完全に逃げそびれました
植物の件で兄も来るとのことなので、またしても転移のブローチを使って迎えに行った。そして、もう開き直って家族で温泉効果を楽しむことにした。
お風呂を楽しんでいたら兄が温泉で育つ珍しい植物を見つけて大喜び。これはしばらく動かなくなる感じだ……。両親も久々の休暇だから、数日滞在するとのこと。双子はお留守番ではなく、孤児院の野営訓練に参加しているので丁度いいんだとか。たまにはいいのかもね。
そんな感じでそろそろ他国へ行こうと荷造りしていたら、なんだか騒がしい。客室をノックされたので入室を許可した。
「ごめん、クリスティアから使者が来たんだ」
嫌な予感しかしない。
「え、うん……私は今日、今すぐ旅に出る!」
「えっ!?いやいや!それで使者として来たアルフィージ様がロザリンドちゃんを呼んでるんだよ」
「ヤダヤダ!いかない!私は今、休暇なんだからー!」
叱られる未来しか見えねぇぇ!絶対に拒否!!私は無実!!休日に仕事モードのアルフィージ様の相手なんかしたくない!!
「ロザリンド、私も行こう」
「俺も行くよ。今回、飛空艇の今後についても話し合わなきゃいけない案件だろうから」
同じく(無理やりもぎ取ってきた)休暇中の父とディルクがついてきてくれることに。
「お母さんもいざとなったらお手伝いしてあげるから、行きましょう」
「はぁい……」
家族にそう言われて、ワガママを通すわけにも行かず、大人しく行くことになりました。
応接室で優雅にお茶をするアルフィージ様……機嫌がすごく良さそうだ。その隣には目を潤ませたラビーシャちゃん。あれ?なんでここに??
「お嬢様!!」
そしてラビーシャちゃんに抱きつかれました。とても心配をかけたようです。とりあえずよしよししつつ席につくことに。
「ラビーシャ、おいで」
「わ、私はお嬢様のお隣がいいかなーなんて……」
「…………ラビーシャ?」
「ひゃいよろこんでええええ!!」
ラビーシャちゃんは少しばかり拒否したが、アルフィージ様の冷ややかな笑顔に屈したようだ。アルフィージ様、私を睨むのはやめて。ちょいちょい意地悪するから逃げるんだよ。そして、アルフィージの膝にちょこんと座るラビーシャちゃん。
「ラビーシャ、ちゃん?」
「はっ!?」
無意識だったらしい。即座に飛び跳ねて部屋の隅で丸くなった。かわいい。私も似たような経験があるからどうにか宥めてソファに戻ってもらった。
「ラビーシャ、私は気にしないよ?」
「私が気にします!つがいのそばっていい匂いすぎて嫌なんです!!」
アルフィージ様は、ラビーシャちゃんが可愛くて可愛くて仕方ないのだろう。わかる。わかるよ。でもあんまりいじめないであげてね。
「……女性だからまだマシみたいだけど、つがいの匂いってたまらないんだよね……」
ディルクが悟ったような目をしている。彼も以前はそれで私を避けていたってか。獣人も大変だね。
「さて、ラビーシャの可愛さを堪能したところで本題に…………何故ここに宰相夫妻が?」
「あれ、今頃気がついたんですか?転移魔法入ブローチでたまたま呼びました」
「私は今、休暇中なのでローゼンベルク公爵だ」
何故かドヤ顔をする父。なんかかわゆす。
「………それがあったか!!!」
「それがありましたね!!」
アルフィージ様とラビーシャちゃんが机に伏せた。いやその……ごめんなさい。私が飛空艇から墜落した知らせを受け、無事は確認したものの今後のことも考えたら調査は必須。特に飛空艇はクリスティアが主導の新事業。ここで安全性の疑問があがればクリスティアは大損である。
調査にアルフィージ様が行くことになったのは、飛行船は王族も利用するほど安全だとアピールするためでもある。ラビーシャちゃんが私の心配をしていたため、途中迂回した結果遅くなったそうな。アルフィージ様はともかく、ラビーシャちゃんは私がお迎えに行けばよかったのであーる。
「過ぎたことは仕方ない。今度こそ本題だ。飛空艇で何があった?」
「実は……」
かくかくしかじかこれこれうまうま、カップ麺たべたい。そんな感じで飛空艇が墜落しかけた話をした。
「なるほど……どおりで乗客や犯人たちから全く有益な話が聞けないはずだ……。ところで、カバディとはなんだ?」
「ぐふっ!?」
「カバディって、スポーツだよな?なんでカバディ??」
「かはっ!!」
何故だ……会話だけでダメージが……!ディルクは完全にポーカーフェイス……でもないな!主に口角が引きつっていらっしゃるう!
何故アルフィージ様がカバディを知っていたかというと、例の魔に憑かれていた人がなんかカバディって叫んでましたと証言したから。さらに、カバディを知ってる真琴がいて大ピンチ!!考えろ!まだ負けていない!発想を逆転しろ!ピンチはチャンスなんだ!!
「……カバディとは、猛獣を多人数で囲み、武器がなくとも倒す技……古代の呪文です。私は、あの人が魔に憑かれていると見抜き、カバディで追い出したのです!!」
※諸説あります。呪文ではないです。
結果として魔はカバディにトラウマがあるので嘘にはならない。見抜いてはなかったけど。嘘は真実を混ぜることで信憑性を上げることができるのだぁ!!
「………んー、一部嘘だね。そして、質問に答えてないよ?カバディって何?」
「………私は旅に出ます!!」
もはや返事を拒否して走り去ろうとしたらディルクがサッと私を捕まえて膝に乗せた。くっ……ナデナデされてもにげ………なくてもいいかな……。撫でテクが上がってらっしゃるう……。はうう……しあわせぇ……。さり気なくモフモフ化してくれてるぅ!もう逃げない!!
「えーと……アルフィージ様、勘弁してあげてください。正直この場で実演するのはこちらにも立場がありますので無理です。それより、事故について話すべきでは?」
「うむ。カバディが何かはともかく、そちらの方が重要だろう。今後このような事故が起きぬよう、当事者として対策を話しておかねばなるまい」
「うふふ、アルフィージ様。うちの娘にあんまりイジワルしちゃうと……ラビーシャちゃんを隠しちゃうわよ」
「!!??」
アルフィージ様が庇うようにラビーシャちゃんの前へ立った。
「……そうですね。あんまりお嬢様をいじめないでください。怒って城出しますよ!実家に帰っちゃいますよ!」
「わ、私が悪かった!」
おお、アルディン様に続き、アルフィージ様の弱点発見!まんざらでもないっぽいなぁ……。ラビーシャちゃんにはぜひともアルフィージ様をコントロールしてほしい。
「和んだ所で本題に入りましょう。私は今日、休暇中なのです」
和んではいないけど、確かにそろそろ真面目なお話がしたいかなと思います。カバディについては、お墓まで持っていきたいです。マジで!
あと、もう完全に逃げそびれました。私も今日はお休みなのにいいいい!!なんでこうなった!??
ちょっと感想で説明不足なことあったなーと思ったので追記です。
あと、後書きの消去をと言ってた方がいましたが、700話し声のあとがきをイジるのは本当に無理だと思います。申し訳ないです。
時間と気力と労力が……あったら更新したいので本当に申し訳ないです。




