とてもカオスなことになっていました
次の目的地はセインティア。行きたいわけではなかったがどうしてもと先方からプッシュがあり、渋々行くことに。滞在は一日で、すぐ次へ行く予定だったのだ。
だったのだ、が。
「シヴァまんじゅうはいかがですかー?」
「ミスティアの匂い袋ですよー」
「インジェンス守りはいかがー?」
「スレングスの木刀だよー」
意外に土産物屋が充実。インジェンスのお守りが眼鏡で草。即購入。シヴァまんじゅうはシヴァっていうかシヴァヴァだわ。今日も元気に電車的な動きをしている。シュッシュッポッポー。夢でシヴァに渡す分と、彼方さん用を購入。ミスティアの匂い袋は……薔薇の香りで普通にオシャレだったので購入。スレングスの木刀は、とても凝った彫刻入りの木刀なので購入。スレングスにあげようかな?
認識阻害がここでも大活躍。普通の旅人として扱われるっていいね。
「まいどありー。お客さん、旅の人かい?」
「はい、妻と旅行で来ました」
「そうかい、そうかい。なら、向こうの礼拝堂と一般公開されてる神殿はオススメだよ。一見の価値ありだね。それから、穴場はここの外れにある聖堂。地元民ぐらいしか行かないが、デートにはもってこいだよ」
「ありがとうございます」
ディルクが多めにお金を払っていた。いつも大体自分で欲しい物は自分で買うんだけど、なんというか……国によってはエッて反応されるのよね。まだまだ男尊女卑が強いこの世界。ウルファネアなんかの獣人系国家は緩いけど、人族系国家は男性が支払うのが普通。女性は後ろをついていくのが美徳っていう人もまだいる。まあ、外国で揉めたくはないので念の為なのだ。
そしてセインティア観光を楽しもうとした。楽しもうとしたのだ。
「……あれは……」
「クラリン……?」
セインティアに、何故かクラリンの銅像がいくつも設置されていた。台座には『天罰を与える神の使徒』と書いてある。
間違ってない。間違ってはいない。
今は神様にクラスチェンジしたが、あの当時は神の力を借りていたわけだし。間違ってない。間違ってないんだが……。
綺麗な神像の中に混ざると違和感しかないな!!
間違い探しかってぐらい堂々とセンターにいるけど!他の神達と等身が違うし!ジャンル間違えた感ハンパない!!
そしてクラリンだけでなく、サボノバさんとサボノビッチさんの像もまた、このカオスに拍車をかけていた。
「あの像は初めて見ますけんど、なんの神様ですかねぇ?」
近くにいた老婦人が、神官に声をかけた。
「あのご老人の像は、神の加護を受けて誤った道に進みつつあった神官達に神の鉄槌を下したのですよ。つまり、天使ですね」
今は神にランクアップしたことを伝えるべきか……?いや、神の誰かにやってもらおう。兼任してたミスティアあたりに頼んでおけばいいか。
「あっちのトゲトゲしたのは、魔物ですかいね?」
「あれは、神の加護を受けた魔物です。魔物にも信仰の心があるのなら、神は力を貸すのです」
正確にはサボテンずは魔物ではなく精霊に近いらしいけど(ゴラちゃん情報)
「なんで眼鏡をかけてるんですかいね?」
それな!!インジェンスの本体って眼鏡なのか、そういえばまだいじってないや。
「きっとインジェンス様のお力の象徴なのでしょう。インジェンス様は、眼鏡に加護を与えることが多いですからね」
そうなんだ……。知らんかった。
「あっちの美人さんは誰ですかいねぇ?」
聞きたくないので、そっと離れようとしたのだが、ディルクが楽しげなので動けず。
「あれは、姫勇者ロザリンド=バートン様です!!」
あれ壊したい。軽く爆破してもいいかしら。いいよね?
「ロザリンド、ダメ」
私の殺気を察知したディルクが首を振った。
「あんれまあ、勇者様はべっぴんさんなんですねぇ」
「ええ、ええ!颯爽と神の鳥に乗って現れ、誤った道へ行こうとしていた我らに正しい道を示してくださったのです!」
真相は友人を拉致されてムカついたから思うがままに大暴れしただけですたい。
「あらー」
「姫勇者様は、それはもう慈愛にあふれておられまして、今でも孤児院に寄付を定期的にしてくださっておいでです。そのため、我が孤児院では子供が飢えることはなく、教育も受けることができるようになったのです!」
それは……だってさー。子供達が普通にさ?お腹をすかせていてさ?私がたくさん使いきれないぐらいお金持ってたらさ?ちょっと寄付するぐらいはあれよ。ノブレス・オブリージュ。貴族の義務なの。そうなの、多分!
教育は、出ていく子供らの財産になるしね!孤児院出て貧困になったら負のスパイラルだからただの対策!はい、慈愛じゃなくて合理的ロザリンド!!
「ロザリンド、そんな言い訳しなくても……」
なんとなくテレパシー的な何かで筒抜けなディルクがお腹を抱えて丸くなった。だって、善意の人だと思われたくなーいの。私は結構自己中なのー!!
「ここにある追加された像は、神の天罰が具現化したあの日を忘れられないし眠れないと職人が眠れない夜に作ったものだそうです。いまでもたまにうなされるそうですね。まあ、私腹を肥やしていた職人だったので、しかたないでしょう」
「バッチリトラウマになったのか……」
まあ、私腹を肥やしていた職人が悪いってことにしよう。そうしよう。待て待て、ということは向こうの壁画とか、向こうの木彫像とか……どんだけトラウマになった人がいるんだ?
とりあえず私は、考えるのをやめた。
いまいち観光を楽しめないロザリンドさんなのでした(笑)
ディルクは普通に楽しんでます。




