またやってきました、シャムキャッツ
とりあえず、ハイエンドな飛空艇はすぐできないだろうしこれ以上ここにいると厄介な案件が来そうなので早々にユーフォリアを後にした。パレードとかされそうになったので、逃げたとも言う。もうね、派手なのはいいんだよー!お祭りするなら拗ねた火の精霊を祀ってあげて!!
そして一応お断りしたのだが、お土産をしこたま持たされた。もふもふタオル&肌着と寝間着セットが地味に嬉しい。これから確実に価値が上がって品薄になるけどいいの?と聞いたら、そもそも商品ではなかったものに価値をつけてくれたし、温泉まで作ってくれたし、お礼としては足りないぐらいだからと言われた。なら遠慮なく貰っとこう。他の人にもあげよう。これはいいお土産だ。
一応新婚旅行なので、コウ達はお戻りいただき、両親とも別行動。両親はもう少し温泉を堪能するらしい。
本来ならのんびり旅をして次に行くところなんだけど、迷子になったりしたせいで日程がおしている。さらにハイジャック犯は私を狙ったようなので空路は使わないほうが良さそう。かといって、ユーフォリアは険しい山脈の中にある国。陸路は無理。旅行からサバイバルになる。なので今回はサクッと転移の魔石で移動することにした。
さて、そんなわけでやってきましたシャムキャッツ!先にシヴェリハスへ行くつもりだったけど、こっちのほうが食料事情がヤバいので先に来たのだ。早めにお肉を渡さないと忘れそうだしねー!
「マチビト様!お待ちしておりました!!」
なんかとっても歓迎された。あくまでもお忍びなので絶対簡素でね!!と念押ししたのに、なんか謁見の間の飾りが派手ぇ……。
「お久しぶりです。そちらはどうですかね?」
「はっ!こちら資料になります!!」
ふむふむ、孤児をこっちで引き取ってから治安は向上。スタンピードで一時的に魔物が激減していて肉が品薄。ゾンビーパレードで精神に傷を……見なかったことにしよう。命があっただけマシということで!
街の復旧はほぼ完了。今後の課題としては……。
「ロザリンド」
「はっ!つい仕事を求めてしまった!!というか、これ!明らかに他国の私に見せたらダメな資料じゃないですか!!」
「も、申し訳ございません!マチビト様のおかげで、このシャムキャッツは以前のように民が笑顔で暮らせるようになりまして……ぜひ見ていただきたく……」
土下座するシャムキャッツ国王。ちなみに弟さんである元国王は苦笑い。以前より穏やかな表情になっている。今では宰相なんだそうだ。
やんわりとマチビト様がお困りですよと王様の土下座をやめさせてくれている。ありがたし。すっかりやさグレモードから立ち直ったようだ。
「まあ、野菜なんかについてはこちらと共同開発ですからいいですけどぉ……」
そんな話をしていたら、白いにゃんこ達が部屋に入ってきた。
「おねちゃー、来たのはここにゃ!?」
「おねちゃーにゃー!」
「おねちゃー!にゃにゃー!!」
「はう……!」
白いもふもふが私の膝に!!白いにゃーにゃー軍団が!!新しいもふ接待ですかね!?ゴチになります!うわーい!もふもふ!!
「こ、これ!マチビト様に無礼だぞ!」
「いえいえ、歓待していただけて嬉しいですわ。みんなも元気そうで何よりね。うふふふふふ」
「にゃふー!おねちゃーがきてからね、ちゃんとごはんもらえるのにゃ!」
「にゃふー!おねちゃーのおかげで、パパ上も元気ムキムキにゃー!」
王様が背後でマッスルポーズをキメているのは見ないふりをした。
「そうなのねー。よかったねー」
シャムキャッツでは皆さん半獣化が普通らしいのでモフモフぅ!ポッチがなかなか人化できなかったのは、そもそも半獣化でいる習慣があったからなのかもね。ポッチ元気かなぁ。そんな感じで可愛いわんこから立派な狼っぽい犬獣人になって自立した義弟を思い出していたら、清楚な小悪魔の声がした。
「に、にゃーん」
私の黒い小悪魔というか、黒いにゃん……ミニ黒豹様が……お行儀よくおすわりして首を傾げていらっしゃる!!
おいおい、そんな白にゃんこよりも俺の方が素敵なモフモフだろうにゃん?俺のモフモフに平伏して今すぐ白にゃんこより俺を選ぶなら、今だけは見逃してやるぜにゃんですと!??
※そんな事は言ってませんが、ニャン……ニュアンスは大体合ってますにゃー。
「はあん!ディルクが世界一に決まってます!!ああ、これぞ世界最高のモフモフぅ!!ビロードの如きしっとり感と、サラサラの手触り!!ディルク、最高おおおおおお!!」
うっかりヒートアップしてしまったけれども本題に戻ろう。白にゃんこさん達はお部屋に戻りました。残念ですが、私のお膝にはディルクがいます。うむ。控えめに申し上げて最の高です。私のお膝はディルクのもの!!
「脱線してしまって申し訳ありません。夫の毛並みが最高すぎてつい……うふふふふふふ」
「ロザリンド、本題」
いかんいかん、またモフモフ暴走する所だった。
「実は先日、またスタンピードと遭遇しまして」
「またですか!?」
よく考えたら、スタンピードってそんなホイホイ発生するもんじゃないのよね。この遭遇率の高さは何なのかしら。魔のせい……だよね、多分。まあ、その考察や研究は魔法院か色ボ賢者あたりに丸投げしよう。そうしよう。
「またですねぇ。で、大量の肉を入手しましたの。格安でお譲りしたいのですが、いかが?」
国のメンツもあるから、寄付はしない。儲けるつもりはないけども、こんにゃく芋がたくさん欲しいなー。こんにゃくゼリー食べたい。玉こんにゃくを醤油で煮たい。おでん食べたい。
「なんと!しかし、お恥ずかしながらその……財政難でして……」
「格安で、と申し上げましたわ。更に言うなら、物々交換でも問題ありません。わたくし、コニャクが欲しいのです」
「……あれは、腹にたまりますがあまり栄養がないので今はあまり作っておらぬのですが……この風土に合ったものではあるらしく、自生しているほどです」
「あれは売れましてよ!商品開発しましたら、ここの特産にしましょう!」
こんにゃくゼリーとか、絶対売れる!!ローカロリースイーツバンザイ!!こんにゃく麺とかもいいなー。夢が広がるわー!
「……あの、ロザリンド様」
「はい」
「その、そちらが独占すれば収益になるのでは?」
「え?そうですわね。でもわたくし、お金に困っておりませんの」
なにせ、不本意ながらも前人未到の新ランク……どれだけ稼いだかしらというか、こないだの稼ぎがえらいこっちゃなんですよねぇ。孤児院の運営なんかにお金がかかるとはいえ、供給過多なんですわ。今の所、使い道が思いつかないのですよ。そんな内情を明かしても良いことはないから言わないけど。
「は、はあ……」
「シャムキャッツが財政破綻して困るのはシヴェリハス。つまり、わたくしの大切な弟が困ります。そうならないためにも、そちらが自力で稼げるよう支援いたします。それに、わたくしコニャクが好きですの。独占するより商人にヒントだけ与えて創意工夫してもらった方が多様化しますわ。思いもよらない食べ方も、あるかもしれませんもの」
「な、なるほど?」
一応納得していただけたようだ。大量のコニャクと大量のお肉を交換してもらえた。何作ろうかなー?とりあえず、ダンにこんにゃくゼリーとこんにゃく麺を作ってもらおう!あ、スイーツといえば彼方さんにも流しておこうかな!彼方さんのとこの主戦力であるハイカロリーなチョコレートと、ローカロリーなこんにゃくスイーツのコラボ……ありだな!頑張れ、彼方さん!なんか死んだ魚みたいな目をしたアンドレさん(彼方さんの部下ポジ)がやめてって言ってる気がしたけど気にしない!
何故かついつい働いてしまうロザリンドなのでしたー!




