姉が異常に有能すぎる件
日記を書くことが日課だった。当時記憶が曖昧だった僕に、ロザリンドお姉ちゃんが勧めてくれたのだ。そんなお姉ちゃんと離れて、改めてその凄さを感じることになった。
当たり前にさしのべるその手が、どれだけ尊いものなのか……多分本人だけが知らない。シヴェリハスもシャムキャッツも、それこそ世界も。いとも簡単に救ってしまう人。
それに比べて僕は凡人。比較対象が悪いのは重々承知の上だけど、上手くできない。
「流石はポッチ殿下!!なんと素晴らしい書類でしょうか!このような革新的な様式、初めて見ましたぞ!」
「いえ、その原案は姉なんです」
宰相さんに褒められるけど、これは僕の発案じゃないんだ。お姉ちゃんがすごいんだよ。
「流石はポッチ殿下!!あの魔物まで討伐してくださるとは!殿下のおかげで安心して暮らせます!!」
「僕というか……偽リンド達のおかげですよ?」
そして、偽リンド達はお姉ちゃんがくれたツヨシのおかげで生まれたわけで……。お姉ちゃんがすごいんですよ。お姉ちゃんならもっと……魔物を凍らせてキレイに精肉するんだろうなぁ。偽リンド達はそこまで配慮できない。倒すだけなら得意なんだけどね。
「流石はポッチ殿下!クリスティアからの援助を取り付けるとは!!」
「いやその……姉の知り合いなので……」
それに、担当が善意の輝き様ことアルディンだもん。誰が担当しても援助してくれたよ。アルディン……僕、君の気持ちがよくわかる。お姉ちゃんとかルーお兄ちゃんとかアルフィージ様とかを見ているとさぁ、自分の凡人さを痛感するよね!
「ポッチ、俺達は完璧じゃなくていいんだ」
たまに僕のアトリエで泣いていたアルディンはもういない。劣等感やプレッシャーから、泣いていた時期があるんだ。でも、いつからか来なくなった。
今は王の代行として立派に務めを果たしている。アルディンはすごいなあ。相変わらずまぶしいけど。
「でも……」
「補うために、側近がいる。完璧じゃなくていいんだ。俺は、そういう王になる。完璧になんてなれなくても、兄上やルー、ロザリンドがいる。ロザリンド曰く、王様はちょっと抜けてるぐらいでいいし、俺はこのままがいいそうだ。俺が困ればフォローするし、難しい難題は皆で考えたらいい。臣下はそのためにいるから頼れだそうだ。だからって頑張らなくていいとは思ってないけどな!」
そう言って笑ったアルディンは、とても頼もしかった。そうか、羨ましいなぁ。アルディンはきっと、いい王様になれる。僕なんかとは、違う。こんな中途半端な僕なんかとは。
「…………はぁぁ……あ?」
無意識に絵を描いていたようだ。最近こう……思い悩むと無意識にやっちゃうんだよなぁ。絵を描くのは大好きなんだけど、もうあんまり描かないつもりでいたのに。
まだ離れてそんなに経っていないはずなのに、涙が出るほど懐かしいローゼンベルク邸と僕の家族だった人達がキャンバスに描かれていた。
赤、橙、黄色、緑、水色、青、紫、茶色、白、黒。
絵が好きだった。今でも好きだ。だって、描けば手に入らないものは何もない。情けないな。こんなものを描くぐらいなら寝る間を惜しんで勉強しなきゃいけないのに。
絵を売ればお金になるけど、孤児院一つならともかく、そんなんじゃ国の財政難までは賄えない。
僕は、現実から逃げている………。今も昔も変わらない。駄目だと思いながらも、僕は未だに手に入らないものを描き続けている。
悲しくなって俯いた。
何故か、俯いた先でお姉ちゃんが変顔をしていた。
「うぉわーーーーんん!??」
「おワン?」
「いやいやいや!?いつ来たの!?なんで変顔!?びっっくりしたああああ!!」
「あっはっは。今来たの。呼んでも気が付かないからさー。変顔してスタンバイしてるのに全然気が付かないし。とりあえずドッキリ大成功!!」
「ごめんね、一応止めたんだけどポッチ君も全然気が付かないし……何か悩み事かい?」
穏やかに首を傾げるディルクさん。
「お姉ちゃんに出来ることならお手伝いするよ」
笑いながらいつもみたいに手を差し伸べてくれるお姉ちゃん。
「……僕が、やらなきゃいけないことだと思うから、僕は大丈ぶ!?」
なんで僕、お姉ちゃんに頭突きされたの!?すご!視界がチカチカしたよ!!
「全然大丈夫じゃないでしょ!ほら!お姉様に吐き出しなさい!そもそも帝王学のさわりしかやってないポッチがいきなりなんでもかんでもできるわけはないでしょうが!!そんな泣きそうな顔で言われても説得力ないわ!お姉様が嫌なら、底抜けにお人好しなアルディン様とかポッチに激甘い兄様とか、使えるモノは使っときなさい!!ポッチが潰れる方が困るから!ポッチがポックリ過労死したら、お姉ちゃん号泣するんだからね!!」
「え………うん………」
それはそうかな………?そう、かも。
「こんなに頼りになるお姉様がたまたま新婚旅行で遊びに来たんだから、たまたま愚痴をこぼした。オッケー?」
「ふふふ、そうだね。実はね……」
これはあくまでも愚痴。うまくいかないことについて、お姉ちゃんは話を聞いてはアドバイスしてくれた。
「あとは〜、肉不足はお土産でまかなえるね!財政難は……お姉様、いい話を持ってきたんだけど、乗らない?」
「うん?」
そして思うんだ。お姉ちゃん、有能すぎない!?僕の悩みがすべて解決したんだけど!??
感想の返信がなかなかできなくて申し訳ないですぅ……
なるべく頑張って更新するので許してください(´;ω;`)




