素晴らしきはモフ接待
私、ロザリンド=バートンは、今天国に………いや、楽園にいる。右にモフモフ(最高)左にモフモフ(至上)お腹にモフモフ(極上)頭にモフモフ(最強)
「楽園はここにあった……!ロザリンド死すとも、モフモフは不滅なり!!モフモフは正義!モフモフよ、永遠なれ!!」
「ロザリンドちゃん、生きろッス!はわ……ふかモフぅ……」
凛花は鼻の下を伸ばしてデレデレしている。
「リンカー先生、無理もない。クランもふもふ主義は皆、無類のモフモフ好きなんだ……」
優姫もニヤニヤしている。
「あかん、これはあかんやろ……モフモフな赤ちゃんは反則やろ……うちの子が一番やけど、こらあかん!!モフモフぅ!!」
クランもふもふ主義は、真琴が用意してくれたモフモフ接待に完全敗北していた。モフモフ接待の威力はすさまじかった。愛らしい羊獣人の赤ちゃんが、よちよちしながら寄ってくるのだ。赤ちゃんというだけで、可愛い。そもそも、赤子はその可愛さで庇護欲を掻き立てて親に育ててもらうのだ。つまり、可愛さがカンストした生き物なのだ。
しかも、毛並みが奇跡。
ディルクを極上の絹糸とするなら、羊獣人の赤ちゃんは、最高級のアルパカだ。ふわふわモコモコな、至上のモフモフ。他にはない最強なモフモフと言えよう。
さらに、赤ちゃん達は警戒心がなく私達に抱っこをねだる。なんでも、羊獣人の赤ちゃんは好奇心が強く、警戒心が薄いらしい。ナニソレ神設定!!
「きゃわゆいし、モフモフぅ……」
いっそ、この国に住みたい。モフモフ天国万歳!いや、今ならこの素晴らしい光景のために全財産差し出せと言われても頷いちゃう!
「………なんというか、マコトの話は本当だったのだな」
「だから言ったじゃないですか。充分なもてなしになるって。まあ、こんなに反応がいいのは彼らだからこそですけどね。その証拠に、一名ほど不機嫌なお方がいるでしょ?」
たしーん、たしーん。私はその音を聞いて、慌てて起き上がる。この音は………!!うちの天使、子猫姿のディルク様が私に背中を向けて尻尾で床をたしたしと叩いていた。尻尾で叩かれた床にはヒビが入ってます。いかん、マイダーリンを鎮めねばならん!!
「ディルク…!いかに赤ちゃん羊が天使のモフモフだろうと、私の一番はディルクのモフモフ!私はその滑らかな毛皮の虜です!!」
この気持ちに嘘はない。赤ちゃん羊のモフモフは素晴らしかったけど、私が毎日毎晩トリートメントしてブラッシングしているディルク以上のモフモフなど、この世には存在しない。出会った頃より、格段にディルクの毛並みは美しくモフモフしている。奇跡の毛と言っても過言ではない!
「にゃう……」
こっちをチラチラ見る、可愛いあんちくしょうことディルク。許すかどうするか考えて………いたら、羊の赤ちゃんに囲まれた。
「めぇ?」
「みっ!?」
「めえぇー」
多分可愛さアピールをするために子猫姿だったので、羊の赤ちゃんからよじよじとのし掛かられている。
「………尊い……」
モフモフ×モフモフ……ありだな!羊の赤ちゃん達はディルクの尻尾にじゃれたり、乗っかったりしている。モフモフって眺めるだけでも癒されるよね!
「にゃおーん!」
振り払ったりもできないし、困惑するディルクかわゆす。もみくちゃにされておるわ。癒されるぅ。黒い子猫にじゃれる赤ちゃん羊……私に子供ができたら、こんな感じの光景が見られるのかな?うちの双子の世話もしたから、子育てには自信ありだし。
「めぇ」
私にもまた赤ちゃん羊さんがじゃれつきに来た。よしよしとモフモフしつつ、ディルクを見る。
「わお……」
ディルクの上に赤ちゃん羊さん。その上にも、赤ちゃん羊さん。その上にも赤ちゃん羊さん。その上にも赤ちゃん羊さん。赤ちゃん羊さんタワーとなっていた。こういうバランスゲームあったよねぇ……と現実逃避しかけた。これは危なくないかしら?
そう思っていたら、さらに赤ちゃん羊さんが乗る。私の膝にいた子も参加し……気がつけば、全員が乗った。
「ええええ……」
これ、どうしたらいいの??もはや私の身長よりも高いタワーになってしまっている。高いところが好きなのって、山羊じゃなかったっけ?
「……どないするん、これ」
全モフモフがモフモフタワーになってしまった。絶妙なバランスで保たれているが、ディルクはともかく下の子があまり大丈夫じゃなさそうだ。
「……崩して拾いますかねぇ」
なんとかハルに手伝ってもらって赤ちゃん羊さん達を地面に下ろしたのです。おろしたのです、が……。
「めええ」
「めえー」
キラキラビーム集中砲火はやめて!魔法に興味津々らしく、私を取り囲むのもやめて!!
「こうなったら、とっておきの宴会芸を出すべき?」
「なんでボケんの!?」
「なんかいたたまれないんだもん!」
結局いくつか魔法を見せたり、子供好きなヴァルキリーが遊んであげたところ、赤ちゃん羊さん達を無事寝かしつけることに成功した。
「私にかかればこんなもんよ……!」
「ぐふっ……」
とりあえず、私がオロオロしてたのに助けず笑っていた真琴にはヘッドロックをおみまいした。困っていたら助けてよ!!




