの?」
「いやそれがね?」
かくかくしかじかパチモン撲滅。
「よく気がついたね、ロザリンド!しっかり回収も要求しよう!!」
ディルクさん、ディルクさん。目が笑ってない。おこですね?激おこですね??
「は、はーい……」
二人が力を合わせれば、書類なんてあっという間です。え?働かないんじゃなかったのかって?この地に大魔神・ディルク様を降臨させてせっかく復興したのをまた更地にするわけにはいかないじゃないですかやだー。臨機応変ってやつですうん。
「ポッポちゃーん」
「くるっぽー。何か御用ですかというか、マトモに呼ばれたの初めてですよね!?ご用件は何でしょうか!なんなら街一つ滅ぼしてきます!?」
「ポッポちゃんは私をなんだと思ってるの!?」
そして何故に物騒な方向でのやる気……いや、殺る気に満ちているんだ!?
「あ、破壊するときはご自分でなさる派でしたよね。とすれば、どのようなご用件で?」
「実はこの手紙を届けてほしくて」
「かしこまりました。……あれ?裏土産のことではないんですね」
なぜだろう。とてつもなく嫌な予感がする。
「詳しく聞かせてもらえるかな?」
「百聞は一見にしかずかと」
ディルクはポッポちゃんから耳打ちされ、走り去った。
そして、般若の形相で戻ってきた。働かないとか言ってられない。セインティア滅亡を予感させる表情であった。
字数的にいったん切ります。
さて、なにがあったのでしょーか(笑)




