テーマパークはご飯もうまい
丁度いい時間になったので、ディルクとお店に入ることに。
「何食べたい?」
通りすがりにいい匂いが……。これはお出汁の匂い。店先で実演販売をしていたのだが、それはこの世界にはなかったはずのもの。
「蕎麦!?ディルク、私お蕎麦食べたい!天ざる!天ざる食べたい!!」
「テンザル??よくわからないけど、ロザリンドが食べたいならいいよ」
うちの旦那様、マジ天使!わからなくてもとりあえずお付き合いしてくれるんだよ!もおおお!好き!!
そう、お蕎麦の実演販売!小麦粉はあるからうどん的なものは作れたけど、そば粉はなかったから作れてなかったの。
「やった!今行こうすぐ行こう!」
『アンギャオオオオオス!!』
「「………………」」
ディルクの雄々しい腹の音が響いた。
「急いでギャオス(腹の音)を鎮めよう!ごめんね、お腹すいたよね!」
「空気を読まないギャオスめ……!」
もはやギャオスがペットか何かみたいです。いや、ある意味ギャオスは空気を読んでいる。ご飯食べよう。今すぐ食べよう。
ディルクと急いでお店に入った。
そしてここでお品書きを見て悩んだ。温かいものならうどんが食べたい。しかし、蕎麦屋(正確には茶屋って書いてあった)に来たなら冷たいお蕎麦が食べたい。天ざる最高なんたけど、わかめうどんも捨てがたい……!しかし、お残しは嫌だ!
「ディルク、こっちとこっち……選べない……」
「両方頼んで。食べきれないのは俺が食べるよ」
「ディルク好き」
持つべきものは、たくさんご飯を食べれる夫です。たくさん頼んじゃったけど、ディルクなら大丈夫!両方頼んでしまいました!
「おいしー!」
「うん、本当に美味しいね」
「あのね、この天ぷらをお蕎麦と頬張るの!ふわあ……うっまぁ……天ぷらサクサク……お蕎麦もおいしい!さいっこう!」
天ぷらの油がそばつゆに溶けてうまあ!おうどんのかまぼこ、猫さんで可愛い。食べちゃうけどね!こういうさりげない特別感がテーマパークご飯ならではだよねー!え?どんぶり買えるの!?この柄可愛いし買っちゃお!いい記念になるわー!
暫くお蕎麦を食べてて思った。わさびほしい、わさび。付け合せはネギだけだった。流石にわさびはないみたいね。あと、うどんに七味入れたい。柚子胡椒でもいい。
「すいませーん。ちょっと持ち込み食材、ちょい足ししてもいいですか?」
「にゃ?かまいませんにゃー。なにかいい食材があるんですかにゃ?」
店員さんは興味津々といった様子だ。取り出したるはーわさび!皮をむいてー、サメっぽい魔物の皮ですりおろす。おろし金よりきめ細かくすれるのよね。きれいな緑色のわさび完成!
通な人はそばつゆに溶かさず乗っけて食べるけど、私は刺激が強すぎるから溶かす!
「はわ……ピリッとおいしい!」
お蕎麦とわさびって最高!ネギはついてたからなおよし!
「ふにゃー?お客様、少しだけ分けていただいても?」
「いいですよー。ディルクも使ってね。あ、入れすぎると辛すぎてしんどいから気をつけてください」
そして、店員さんはお蕎麦にわさびを入れて食べた。
「うーまーいーにゃーーーー!!」
店員さん、グルメ漫画並みのリアクション。ほらー、厨房の人まで来てしまったじゃないですかー。
「そんなにおいしいの?」
わさび入りつゆのお蕎麦をディルクにあ~んしてあげた。
「こっちのほうが美味しいね。なくても美味しいけど、さっぱりしていてこっちのほうが好きかも」
「まだあるから使っていいよ」
切ったわさびを更にすりおろす。
「ありがとう」
「うどんには、こっちかこれね。お店じゃ流石にやらないけど、家だとキムチとか鯖缶入れてたこともあるなー」
休日めしのうどんを思い出す。凛花はキムチうどんが好きだったな。今度作ってやろう。自家製キムチあるし。そうめんに鯖缶とキムチがもうね、激ウマ。夏になったらやろうかな。流しそうめんパーティーとか楽しい。きっとやろう。
そんな感じで現実逃避しているのだが、いいかげん私達のテーブルに人が集まりすぎていてしんどい。
「仕事してください」
流石は獣人。ちょっと殺気を出したら、即座に散った。話したければかまわんが、私達は客なんだからね!お蕎麦がおいしいから許すけど!
「お姫様、大変申し訳なかったですにゃー。こちら、当店からのサービスですにゃ。当店自慢のスペシャリテ!クリームマシマシスペシャル白玉フルーツあんみつパフェですにゃ」
「ふおお……白玉が猫さんだ!かーわいい!!」
これはすごい!もはや芸術のようなパフェである。りんごのバラが鮮やか!そして。白玉大好き!もちもちー!はっ!下のあれはみつ豆!?アイスとコーンフレークはないの!?生クリームはあるのにー!
スイーツは別腹とはいえ、これはチャレンジメニューでは……?確実に食べきれない量だよ。
「フルーツもおいしいね」
ディルクと仲良く食べました。後で聞いたら、あのパフェは人間換算で六人前だったのだそうです。獣人換算だと大体一人前であるらしく、ディルクが全部食べてくれました。ディルクのおかげでお残しはなしです。
ありがとう、ディルク。おやすみなさい、ギャオス。
なんとか本日もノルマクリア!
ディルクがいればお残しの心配はありません。
ギャオスは毎日鳴いています。




